【吉村誠之助騎手】「『吉村の息子』じゃなく『誠之助の親父』と…」──NHKマイルCにランスオブカオスと挑む19歳“勝負強さ”の秘訣

2025年05月04日(日) 18:00

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▲19歳の若武者の素顔に迫る(撮影:大恵陽子)

直線で狭い間を割って突き抜け、チャーチルダウンズCを勝ったランスオブカオス。その力強いレースぶりとは対照的に、鞍上の吉村誠之助騎手共々、これが重賞初制覇となりました。

吉村騎手は昨年の初勝利もロスなく回り、直線で進路が空くのを待つという冷静な騎乗。その勝負勘は父で、地方競馬全国リーディングに3度輝いた吉村智洋騎手(園田・姫路)に似たものを感じさせます。19歳の誠之助騎手は一体どんな青年なのでしょうか。

重賞タイトルを手にランスオブカオスと臨むNHKマイルCに向けて伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

継続騎乗だからこそ「馬の新たな変化に気づけた」

──ランスオブカオスで重賞初制覇、おめでとうございます。

吉村 ありがとうございます。

──直線では前2頭の狭い間を割ってきて、人馬ともにこれが重賞初制覇と思えぬレースぶりでした。

吉村 あの進路はある程度行けそうかな、という雰囲気がしていました。ランスオブカオスもあまり苦にせず割って入れるので、あそこを選びました。

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▲チャーチルダウンズCでは直線で狭い間を割って見事勝利(c)netkeiba

──馬も頼もしいですね。デビュー戦のゲート内では吉村騎手が手綱をパンパンと操作している場面があったので、気性面で何かあるのかと思っていました。

吉村 あのレースは9頭立てで7頭が牝馬でした。ちょっと馬っ気があって、両サイドの牝馬にずっと反応していたので、ゲートに集中させるためにハミに意識を向かせていました。ゲート内の駐立が良くないわけではなく、気が散っていたのでやっただけです。

──謎が解けました。その新馬戦を勝った直後から将来を期待するコメントをしていました。

吉村 デビュー前に乗せていただいた時から追い切りの動きが良く、時計も楽々と出て、いい馬だなと感じていました。現状でどこまでやれるのかな、と思っていたら新馬戦であのパフォーマンスだったので、すごくいい馬だと改めて感じました。レースで能力の高さも感じることができました。

──新馬勝ちから中1週で朝日杯FSに出走。吉村騎手にとってはGI初騎乗で3着でした。

吉村 レースの日、オーナーさんも奥村先生も「思い切って乗ってきなさい」と言ってくださり、緊張しすぎることなく臨めました。新馬戦を勝って中1週でのGI挑戦で、馬がとても頑張ってくれたと思います。

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▲GI初騎乗となった朝日杯FSは3着に(ユーザー提供:ワラビさん)

──その後は年が明けてきさらぎ賞3着を挟んで、チャーチルダウンズCでの勝利という流れでした。

吉村 きさらぎ賞はレース自体は上手く運んでくれたと思いますが、1800mが少し長かったです。適性は1600mまでかな、というのがそこで絞れて、この馬のレースの組み立て方も騎乗していくうちに何となくイメージが湧いてきました。

──新馬戦からずっと乗っている馬で、様々な舞台を経験できたからこそですね。

吉村 デビュー戦から継続して乗せていただけていることは本当にありがたいです。そのおかげで馬の新たな変化に僕も気づけましたし、この馬に対するアプローチも自分なりの考え方とかが生まれてきて、とてもいい経験になっています。本当に素晴らしい馬に乗せていただいています。

「検量室前まで出てきてくださって」普段は見せぬ師匠の表情

──前走で重賞初制覇を果たして、周りからお祝いの言葉をよくかけられるのでは?

吉村 レース直後、所属厩舎の清水先生が検量室前まで出てきてくださっていました。普段はあまり褒められることはないんですけど、あのレースだけは褒めていただきました。

──師匠も嬉しかったんでしょうね。そういえば、お父様の吉村智洋騎手(地方競馬の園田・姫路所属)も応援に駆けつけていて、レース後には抱き合っていましたね。

吉村 父もこのレースがある程度勝負になるんじゃないかと思って来ていたようで、そこで勝てて嬉しかったです。「よくやったな」と言ってくれました。

──園田競馬場に誠之助騎手が乗りに来た時、親子でベッタリ喋る場面はあまり見かけなかったので、あのハグは意外でした。お父様からは普段、どんなアドバイスを受けているんですか?

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▲昨年は、誠之助騎手の初騎乗も見届けた父・智洋騎手(撮影:桂伸也)

吉村「内でロスなく運んで、進路が空かなければ仕方がない、くらいの思いで乗った方がいい」といつも言われています。

父・智洋騎手登場回はこちら▼

【吉村智洋騎手】WASJ参戦! 地方全国リーディング3度の名手を徹底解明──その技術と準備の裏側に迫る

──今回の重賞も、振り返るとリステッドレースで挙げた初勝利も、まさにそんな競馬でした。お父様に似た勝負強さを感じます。

吉村 そういう部分はたぶん受け継いでいて、似ている面も多いのかなと思います。でも、「吉村の息子」じゃなくて(父が)「誠之助の親父」って呼ばれるように、もっともっと頑張りたいです。

──そのお父様はNHKマイルC当日は京都競馬場で騎乗予定だそうです。東西で親子の活躍を期待しています。NHKマイルCに向けて意気込みをお願いします。

吉村 ランスオブカオスは前走でいい勝ち方ができ、自信を持ってGIレースに臨めます。馬はまだ経験値が少ない中でも一戦毎に内容が良化していて、吸収も早いです。厩舎の方々がいいコンディションを常に保ってくださっているので、あとは僕自身、模擬レース以来となる東京競馬場での騎乗をシミュレーションして、レースを何回も見返して臨みたいと思います。応援よろしくお願いします。

(文中敬称略)

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