【NHKマイルC AI予想】今年は荒れない!? AIが推奨する連軸候補の信頼度をジャッジ

2025年05月05日(月) 18:00

単勝オッズ3.1倍(1番人気)のヘデントールが優勝(c)netkeiba

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

大きく荒れた年も堅く収まった年もそれなりにある

AIマスターM(以下、M) 先週は天皇賞(春)が行われ、単勝オッズ3.1倍(1番人気)のヘデントールが優勝を果たしました。

伊吹 陣営はもちろん、鞍上のD.レーン騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。素晴らしいスタートを切って流れに乗り、序盤は行きたい馬を先に行かせる形で中団のインコースを追走。向正面から3コーナーにかけて少しずつ馬群の外へと持ち出し、先行した各馬や先に動いたショウナンラプンタ(3着)、ジャスティンパレス(6着)らを射程圏内に入れたポジションで4コーナーを通過しています。その後、残り200m地点の手前あたりでショウナンラプンタに外から並びかけ、そのままかわし去って単独先頭に。最後はさらに後ろから伸びてきたビザンチンドリーム(2着)との追い比べになったものの、しっかりリードを守り切って入線しました。勝負どころで長距離戦らしい駆け引きが繰り広げられただけに、仕掛けのタイミングが少しでも前後にズレていたら、終盤の展開やその結果はまったく違ったものになっていたかもしれませんね。この難しいレースを完璧に攻略し切ったのは本当にお見事です。

M ヘデントールは4歳馬。これで通算8戦5勝となりました。デビュー戦で2着に、デビュー4戦目の青葉賞で8着に敗れているものの、2連勝後に臨んだ3走前の菊花賞で2着、2走前のダイヤモンドSで重賞初制覇、そして今回GI初制覇と、昨夏以降は順調に出世街道を歩んでいますね。

伊吹 まだ一度も2000m未満のレースを使われていないように、木村哲也調教師をはじめとする陣営は、長距離適性の高さを早い段階で察知していたのでしょう。超一流のステイヤーがその素質に相応しいタイトルを獲得するまでのプロセスとしては、もっとも理想的な流れと言って良いかもしれません。私にとっては、トップトレーナーの凄みを改めて実感した一戦でもありました。

M ただ、古馬が出走できる2500m超のJRAGIはこの天皇賞(春)だけ。2400m前後、もしくはそれより短い距離のレースにどこまで対応できるかが今後のポイントとなりそうです。

伊吹 母のコルコバードは現役時代に2400m前後のレースを主戦場としていて、牝馬であることを考えると明らかに長距離向きだった馬。もっとも、父のルーラーシップは香港のクイーンエリザベス2世Cなどを勝っている馬で、個人的には2000mくらいがベストだったのではないかと考えています。このヘデントールも、生粋のステイヤーという印象はあまりなく、距離適性の幅がとても広い実力馬というイメージ。今回より短い距離のビッグレースで人気の盲点となっていたら、積極的に狙う価値は十分にあるのではないでしょうか。

M 今週の日曜東京メインレースは、現3歳世代の最強マイラー決定戦、NHKマイルC。昨年は単勝オッズ2.9倍(2番人気)のジャンタルマンタルが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ28.5倍(10番人気)のロジリオンが3着に食い込んだものの、2着が単勝オッズ2.9倍(1番人気)のアスコリピチェーノだったこともあり、3連単の配当は8520円にとどまっています。

伊吹 過去10年のNHKマイルCにおける3連単の配当は、平均値が28万8173円、中央値が14万1155円と、やや高め。ただし、過去10回のうち4回は4万円未満だったんですよね。波乱含みの一戦である一方、堅く収まった年も少なくありません。

M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、1番人気馬は1勝どまりで、3着内率も4割。さらに、4番人気から6番人気の馬も3着内率16.7%とやや苦戦していました。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2015年以降[5-4-2-9](3着内率55.0%)、単勝3番人気から単勝9番人気の馬は2015年以降[5-4-5-56](3着内率20.0%)、単勝10番人気以下の馬は2015年以降[0-2-3-84](3着内率5.6%)となっています。人気の中心となっているような馬はそれなりに堅実ですが、中位人気グループと下位人気グループの好走率にそれほど大きな差がないので、妙味ある伏兵を積極的に狙っていくべきレースと言えるでしょう。

M そんなNHKマイルCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、アドマイヤズームです。

伊吹 ちょっと意外なところを挙げてきましたね。今回のメンバー構成なら実績上位ですし、人気もそれ相応に集まるはず。

M アドマイヤズームは昨年末の朝日杯FSを制しているGIウイナー。休養明けだった前走のニュージーランドTでも、勝ったイミグラントソングとクビ差の2着に健闘しています。いかにも上積みがありそうな臨戦過程で、大きな不安要素が見当たらない一頭。素直に中心視しようと考えている方も多いのではないのでしょうか。

伊吹 Aiエスケープがこの馬を指名してくるくらいですから、今年のNHKマイルCは堅く収まる可能性が高いのかもしれませんね。この見立てを踏まえたうえで、好走馬の傾向とアドマイヤズームのプロフィールを見比べていきたいと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 近年は格の高いレースで好走したことのある馬が優勢。2021年以降の3着以内馬12頭中11頭は、JRAのGIかGIIで“着順が3着以内、かつ4コーナー通過順が2番手以下”となった経験のある馬でした。

M なるほど。GIIIやオープン特別のレースばかり使ってきた馬は強調できませんね。

伊吹 おっしゃる通り。今年もまずはビッグレースやその主要な前哨戦で上位に食い込んだ馬をひと通りチェックしておきましょう。

M 朝日杯FSの優勝馬であるアドマイヤズームにとっては心強い傾向です。

伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価した方が良さそう。前走の着順が2着以下、かつその前走で1位入線馬に0.4秒以上のタイム差をつけられていた馬は安定感を欠いていました。

M 大敗直後の馬は割り引きが必要、と。

伊吹 ちなみに、前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.4秒以上だったにもかかわらず3着以内となった3頭は、いずれも“同年の、JRAの、左回りのレース”において1着となった経験があった馬。明らかに東京芝1600mのコースが合いそうな馬であれば、前走の内容はあまり気にしなくて良いかもしれません。

M 先程も触れた通り、アドマイヤズームは前走のニュージーランドTで2着に敗れていますが、勝ち馬とはタイム差なし。この点も強調材料のひとつと言えます。

伊吹 さらに、同じく2021年以降は、ディープインパクト系種牡馬やロベルト系種牡馬の産駒が期待を裏切りがちです。

M こちらもなかなか興味深い傾向。どちらも優秀な種牡馬がたくさんいる父系ですし、ここまで結果を出せていないのも珍しいのではないでしょうか。

伊吹 2024年のNHKマイルCも、父にディープインパクト系・ロベルト系以外の種牡馬を持つ馬が1着から4着までを占めました。当然ながら、今年も同様の決着を警戒しておくべきだと思います。

M アドマイヤズームの父はロベルト系に属するモーリス。残念ながらこの条件はクリアできていません。

伊吹 もっとも、今年は出走予定馬の大半が何らかの不安要素を抱えていますから、血統だけを根拠に大きく評価を下げる必要はなさそう。私自身もそれなりに重いシルシを打つつもりでした。他ならぬAiエスケープも無理に逆らう必要はないと見ているわけですし、ある程度は素直に信頼して良さそうです。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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