2022年12月08日(木) 18:01
▲池添騎手と武英師の対談後編(撮影:桂伸也)
これまで「メイケイエールの夏休み」「メイケイエールの新学期」と短期連載を行ってきたnetkeiba、今回は「メイケイエールの選抜大会」と題し、香港遠征(香港スプリント出走)を前に、池添謙一騎手と武英智調教師の対談を実施しました(取材日は11月17日)。
いつも一生懸命すぎるほどに走るメイケイエール。レースでの行きたがる姿が強く印象に残りますが、今年はひと味違いました。スムーズな競馬が出来た要因が、池添謙一騎手とのコンビ力と、「折り返し手綱&ホライゾネット」という馬具でした。
制御力が強すぎるため、使う側にも覚悟が必要な馬具。加えてレースで他陣営に迷惑をかけぬよう、試行錯誤を繰り返しました。その努力が報われたのが、今年の春のシルクロードS。陣営にとって忘れられない一戦を振り返るとともに、不可解な敗戦となったスプリンターズSの回顧、ケガのため残念ながら池添騎手は騎乗できなくなりましたが、熱い思いを抱く香港スプリントへ向けた展望をお聞きします。
(取材・構成=大恵陽子)
──池添騎手が初騎乗となった昨年のスプリンターズSは「上手く乗れなかった」という中でも4着で、メイケイエールの能力の高さを改めて感じました。年が明けると、折り返し手綱とホライゾネットを着用するようになりましたね。
武英 折り返し手綱はずっと使いたかったんですけど、制御力が強すぎて競走馬、まして若馬に使えるような馬具ではありませんでした。メンタルやフィジカルがしっかりする4歳までは我慢しようと、温存していました。
シルクロードSの1週前追い切りでは謙くんに効果を感じてもらって、レースでは4本の手綱に加えてムチも持つことになるので、「返し馬まで着けて、レースでは取ろう」ということになりました。けど、当日は馬もテンションが高くて、担当の吉田に「謙くんに『レースで着けるか外すかは任せる』と言ってくれ」と伝えて、悪い言い方をすると丸投げしたんです(苦笑)。
池添 いやホント(笑)。その前段階として、スプリンターズSでゲート裏に行くまでにめちゃくちゃ我慢させていたので、シルクロードSではホライゾネットの効果もあってゆっくり歩いてゲート裏まで向かうことができて「ああ、よかった」と思った瞬間、「調教師がこう言っています」と聞いて、「えぇっ! マジか」って。
ゆっくり行ったので、ゲート入りまではものの3分くらい。担当の吉田くんと「どうする? 次が本番の高松宮記念。試すなら、ここだろうな」と話して、「俺も腹括るわ」と、折り返し手綱を着けていくことを決めました。しかも、内の3番枠でしたからね。
▲試すならここだと腹を括った(撮影:桂伸也)
武英 ずっと双眼鏡で助手の荻野と外すかどうか見ていました。実はさっき伏せていたんですけど、僕が「任せる」と言ったのにはもう一つ理由があって。謙くんの一番すごいところは集中力で、特にGIの日は話しかけても何も聞いていないんですよね。
で、この日も朝から何回も顔を合わせているのに、一切エールの話をされなかったので、ゾーンに入っているからそっとしておこうと思っていたんです。そしたら、パドックで謙くんの足を上げた時に、「ヒデ、まだレースの組み立てが決まってない。まだ迷ってる。どうしていいか分からへん」と言われたまま返し馬に行かれたんです。それで丸投げしたんです。
▲次々と明かされていくレースの裏側(撮影:桂伸也)
──その方が、池添騎手の思うように乗れると考えたんですね。内枠で、並び的にもレースの組み立てが難しそうな中、見事1着でゴール。ガッツポーズがカッコよかったです。
武英 あのガッツポーズで僕、泣きそうになりました。あんなに折り合えて・・・
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武英智調教師
武英智調教師は1980年12月31日、滋賀県生まれ、JRA栗東所属の調教師。2018年に開業し、重賞初制覇はメイケイエールで制した2020年小倉2歳S。
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