ヨシオだよ! おれがチビだったときのはなし。#4

2023年02月19日(日) 18:01

 ヨシオだよ! 次の開催までまだちょっと時間があるし、今日はみんなにおれがチビだった頃のはなしをしようと思う。実はおれ、ちょっと変わった育ち方をしてるんだ〜。

“ヨシオ”

ごはんたべてるチビなおれ!(提供:JRA)

 まあきいてくれ!

 おれの実家は北海道のJRA日高育成牧場っていうところで、2013年5月9日にうまれた。父さんはヨハネスブルグ。母さんはフローラルホーム。父さんのことは知らないし、母さんとはチビのころにお別れしちゃったから、もう顔も覚えてない。

“ヨシオ”

これはうまれて2週間のおれ!(提供:JRA)

 当時4歳だった母さんにとって、おれははじめての子供だったんだ。それもあって、平均よりちょっと小さくうまれたおれだけど、この頃からもちろん食欲旺盛! 寝てる時以外はおちちを飲みにいくんだけど、母さんはまだ若かったから、なかなかおちちがでなかった。

 だからおれはずっとおなかペコペコ…。

 でも母さんもおちちが出ないから、おれが飲もうとすると、痛くて逃げちゃったり…。みかねた実家の人たちから、粉ミルクや子馬用のごはんをもらっていたんだけど、おれたちチビは、起きてる間はほぼずっとおちちを飲んでるから、ずっと人の手で世話をするのも、なかなか難しいんだって。

“ヨシオ”

粉ミルクおいしかったよ(提供:JRA)

 それである日、おれにとっての“もうひとりの母さん”が現れたんだ。

 乳母(うば)って知ってるかな? いろんな理由でおちちを飲むことができないチビたちを育ててくれる。

 乳母さんは、だいたいはサラブレッドじゃない温厚な性格の馬がやってくれることが多いらしいんだけど、おれの実家は、サラブレッドにホルモン剤を投与しておちちをださせる“人工乳母”の取り組みをしたんだって。サラブレッドが乳母になるのはリスクが高いけど、生産育成に関するぎじゅつかいはつのなんたらかんたら〜でやることにしたらしい。

 そうして、おれの育ての親になってくれたもうひとりの母さんの名前は、ラストローレン。

 母さんと初めて会ったとき、母さんは嫌そうだった。おれは本当のこどもじゃないからね。実家の人たちは、母さんの鼻にメントールを塗ってにおいを感じにくくしたり、おれの服には母さんのボロを塗ったりして、自分の子供だと錯覚させるようにしてくれたけど、それでも、なかなか母さんはおれを受け入れてくれなかった。

“ヨシオ”

ラストローレン母さんと初めて会った日。ちょっときんちょう…(提供:JRA)

 でもおれたちってチビのころは、実は、おちちが出ればだれでもいいんだ! 本当の母さんからしか飲まないとか、そういうのはない。

 だからおれはめげずに母さんのおちちを飲みにいくんだけど、母さんは子供をうんだわけじゃないから、おちちもうまく出なくて痛かったみたいだし、蹴ったり、噛みつかれたりして…。

 キレた母さんに、首を噛まれて天井に投げ飛ばされたこともあったんだ。それでもおれは、めげずにおちちを飲みにいってたよ。おなかペコペコだったからね。

 あ、投げ飛ばされて宙に浮いたけど、おれが噛まれても怪我をしないように、服を着せてもらってたおかげもあって、怪我はしてないから安心してね!

 それからも、母さんはなかなかおれを受け入れてくれなくて…おれも、実家の人たちも、困ってた。これからどうしようかって。

“ヨシオ”

こうやって実家の人たちに手伝ってもらって飲んでた。母さんしかめっ面…(提供:JRA)

 それで実家の人がいろいろ考えてくれて、これまではずっと部屋の中で過ごしていたんだけど、思い切って他の親子たちがいる放牧地に行ってみることになった。放牧地は広くて自由にできるから、母さんの蹴りが部屋の中よりも強くなる可能性もある…(汗)。でも思い切って行ってみよう! って連れていかれたんだ。

 放牧地ではいろんな親子がのんびり過ごしてた。初めての広い場所に、キョロキョロしているおれに、他の親子たちが「あの子はだれかな?」って寄ってきた。どうしようって思ってたら、急に母さんがおれのことを守ろうとしてくれたんだ!

“ヨシオ”

服着てるのがおれ。母さんと!(提供:JRA)

 嘘みたいなはなしだけど、これがきっかけで母さんとおれは少しずつなかよくなっていったんだ。それからちょっとずつだけど、おちちも飲ませてくれるようになった。でもやっぱりたまに噛んでくるから、お股の下から飲むようにしたり、母さんが寝ている時に飲むようにしたり、どうにか噛まれないように考えながら飲んでたんだ。

 おれがかしこいっていってもらえるのは、ある意味母さんのおかげなのかも!?

“ヨシオ”

こうやってふつうに飲むと怒るから…(提供:JRA)

“ヨシオ”

後ろから飲んでたよ。これだと怒られなかった(提供:JRA)

 放牧地では一緒に過ごすようになって…本当の親子みたいになれたんだ。いろいろあったけど、離れるときはちょっと寂しかった。ここだけのはなし、母さんも泣いてたな〜。

“ヨシオ”

一緒にごはんをたべたりなかよく過ごしたよ(提供:JRA)

 そんなわけで、おれには母さんがふたりいるんだ。実家の人たちにもたくさん苦労をかけた。

 でも大きな病気をせずに無事にデビューすることができて、たくさん走って、引退してからも新しい仕事をもらえた。いろんなひとみんなにありがとうだよね〜。

 これからも元気にがんばるから、みんなも感冒で出走取り消しなるなよ!

 んじゃまた更新するね〜。

“ヨシオ”

生後5ヶ月→8ヶ月→1歳! っと最後におれの成長も載せとく。(提供:JRA)

(取材協力=JRA)

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ヨシオ

2013年5月9日生まれ。父ヨハネスブルグ、母フローラルホーム。現役時代は栗東・森秀行厩舎に所属し、ダートを中心にコンスタントにレースに出走。2022年の京葉S(9着)を最後に現役を引退。通算成績は78戦6勝。主な勝ち鞍:2020年ジャニュアリーS(OP)、京都競馬場Presents「アイドルホースオーディション」

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