2014年04月14日(月) 12:00
◆エリートたちを蹴散らして頂点に立った地方の雄
両親のどちらも運動神経が鈍く、親戚にもスポーツ万能の選手がいないとき、オリンピックに出て金メダルを取るような子はまず生まれてこない。
ところが、サラブレッドの世界はトンビがタカを生む。下級競走馬だった父親と、1勝もできなかった母親。こんな配合からでも、時にとんでもない名馬が誕生したりする。
サラブレッドは自然界の動物と違って、人間が「意図的に名血を集めて改良淘汰してきた動物」だ。だから、どんな駄馬でも血統表を父の父、母の父、祖母の父…と見ていけば随所に金メダリストがいる。そこにトンビがタカを生む秘密がある。
中央競馬でデビューする馬をメジャー血統とするなら、地方競馬でデビューする馬はマイナー血統が多い。しかし、天の配剤のちょっとしたさじ加減で、地方競馬の底辺からのし上がり、中央競馬のエリートを打ち負かす名馬が生まれる。
1970年代のハイセイコー、1990年代のオグリキャップ。この未曾有の競馬ブームを巻き起こしたヒーロー2頭は、ともに地方競馬の出身だった。底辺から身を起こし、中央競馬のエリートたちを次々と負かし、頂点をめざしてひたむきに走る。その姿にある者は痛快さを覚え、ある者は明日への希望を見出したのだった。
2000年代に入ると、新たに中央のエリートを打ち負かす地方馬が現れた。アジュディミツオーである。父のアジュディケーティングは成功種牡馬ではあったが、大物は出していなかった。母系も母、祖母、曾祖母までの3代ファミリーを見渡して、これといった活躍馬は出ていなかった。マイナーな血統だけにデビューは地方競馬となったが、東京ダービーまで土つかずの4連勝を飾った。
しかし、これはアジュディミツオーの立身出世物語のほんの序章にすぎなかった。その後、足踏み状態が続き、このあたりが血統的な限界かとささやかれ始めたころ、秋の大一番、JBCクラシックで中央競馬の雄アドマイヤドンと渡り合って2着に入る。そして暮れの大一番、東京大賞典で中央競馬のそうそうたるエリートたちを負かして、正真正銘の頂点に立つのである。
この勝利により、翌春、地方馬としては史上初めて、UAEのドバイワールドCに招待される栄誉を得た。世界最高の優勝賞金を誇り、欧米の名立たる強豪が参戦する大レースである。結果は6着だったが、内容は大健闘と評価できるものだった。
遠征の疲れが出て半年の全休。秋からの始動となったが、不振が続いて暮れの東京大賞典に出たときは、前年の覇者にもかかわらず屈辱の4番人気だった。むろん、人気は中央競馬のエリートたちに集中していた。だが、またもみごとに蹴散らして、史上初の東京大賞典2連覇を飾る。アジュディミツオーはここ一番になると、底知れぬ意地と強さを見せる馬だった。
翌年1月、同じく南関東の大レース、川崎記念も勝利。続く2月、中央競馬遠征のフェブラリーSは7着に沈んだが、南関東に戻ると敵はなく、マイルグランプリ、かしわ記念を連覇。そして迎えたのが南関東伝統の大レース、帝王賞だった。
むろん、ここにも中央競馬のエリートが大勢参戦していたが、アジュディミツオーは最後の直線で、その代表格カネヒキリと一騎討ちを展開。並ばれるとまた伸びるしぶとい根性を見せ、2分2秒1のレコードで勝利した。地方馬が南関東の古馬GIを、初めて完全制覇した瞬間でもあった。
中央競馬の良血エリートたちが、地方競馬の大レースを席捲するようになって久しい。アジュディミツオーが走った時代は、すでにその逆風の真っただ中にあった。そこに敢然と立ち向かい、南関東地方競馬の砦を死守した功績は計り知れないものがある。以後、地方馬でアジュディミツオーを超える大物はまだ出ていない。(吉沢譲治)
◆レース詳細
2006年6月28日
第29回 帝王賞(GI) 大井/ダ右 2000m/天候:晴/ダ:良
1着 アジュディミツオー 牡5 57 内田博幸 2着 カネヒキリ 牡4 57 武豊 3着 サイレントディール 牡6 57 岩田康誠
1着 アジュディミツオー 牡5 57 内田博幸
2着 カネヒキリ 牡4 57 武豊
3着 サイレントディール 牡6 57 岩田康誠
◆競走馬のプロフィール
父:アジュディケーティング
母:オリミツキネン
騎 手:内田博幸
調教師:川島正行(船橋)
馬 主:織戸眞男
生産牧場:藤川ファーム
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