2023年12月19日(火) 18:00
第三の馬生を送るネコパンチ(撮影:H.Iさん)
12月3日の午前8時、1台の馬運車が、筆者が運営に関わるノーザンレイクに到着した。
降りてきたのは、2012年の日経賞で大逃げを打ち、ウインバリアシオン、ルーラーシップらの後続を寄せ付けず優勝したネコパンチだ。
真夜中から朝にかけて降ったであろう雪が薄っすら地面を覆っていた。その雪を少し気にしているようだったが、厩舎に向かう足取りは落ち着いていた。競走馬登録抹消後は東京競馬場で誘導馬、乗馬として活躍しただけあり、牧場というこれまでと違う環境にもあまり動じているように見えなかった。
長旅を終え、北の大地に降り立ったネコパンチ(撮影:H.Iさん)
無口には、東京競馬場の近くにある大国魂神社のお守りがついていた。競馬場の乗馬センターのスタッフが、ネコパンチの無事を祈ってつけてくれたのだろう。その思いを引き継いで、ネコパンチに愛情を注ぎ大切にしていこうと決意を新たにした。
お守りのついた無口を着けている(撮影:Y.Hさん)
「人気のある馬だけに慎重を期して、環境に慣れるまでは入厩したことは伏せておく」と決め、12月15日に公表することにした。
初日、2日目はまず狭いパドックでの放牧にした。時折、パドックより下の放牧地にいる牝馬たちを見下ろしたりしていたが、それ以外は盛んに草を食んでいた。4日目には広い放牧地での放牧を開始した。放牧地では地面の状態を確かめるように最初は歩き回っていたが、そのうち草を食べ初めた。隣の放牧地にいるメイショウドトウ(認定NPO法人引退馬協会所有)の方が、ネコパンチを気にしているようにも見える。
放牧地への行き帰りも、チャカつくこともなく悠然と歩く。雪が積もった日もあったが、放牧地でも平然と過ごしている。初めはわりと優等生だったが、4日目あたりから飼い葉の時間になるとブブブと鳴いて催促するようになった。その鳴き声を聞いた時に、牧場に馴染んでくれたように感じた。
牧場猫メトもさっそく“新入りネコ”の様子を伺う…(撮影:佐々木祥恵)
実は筆者、netkeibaの美浦トレセンニュースや当コラムで、幾度もネコパンチを取り上げてきた。競走馬時代はもちろん、東京競馬場で乗馬、誘導馬になってからも取材をした。それだけに思い入れある一頭だった。
そして相方(川越靖幸)と始めた引退馬牧場のノーザンレイクは、猫のメトがメイショウドトウとのコンビで知名度がアッブ。12月6日には「ボス猫メトとメイショウドトウ」(辰巳出版)が出版されるまでになった。
「ボス猫メトとメイショウドトウ」も出版!(撮影:佐々木祥恵)
猫が人気の牧場ということもあり、思い入れ深いネコパンチに来てもらえればとダメ元でJRAの引退馬に関するセクションに相談したところ、スムーズに話が進んで今回の入厩と相成った。本当に感謝しても仕切れない。
12月17日の当牧場の見学日に初お披露目となったが、それも無難にこなした。19日は最低気温がマイナス11度まで下がったが、それも問題なく過ごしてくれたようだ。
ノーザンレイクで、ネコパンチの新たな生活が始まった(撮影:佐々木祥恵)
今のところ順調にきているが、まだ牧場生活は始まったばかりだ。油断せずに、そしてネコパンチが快適に気分良く日々が送れるよう、心を砕いていくつもりだ。
(了、次回の更新は2月を予定しています)
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佐々木祥恵
北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。
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