【森一誠調教師】エンブロイダリーとオークスで二冠達成へ── 厩舎躍進の裏にある堀宣行師の“教え”とは

2025年05月18日(日) 18:00

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▲開業2年目の森一誠調教師に躍進の秘訣を聞きました(撮影:下野雄規)

オークスで牝馬三冠2つめのタイトルを狙う桜花賞馬・エンブロイダリー。管理するのは、開業2年目にして、桜花賞でGI初制覇を遂げた森一誠調教師です。

昨年末のカペラSで重賞初挑戦&初制覇を挙げ、今年はGIタイトルを獲得するなど大きな注目を集めている森師。躍進の裏には、調教助手時代に所属していた名門・堀宣行厩舎での経験が生かされているといいます。GI馬たちの戴冠までの過程を見てきたこともさることながら、堀師が大切にしていた“教え”が今の厩舎の礎に。その“教え”とは一体──。

そして、2冠目がかかるオークスへ向けての意気込みも伺いました。

(取材・文=小野響介)

周りの反響に「改めて調教師という仕事に携わって良かった」

──エンブロイダリーが牝馬三冠初戦を見事に制しました。改めてレースを振り返っていかがですか?

 ゲートを出ていいポジションをキープして運べましたし、道中は馬込みの中でもしっかり脚をためながら折り合えました。4角をいい手応えで回って、直線でもいい脚を使ってくれました。成長を感じるレースでした。

──反響はどうでしたか。

 クラシックという大きなレースでしたので、私自身もうれしかったですけど、それ以上に周りの方々がすごく喜んでくれました。ありがたいと思いましたね。調教師になってまだ2年目ですけど、改めて調教師という仕事に携わって良かったと思いました。

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▲雨の桜花賞を制したエンブロイダリー(c)netkeiba

──開業2年目でのGI初制覇、なおかつクラシックでのタイトル獲得となりましたが、開業された1年前からこの姿をイメージできていましたか?

 さすがに開業したばかりでGI制覇を考えてはいませんでしたけど、目標としてはありましたので、達成できて良かったと思っています。GIに出走して勝ち負けする馬を間近で見てきて、そこに至るまでの過程も見てきました。堀厩舎での経験が生きたと思います。

──厩務員、助手時代を堀厩舎で過ごしました。堀宣行調教師から学んだことは大きいですか。

 多くのことを学ばせてもらいましたが、一つを挙げるなら、堀先生は普段から馬をしっかりと観察して、小さな変化を見逃さないように意識しながら見ています。私もスタッフには、そのような管理をするように日頃から伝えています。

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▲堀厩舎ではサリオスなどのGI馬を担当(撮影:下野雄規)

──ここまで重賞3勝。ガビーズシスター、エンブロイダリーの2頭とも牝馬ですが、牝馬を育成する上で意識されていることはありますか?また、技術調教師時代に研修をしていた国枝厩舎での経験がそこに生きていますか?

 基本的に馬の管理をする上でカイ葉の調整、調教メニューなど、牡馬、牝馬は関係なくやっていますが、その中でカイ食いが細くなってきた、テンションが上がってきた、ということは牝馬特有であることです。そのような時には調教を加減したりします。国枝先生は型にはめずに状況によって臨機応変に対応していました。そのようなところは参考にさせていただいています。

オークスでも「スピードと総合力は通用する」

──デビュー前にエンブロイダリーを見た印象はどうでしたか。

 牝馬としてはすらっと脚が長くて体高が高く、見栄えのする馬だなという印象がありました。アドマイヤマーズは新種牡馬でしたので、セリなどで他のアドマイヤマーズ産駒を見ながら、そのような馬との比較でしたが、スピードはありそうだなと感じました。

──エンブロイダリーの強みはどこにありますか?

 スピードの持続力だと思います。

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▲未勝利戦では7馬身差で勝利(撮影:下野雄規)

──普段のエンブロイダリーはどうですか?

 おとなしくて扱いやすい馬ですよ。

──1週前追い切りは美浦Wで併せ馬を行い、6F81秒3-64秒7-50秒0-35秒6-11秒2の時計を記録しました。オークスに向けてエンブロイダリーの状態を教えてください。

 5月8日に美浦へ帰厩し、その週末から坂路で調整を始めて、1週前追い切りはWで併せ馬をやりました。1週前なのでしっかり負荷をかけていい時計が出ましたし、2頭でいい内容の追い切りができました。ここまでは順調な調整ができています。

──今回の舞台は東京芝2400m戦になります。そこに関してはどうですか。

 この時期の3歳牝馬にとって東京の芝2400mは過酷な舞台ですし、エンブロイダリーも含めて、ここがベストで臨んでくる馬はほとんどいないと思っています。そのような馬同士の戦いになりますので、スピードと総合力で通用すると思っていますし、そうできるように調整していくのが私の仕事です。

──調整過程において、距離延長に関して取り組んでいることはありますか。

 落ち着かせてしっかり折り合えるようにすることが一番だと思います。そこを意識しながら調教のメニューを組んでいます。

──最後に牝馬二冠目を狙う意気込みを教えてください。

 ファンの方々からお手紙やお守りをたくさんいただいて、すごくファンの多い馬だなと感じています。桜花賞馬としてオークスに挑みます。まずはいい状態で出走させて、その中で結果を出せるように、しっかりとやっていきたいと思っています

(文中敬称略)

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