ブローザホーンが恵みの雨受け宝塚記念勝利 母由来の道悪適性が光った一戦

2024年06月24日(月) 18:00

血統で振り返る宝塚記念

【Pick Up】ブローザホーン:1着

 上位を占めた道悪巧者のなかでも、勝ったブローザホーンはワンランク上と思える馬力を秘めています。昨年5月、今回と同じ京都芝2200mで行われた烏丸Sを勝ちましたが、水しぶきが上がる不良馬場のなか後続を5馬身引き離す圧勝でした。

 この適性は母オートクレールから受け継いだものでしょう。「デュランダル×フォーティナイナー×アサート」というパワフルな血統構成で、現役時代、不良馬場の紅葉S(東京芝1600m)を勝った経験があります。3勝クラスにもかかわらず勝ち時計は1分41秒7。この極端に悪化した馬場で、他の馬がもがき苦しむなか、水かきがついているとしか思えない軽やかなフットワークで後続を5馬身ちぎりました。12頭立ての10番人気だったので馬場が利したという以外に考えづらい勝利でした。

 父エピファネイアは今年GIを4勝目(他に桜花賞、ヴィクトリアマイル、日本ダービー)。JRAの平地GIを種牡馬別にカウントすると断然トップで、2位は1勝で8頭が横並びとなっています。

 生産者の岡田スタッドは、2022年のタイトルホルダーの生産者でもあり、過去3年間に2頭の宝塚記念優勝馬を出したことになります。

血統で振り返るさきたま杯

【Pick Up】レモンポップ:1着

 6月19日、浦和競馬場で行われたさきたま杯(JpnI・ダ1400m)は、3コーナーで先頭に立ったレモンポップがそのまま押し切り、断然の1番人気に応えました。

 父レモンドロップキッドは、名種牡馬エーピーインディの4分の3同血(父が同じで母同士が親仔)にあたるチャーミングラッシーを母に持つ良血で、キングカメハメハやエルコンドルパサーと同じキングマンボ産駒です。現役時代にアメリカのクラシックレースのひとつベルモントS(G1・ダート12ハロン)を含めてG1を5勝し、種牡馬としても成功しました。日本ではすでにビーチパトロール、アポロキングダムの2頭が後継種牡馬として供用されています。

 父レモンドロップキッド、母の父ジャイアンツコーズウェイとも芝・ダート兼用タイプではありますが、レモンポップ自身は重心の低い筋骨隆々とした馬体なのでダート向き。2代母ハーピアは大種牡馬デインヒルの全妹にあたる良血です。「父レモンドロップキッド、母の父ジャイアンツコーズウェイ、母方の奥にダンジグ」という配合構成は、スピンスターS(米G1・ダート9ハロン)を勝ったロマンティックヴィジョンと同じです。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【フォーティナイナー】

 米2歳牡馬チャンピオン。引退までに4つの米G1を含めて重賞を7勝しました。ケンタッキーダービーはクビ差2着でしたが、大外枠の不利を克服してのものだけに価値があります。競走成績の優秀さはもちろんですが、わずか1年半の競走生活で19戦を消化した頑健さもセールスポイントです。そうした体質面の強さが関係しているのかどうか、35歳まで生きた長寿馬でもありました。

 大種牡馬ミスタープロスペクターの息子で、アメリカで6年、日本で12年供用され、パワー型のスピードを武器に、日本ではマイネルセレクト、ユートピア、クーリンガーなど多くの活躍馬が誕生しました。

 サイアーラインは、米チャンピオンサイアーのディストーテッドヒューマー、日本に輸入されたエンドスウィープを通じて発展したものの、最近は他の主要なミスタープロスペクター系のラインに比べると勢いが鈍っている印象です。

 今年の宝塚記念は、1着ブローザホーンと4着プラダリアにフォーティナイナーの血が含まれていました。パワーの源泉です。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「今年のキタサンブラックの2歳は当たり年ですか?」

 6月9日の東京新馬戦(芝1800m)をクロワデュノールが出色の好内容で勝ち上がり、6月22日の東京新馬戦(芝1400m)ではサトノカルナバルが7馬身差で圧勝しました。

 先週終了時点のJRA2歳戦は、キズナ、ナダル、モーリスが3勝を挙げ、2勝のキタサンブラック、リオンディーズ、バゴ、キングマンはそれを追っています。

 キタサンブラックの初年度、2年目の血統登録頭数は83、81頭でしたが、3年目の現3歳は54頭と少なく、世代別のJRA種牡馬ランキングでは23位と低迷しています。4年目の現2歳は70頭と回復傾向にあるものの、1、2年目には及びません。初年度産駒が走り始める前に種付けをした最後の世代ですから、繁殖牝馬の質・量とも十分とはいえないレベルです。そんな状況でこれだけの馬が出てくるのですから今後が楽しみです。POGで人気となったダノンシーマ(母インクルードベティ)などまだまだ大物候補が控えています。

 ちなみに、来年デビューするひとつ下の世代は、血統登録頭数が133頭と一気に増えるので、黄金世代となる可能性が高いでしょう。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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