2024年06月03日(月) 18:00
【Pick Up】ロマンチックウォリアー:1着
香港からの安田記念挑戦が盛んだったのは00年代。10年間に23頭来日し、フェアリーキングプローン(00年)、ブリッシュラック(06年)の2頭が優勝を果たしました。しかし、10年代に入ると掲示板に入ることもできなくなり、ハードルの高さに嫌気がさしたのか徐々に頭数が減少、2018年を最後に挑戦は途絶えました。香港競馬の関係者は、日本競馬のレベルの高さ、そして生半可な馬を連れて行っても勝負にならないことは当然理解しており、6年ぶりに参戦した2頭は、それなりの自信と勝算があったことは推察できます。
勝ったロマンチックウォリアーは、「アクラメーション×ストリートクライ」という組み合わせの香港所属馬。今回を含めて通算20戦15勝、うちG1を8勝という圧倒的な戦績で、昨年秋、南半球のオーストラリアへ遠征し、同国を代表するビッグレースのひとつコックスプレート(豪G1・2040m)を制覇しています。香港だけのローカルスターではありません。
父アクラメーションはスプリント型の名種牡馬で、ロマンチックウォリアー以外の代表産駒は、ダークエンジェル、エクィアーノ、エキスパートアイなどスプリンターとマイラーばかり。そして、ロマンチックウォリアーの父方に入るロイヤルアプローズと、母方に入るマキャヴェリアンはニックスで、この組み合わせからダークエンジェル、メーマス、ブルーポイントと、優れたスピード型種牡馬が続出しています。マイルをこなしても不思議ない血統構成といえます。
自国以外の国際競走を勝つには、環境の変化に動じない精神力が重要です。ロマンチックウォリアーの大きな強みは気持ちの強さで、オーストラリアでも日本でも、扱いやすく従順という普段の様子に変化は見られませんでした。高い能力に加えて平常心を維持する力が遠征を成功に導いたカギのひとつでしょう。
【Pick Up】ヨーホーレイク:1着
父ディープインパクトと、母クロウキャニオンは、2008年から2018年まで11年連続して仔を作りました。ヨーホーレイクはこの全きょうだいの末っ子で、他にカミノタサハラ(弥生賞)、ボレアス(レパードS)が重賞を勝ち、ベルキャニオン(共同通信杯-2着)、ストーンリッジ(きさらぎ賞-2着)、マウントシャスタ(毎日杯-2着)、ラベンダーヴァレイ(チューリップ賞-3着)が重賞で馬券圏内に食い込みました。11頭のうち未勝利に終わったものは1頭もいません。驚異的なアベレージです。
「ディープインパクト×フレンチデピュティ」は、マカヒキ(日本ダービー、ニエル賞)、ショウナンパンドラ(ジャパンC、秋華賞)、アンジュデジール(JBCレディスクラシック)など活躍馬多数。この組み合わせは京都芝で連対率36.9%と抜群の成績で、京都芝2000mの重賞に限ると、ショウナンパンドラの秋華賞を含めて3戦2勝です。
6歳とはいえ、2年以上にわたる長期休養を挟んでいるので、キャリアはまだ10戦。まだまだこれからの馬でしょう。
【エンパイアメーカー】
現役時代はベルモントS(米G1・ダ12ハロン)などG1を3勝。自身を含めて兄弟に4頭のG1馬がいる血統はきわめて優秀で、種牡馬としても成功しました。アメリカで7年間供用されたあと、日本に渡って5年間供用。その間にアメリカに残してきたロイヤルデルタ、エモリエントといった産駒が大活躍し、孫のアメリカンファラオが米三冠を達成すると、アメリカに買い戻されました。
息子のパイオニアオブザナイル、ボーディマイスターを通じてサイアーラインは発展し、前者の仔にアメリカンファラオ、後者の仔にオールウェイズドリーミング(ケンタッキーダービー)がいます。
パワー型の中距離タイプで、気性の激しさはネックですが、代を経ると芝向きの仔も増えています。今後、母方にエンパイアメーカーを持つ活躍馬が芝・ダートを問わず増えてくるはずです。
「2歳戦1週目を終えた時点で新種牡馬についての感想は?」
まだ感想を述べるには早すぎますが、新種牡馬はおおむね順調だったと思います。賞金を稼いだのは以下の7頭。
シスキン [1-0-0-0] 720万円 アドマイヤマーズ [0-1-0-0] 290万円 タワーオブロンドン [0-1-0-0] 290万円 ナダル [0-1-0-1] 290万円 サートゥルナーリア [0-0-1-1] 290万円 モズアスコット [0-0-1-0] 180万円 ウインブライト [0-0-0-1] 110万円
初年度の産駒数がわずか7頭のシスキンがいきなりデビュー勝ちを果たし、アドマイヤマーズ、タワーオブロンドン、ナダルが2着馬を出しました。サートゥルナーリアは2頭出走して3着、4着と掲示板を確保。モズアスコットはクビ、アタマ差の3着と悪くない船出となりました。
シスキンは愛2000ギニー(G1・芝8ハロン)の勝ち馬で、初年度の供用開始直後に種付け中のアクシデントにより怪我をし、大事をとってその年の供用を取りやめました。2年目からは通常どおり供用されています。軽快なスピードを持ち味とし、開幕週からその能力の高さを見せつけました。なにぶん産駒数が少ないので、ランキング上位を賑わすことにはならないと思いますが、7月に開催されるセレクトセールでは産駒に注目が集まることになりそうです。
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栗山求
netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG
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