直系子孫20頭中17頭が勝ち上がり 二冠牝馬チェルヴィニアが抱える名牝の血脈

2024年10月15日(火) 18:00

血統で振り返る秋華賞

【Pick Up】チェルヴィニア:1着

 ハービンジャー産駒は秋華賞に計7頭出走し、チェルヴィニアとディアドラが1着、ナミュールが2着、モズカッチャンが3着と、半数以上が馬券圏内に入っています。

 父ハービンジャーは現役時代にイギリスで走り、4歳を迎えて本格化。キングジョージVI世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12ハロン)を11馬身差でレコード勝ちしました。完成が遅めの芝中距離タイプです。

 産駒はこれまでに国内外の平地GIを計10勝していますが、うち9勝を3歳秋以降に挙げるという晩成傾向が見て取れます。唯一の例外はチェルヴィニアのオークス。

 早期に世代最高レベルに達したのはハイレベルな能力の証明であり、3歳夏を越してハービンジャーの娘らしくさらにパワーアップし、秋華賞を勝ちました。まだまだ上を目指せるのではないかと思います。

 ノッキングポイント(新潟記念)の半妹で、母チェッキーノはフローラSを勝ち、オークスでも2着と健闘した活躍馬。2代母ハッピーパスの直系子孫は、JRAで計20頭出走して17頭勝ち上がり、うち14頭が2勝以上を挙げるという尋常でない活力を誇ります。

 2018年以降の秋華賞は、オークスからの直行組が台頭する傾向が見られ、なかでもオークス馬は6戦4勝、3着1回、着外1回という成績。3着と敗れたスターズオンアースはスタートで出遅れる不利がありました。

 また、13着と敗れたユーバーレーベンはオークス後に屈腱周囲炎を発症したため万全の体調とはいえませんでした。体調面に問題がなく、レース中に不利がなければ、いずれも1着となっています。

血統で振り返る府中牝馬S

【Pick Up】ブレイディヴェーグ:1着

 1着ブレイディヴェーグ、2着シンティレーションと、ロードカナロア産駒がワンツーフィニッシュを決めました。

 今年に入って重賞を勝ったロードカナロア産駒は、芝短距離のサトノレーヴ(キーンランドC、函館スプリントS)、芝中距離のベラジオオペラ(大阪杯)とブレイディヴェーグ(府中牝馬S)、ダートのエンペラーワケア(根岸S)、障害のジューンベロシティ(東京ジャンプS)とタイプが幅広く、その父キングカメハメハに似てきた感があります。

 母インナーアージはミッキークイーン(オークス、秋華賞、阪神牝馬S)の全姉にあたる良血。ちなみに、府中牝馬Sのすぐ後に行われた東京12Rも、ミッキークイーンの4分の3弟ニュージーズ(父リアルスティール)が勝っています。2代母ミュージカルウェイの直系子孫は、JRAで出走した20頭中13頭が勝ち上がっています。

 ブレイディヴェーグは母方にサンデーサイレンスを持ち、なおかつヌレイエフのクロスを持つロードカナロア産駒なので、女傑アーモンドアイと配合構成が似ています。

 2着シンティレーションは、サドラーズウェルズ(ヌレイエフと4分の3同血)とサンデーサイレンスを併せ持つので、配合のアウトラインがブレイディヴェーグと似ています。

 この場合の「4分の3同血」とは、父が同じで母同士が親子という関係です。いま売り出し中の新種牡馬サートゥルナーリアも、シンティレーションと同じく母方にサドラーズウェルズとサンデーサイレンスを併せ持ちます。

 ヌレイエフ、その4分の3同血サドラーズウェルズ、その全弟フェアリーキングは、ロードカナロアと相性良好。このパターンは一口やPOGで馬を選ぶ際の配合的指針となります。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【アホヌーラ】

 無名の安馬からのし上がり、イギリスでスプリントチャンピオンシップ(G2・芝5ハロン)とキングジョージS(G3・芝5ハロン)を制覇。

 種牡馬としても意外な成功を収め、ドクターデヴィアス(英ダービー、愛チャンピオンS、デューハーストS)、ドントフォゲットミー(英2000ギニー)、パークアピール(チェヴァリーパークS、モイグレアスタッドS)、パークエクスプレス(フェニックスチャンピオンS)など多くの重賞勝ち馬を出しました。

 マイル以下を得意とするスピードタイプですが、英ダービー馬ドクターデヴィアスは例外。同馬は日本に輸入され、ロンドンブリッジ(ファンタジーS、桜花賞2着)を出しました。ただ、同馬も種牡馬としてはスピード寄りの特長を伝えました。

 特筆すべきは血脈の影響力。インディアンリッジ、インチナーといった後継種牡馬が成功しただけでなく、前出のパークアピールはケープクロス(シーザスターズの父)の母、ディクタット(ドリームアヘッドの父)やイフラージ(ウートンバセットの父)の2代母となり、パークエクスプレスはシンコウフォレスト(高松宮記念)とニューアプローチ(ドーンアプローチの父)の母、ワズ(英オークス)の2代母となりました。

 ロンドンブリッジの牝系はダイワエルシエーロ、グレーターロンドン、キセキなど多くの一流馬が誕生しています。他にアクラメーション(ダークエンジェルの父)、アゼリ(米年度代表馬)、ルロワデザニモー(アニマルキングダムの父)はアホヌーラを母の父に持ちます。英ダービー馬マサー、今年の高松宮記念を勝ったマッドクール、バスラットレオンの母バスラットアマルはアホヌーラのクロスを抱えています。

 バイアリータークにさかのぼる異色の父系に属し、母の父マーシャルは希少なブルドッグ系。それ以外もほぼ非主流血統で構成されているという生粋のアウトサイダー血統です。欧州血統に与えた影響はきわめて大きいといえるでしょう。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「1年間に最も多くの繁殖牝馬と種付けをした日本の種牡馬は? 」

 モーリスです。2017年に386頭と種付けをしました。内訳は、日本国内で265頭、シャトル種牡馬として渡ったオーストラリアで121頭です。海外を含まない日本のみの種付けでは、ロードカナロアが2018年に記録した307頭が最高記録です。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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