2023年02月13日(月) 18:02
▲今回のテーマは「俺の競走馬再生論」(撮影:稲葉訓也)
近年の岩田騎手といえば「競走馬の再生請負人」というイメージが強く、昨年末の阪神Cで有終の美を飾り種牡馬入りしたダイアトニックも、二桁着順が続き7歳を迎えたタイミングから初騎乗。なんとそこから重賞を3勝し、まさに岩田騎手が蘇らせたような活躍を見せました。
そんな“再生”だけでなく、若駒に対しても付きっきりで追い切りに騎乗している印象もある岩田騎手。その背景にはこの歳になっても厳しく叱ってくれた師への恩返しの気持ちと、「暗黒期」で失った乗り馬を自ら作るという強い気持ちがありました。
(取材・構成=不破由妃子)
──ケイデンスコール、テイエムサウスダン、クリノガウディー、ダイアトニックなどなど、最近は低迷した馬を蘇らせる再生請負人のような活躍が目立ちますね。
岩田 さっきも話したけど、重賞で勝ち負けできるような乗り馬がおらんかったから。でもね、自分が見逃しさえしなければ、チャンスの種はなんぼでも転がってる。それに気づいたから、その種を育てて、自分で勝たせるっちゅう流れができたわけよ。その馬をもう一度輝かせたいという気持ちと、俺ももう一回、ジョッキーとして輝く場所に行きたいっていう気持ちでやな。
──ここ2、3年ですよね。
岩田 そうやね。始まりはケイデンスコールやったかな。「NHKマイルCで2着して以降、全然結果が出てないんやけど、どんなもんか乗ってくれへんか」って言われて。それで調教に乗り出したんやけど、オーロC(コンマ3秒差6着)のときに、「この馬にはまだ、ええもんが残ってる」と感じてね。それを探して、そこに火をつけていって。
▲始まりはケイデンスコール(c)netkeiba.com
──「まだ残っている」というのは、どこで判断されたんですか?
岩田 直線やね。直線の踏ん張り。少し前から吹かし始めた状態で直線に向いて、どれだけ脚を使えるかでわかる。たとえ1着や2着に入れなくても、次に変わってくるなとわかる。なぜなら、ガチーン! とやったらネジが締まるわけ。締まってからの次が勝負や。ケイデンスコールは次走の京都金杯を勝ったし、ダイアトニックもそう。京都金杯で4着(12番人気)したときに、「めちゃくちゃ走ったがなー!」となって、そこから阪急杯、スワンS、阪神Cとポンポン重賞を勝って。ケイデンスコールもダイアトニックも、安田隆行厩舎やろ? 今思うとね、安田先生が俺を生き残らせてくれた。
──安田隆行調教師と岩田さんといえば、ちょうど10年前にロードカナロアで一時代を築いたコンビですね。
岩田 うん。そのあと間が空いたけど、今はまたこうして助けてくれてね。助けてくれたのは、やっぱり安田先生であったり、浅見(秀一元調教師)先生であったり。藤懸(貴志騎手)の件では、安田先生と浅見先生にめちゃくちゃ怒られてやな…。安田先生には「オマエ! 技術があるのにもったいないやろ。アホみたいなことすんな!」って言われて、浅見先生も「しょうもないことしやがって。もう一度、お前の技術を見せてみろ! 俺はずっと見てるからな」って言ってくれた。もう頭が上がらへん。
──年齢を重ねると、怒ってくれる人がどんどんいなくなりますからね。貴重な存在ですね。
岩田 ホンマに。松田博資先生がおらんようになってから、いろんな厩舎に乗せてもらってきたけど、今の俺は、チャンスをもらうというよりも、自らの腕で結果をつかみ取って、厩舎を助ける側やろと思ってる。
▲安田隆行師と岩田騎手(c)netkeiba.com
──最近は転厩もあって、ルメール騎手に手が替わってしまいましたけど、テイエムサウスダンも岩田さんが作り上げた馬という印象が強いです。
岩田 サウスダンはね、乗ることになった経緯があんねん・・・
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岩田康誠
1974年3月12日、兵庫県生まれ。1991年に公営・園田競馬でデビュー。4度の兵庫リーディングに輝き、2004年にはデルタブルースで菊花賞を勝利、地方所属騎手として初の中央クラシック制覇を達成した。2006年にJRAに移籍。2012年にはディープブリランテと日本ダービーを制覇、ロードカナロアとは日本馬初となる香港スプリントを勝利している。歯に衣着せぬ物言いと直線での「イン突き」は常に多くのファンを魅了している。
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