2014年03月31日(月) 12:00
◆絶対王者の風格を持つ漆黒の馬体
日本の競馬で走る外国産馬には、二つのタイプがある。
一つは欧米などのせりで購入した外国産馬だ。馬を見る確かな眼を持っていれば、掘り出し物を探し当てることができる。すでに仕上がった2歳馬が出場するトレーニングセールは、走りっぷりや走破タイムを見て競るから、大外れは少ない。
1990年代の日本に外国産馬旋風を巻き起こしたのは、多くがこのトレーニングセールの出身馬だった。1996年の第1回NHKマイルCは、18頭中14頭が外国産馬で、勝ったのも外国産馬だった。第7回を迎えて、やっと日本馬が勝っている。今は日本の血統レベルも、育成の技術や施設も向上しているが、この時代の日本馬は2〜3歳時の完成度でかなり見劣っていた。
外国産馬のもう一つは、日本人オーナーが繁殖牝馬を現地の牧場に預け、種付けをし、現地でトレーニングして日本に送り込んだものだ。つまりオーナーブリーダー(馬主兼生産者)の外国産馬ということになる。この場合、不受胎、流産、死産があるし、生まれた子が走るとは限らないから、夢が見られる半面、大きなリスクを抱える。
それでも、夢を運ぶ大物が時として誕生する。1999年、フランスの凱旋門賞で歴史的2着となり、年度代表馬に輝いたエルコンドルパサーがその典型例だ。続くときは続くもので、それから2年後、またしても夢を運ぶ外国産馬がやってきた。漆黒のシンボリクリスエスである。
シンボリ牧場の和田孝弘代表がティーケイという牝馬をアメリカで購入。現地のミルリッジファームに預け、名種牡馬クリスエスを種付けて生産したのがシンボリクリスエスで、ティーケイの2番仔だった。
アメリカでトレーニングを積み、来日してデビューしたのは2歳の2001年10月。いきなり勝利を飾ったが、3歳になった2002年は2、3、3着と勝ちあぐみ、4月の山吹賞でやっと2勝目を飾った。だが、続く重賞初挑戦の青葉賞は、それまでの足踏みが嘘のような快勝劇。いちやく日本ダービーの有力候補に躍り出た。
前年から日本ダービーは、2頭の制限つきながら外国産馬にも出走が認められていたのである。しかし勝利目前、タニノギムレットに差されて敗れ、外国産馬初の日本ダービー優勝はならなかった。とはいえ、血統的には晩成のステイヤー。将来を見据えるうえでは、価値ある2着だったと言える。
確かに、その秋からシンボリクリスエスは快進撃を始めた。神戸新聞杯を勝利すると、続くGI初挑戦の天皇賞・秋も、一線級の古馬を撃破して快勝。さらに暮れの有馬記念も、逃げるタップダンスシチーを鋭く追い込んで勝利した。古馬を相手に天皇賞・秋、有馬記念と二つのタイトルを手にしたことが評価され、同年の年度代表馬に選ばれた。
しかし、シンボリクリスエスが本領を発揮したのは、翌2003年の天皇賞・秋と有馬記念だった。天皇賞・秋は不利な大外枠からのスタートにもかかわらず、終わってみればレコードで2連覇。続く有馬記念も、最後の直線に向くと後続を突き放すばかり。ゴールでは2着に有馬記念史上最大の9馬身の着差をつけ、同じくレコードで連覇した。むろん、2年連続で年度代表馬にも選ばれている。
シンボリクリスエスの黒光りする漆黒の勇姿は、いつも威風堂々としていて絶対王者の風格すらあった。有馬記念2連覇を最後に引退したが、その底知れぬ成長力、スタミナ、持久力は、大器晩成の名ステイヤーと呼ぶにふさわしいものだった。(吉沢譲治)
◆レース詳細
2003年12月28日
第48回 有馬記念(GI) 中山/芝右 2500m/天候:晴/芝:良
1着 シンボリクリスエス 牡4 57 ペリエ 2着 リンカーン 牡3 55 武豊 3着 ゼンノロブロイ 牡3 55 柴田善臣
1着 シンボリクリスエス 牡4 57 ペリエ
2着 リンカーン 牡3 55 武豊
3着 ゼンノロブロイ 牡3 55 柴田善臣
◆競走馬のプロフィール
父:Kris S.
母:Tee Kay
騎 手:ペリエ
調教師:藤沢和雄(美浦)
馬 主:シンボリ牧場
生産牧場:Takahiro Wada
■2003年 有馬記念
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