【新記録マーク】藤田菜七子騎手(3)『私は考えすぎてしまうタイプで…』

2017年11月29日(水) 18:01

キシュトーーク

藤田菜七子騎手の独占インタビューも、早くも最終話。最後まで盛りだくさんでお届けします!

藤田菜七子騎手の独占インタビューも、早くも最終話。デビュー年の昨年から、メディアに引っ張りだこだった菜七子騎手。自身の報道についてどう感じていたのか。今だから明かせる率直な思いから、ファイナル進出が決まったヤングジョッキーズシリーズ、菜七子騎手に影響を与えたアノ人など…最後まで盛りだくさんでお届けします!

(取材・文/森カオル)


フィジカル面とは違うところで自分の武器を

──1年目と2年目の変化といえば、菜七子ジョッキーにまつわる報道の量もそのひとつですよね。ここにきて、だいぶ落ち着いたかな…という気もしますが、改めて昨年1年間を振り返って、注目度の高さがプレッシャーになっていたところはありませんでしたか?

菜七子 今でも同じなんですが、実績を残しているわけでもなく、ましてや昨年は本当にただデビューしただけの状態で…。自分に何も自信がないなかでたくさん取り上げていただいて、それ自体はうれしくてありがたいなぁとは思っていたんですけど。

──老婆心ながら、逆に菜七子ジョッキーを追い詰める結果になってしまうのではないかと、ちょっと心配して見ていました。

菜七子 そうですねぇ、なんて言えばいいのか…。

──うれしい半面、しんどい1年でもあった?

菜七子 確かにそういう一面もありました。ただ、ありがたいなぁと思う気持ちも本心で、私自身、去年より気持ちに余裕が出てきたぶん、私が表に出ることでより多くの方に競馬を知っていただけるのだとしたら、それはうれしいことだなという気持ちも少しは出てきたかなって。

──間違いなく、その役割を果たされていると思います。それに、今年は実績も十分に伴って、春から行われているヤングジョッキーズシリーズでも東日本1位、JRA3位。ファイナルラウンドへの進出が決定しましたね。

菜七子 はい。まずは、若手のために、こういったシリーズを作っていただけたこと自体がすごくうれしくて、さらにその予選で結果を残すことができて。みんな同世代ですから、いつにも増して負けたくないですし、いろんな競馬場で乗る機会が増えて、すごくいいシリーズだと思います。

キシュトーーク

「いろんな競馬場で乗る機会が増えて、すごくいいシリーズだと思います」(8月15日盛岡でのトライアルラウンドでは見事1着でゴール、写真提供:岩手県競馬組合)

──全国の若手ジョッキーたちにとって、貴重な交流の場でもありますよね。

菜七子 そうですね。シリーズを通して、いろんなジョッキーとたくさん話をすることができたので、すごく勉強になりました。同世代といっても、こういう機会でもないとなかなか話をするチャンスはないですからね。今はとにかく年末のファイナル(12月27日・大井競馬場、12月28日・中山競馬場)が楽しみです。

──そういった地方ジョッキーたちとの交流も含め、デビュー以来、たくさんの出会いがあったかと思いますが、とくに影響を受けた方などいらっしゃいますか?

菜七子 それはやっぱり根本先生です。私はどちらかというと考えすぎてしまうタイプで、中学の頃や競馬学校時代も、考えすぎるあまり、どんどんどんどん気持ちが下がっていったりとか、そういうことが多かったんです。でも、根本先生は「終わったことは仕方がない。また次を考えよう。それに楽しくやらなくちゃ損だよ」という先生なので。ポンポンと切り替えていくことの大切さを教えてくださいましたね。

──切り替えの早さはジョッキーとして大事なことですものね。

菜七子 すごく大事なことだと思います。根本先生は、どんなことでも楽しみに変えることがすごく上手な方。そういう先生がそばにいてくださることで、私自身の考え方もすごく変わったと思います。

──菜七子ジョッキーにとって、偉大な存在ですね。

菜七子 本当に偉大です。すごく話しやすい先生なので何でも話せますし、元ジョッキーですから、細かい心理などもわかってくださるので。ジョッキーとして勉強になるのはもちろんですが、先生とお話をさせていただくことで、人間的にも成長できるなって思うことがたくさんあります。

──先生を筆頭に、アドバイスをくれる先輩方もたくさんいらっしゃると思いますが、以前、福永ジョッキーがご自身のコラムで「女性ならではの“何か”を見つけられたら、それは最大の武器になる」と書いていらして。女性ジョッキーというよりも、一人のジョッキーとして見てほしいという気持ちはすごくわかるし、取材する側としてもそうありたいと思っていますが、一方で、福永ジョッキーのいう“女性ならではの武器”についてはどう感じていらっしゃいますか?

菜七子 本当に福永先輩のおっしゃる通りだと思います。今はまだ探している最中ですが、女性にしか、私にしかない武器がもしあるとしたら、それ以上の強味はありませんから。「ここは菜七子が得意だから依頼してみよう」とか、そう思ってもらえるジョッキーになりたいですし、そこは男性とまったく同じことを求めても意味がないと思うので。筋力や体力を強化していくのはもちろんですが、そういったフィジカル面とは全然違うところで自分の武器を見つけていきたいです。

キシュトーーク

「フィジカル面とは全然違うところで自分の武器を見つけていきたいです」(写真は8月5日新潟2R優勝時、撮影:下野雄規)

──時間が掛かったとしても、それを見つけたら菜七子ジョッキーの勝ちですよね。

菜七子 そうですね。自分だけの武器は、本当に探していきたいと思っています。

──今年も残りわずかですが、今後騎手として目指したい、取り組んでいきたいテーマなどありますか? ファンの皆さんは、GIでの騎乗も待ち望んでいらっしゃると思いますが。

菜七子 GIに乗るための30勝をクリアすることも目標のひとつではあるんですが、私の一番の目標は“次の1勝”を挙げること。ひとつひとつ積み重ねていった結果、たくさんの方に信頼されるジョッキーになりたいです。あとは、テーマというかスタンスとして、依頼をいただければどこにでも乗りに行きたいです。それは、今までもこれからも変わらず。

──では、最後にファンのみなさんにメッセージをお願いします。

菜七子 来年はまた後輩も出てきて、今よりももっと厳しい状況になるとは思いますが、気持ちだけは誰にも負けたくないという思いで乗っています。そんな私の思いを競馬場で感じ取っていただけたらうれしいです。本当にその気持ちだけは負けたくない。持ち前の負けず嫌いを存分に発揮して頑張っていきたいと思いますので、これからも藤田菜七子をよろしくお願いします!

キシュトーーク

「持ち前の負けず嫌いを存分に発揮して頑張っていきたいと思います」

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元祖「キシュトーーク」のレギュラー陣、国分恭介、国分優作、松山弘平、川須栄彦、高倉稜を中心に、栗東・美浦・地方からも幅広く、これからの競馬界を担うU25の若手ジョッキーたちが登場します!

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