オークス制覇のカムニャック 「父・母父」の配合は名馬キタサンブラックと同じ

2025年05月26日(月) 18:00

血統で振り返るオークス

【Pick Up】カムニャック:1着

「ブラックタイド×サクラバクシンオー」という組み合わせは、名馬キタサンブラックと同じ。おそらく本馬はその再現を狙って配合が決められたのでしょう。父ブラックタイドの重賞勝利はスプリングSのみ。全弟ディープインパクトが稀代の名馬となったこともあり種牡馬入りを果たしました。その代表産駒がキタサンブラックです。ビッグレースを勝ちまくり、2年連続で年度代表馬に選出されました。

 カムニャックは父ブラックタイドにとって2頭目のGI馬となります。JRAでデビューした700頭を超えるブラックタイド産駒のうち、たった2頭しかいないGI馬が、いずれも「母の父サクラバクシンオー」から誕生しているのは偶然とは思えません。他にも母方にサクラバクシンオーを持つフェーングロッテン(ラジオNIKKEI賞)も重賞を勝っています。

 サクラバクシンオーはスプリンターズSを連覇し、1400m以下では12戦11勝、芝1400mで日本史上初めて1分20秒の壁を破った馬でもあります。母方に入る血としてはきわめて優秀で、たとえば今回の2着馬アルマヴェローチェも2代母の父がサクラバクシンオーです。サトノレーヴ、ファストフォース、ピクシーナイト、オオバンブルマイなど多くの活躍馬の母方に入っています。ヨーロッパ血統に例えればアホヌーラのような存在といっていいでしょう。

 母ダンスアミーガは関屋記念や中京記念で4着となったマイラー。すでにキープカルム(ダービー卿CT3着/父ロードカナロア)を産んだ実績があります。3代母ダンスパートナーはサンデーサイレンスの初年度産駒で、オークスとエリザベス女王杯を勝ちました。ダンスインザダークやダンスインザムードの全姉にあたる良血です。その母ダンシングキイのファミリーから出たGI馬は、ダンスインザムード以来久々です。

血統で振り返る平安S

【Pick Up】アウトレンジ:1着

 父レガーロは、アウトレンジの馬主でもある寺田寿男さんの持ち馬で、重賞こそ勝てなかったものの、全日本2歳優駿2着、レパードS3着などダート路線で活躍しました。エーピーインディ≒チャーミングラッシー2×3という強度の4分の3同血クロスを持っています。

 2019年から種牡馬入りし、昨年までの6年間に20頭の種付けをしています(2025年分はまだ未集計)。血統登録頭数は現時点で10頭。種牡馬としてはかなりマイナーな存在で、JRAで出走を果たした馬はアウトレンジしかいません。その1頭が重賞勝ち馬となったのですから快挙といえるでしょう。

 父系はバーナーディニを経てエーピーインディにさかのぼるアメリカ血統。バーナーディニは今年のケンタッキーダービー馬ソヴリンティの母の父、同2着馬でプリークネスSを勝ったジャーナリズムの2代母の父となるなど、母方に入ってきわめて優れた影響力を発揮しています。

 母クイーンパイレーツは繁殖牝馬として優秀。初仔のハピ(父キズナ)はチャンピオンズC3着、昨年の平安Sで2着となりました。2番仔アウトレンジは平安Sの他に昨年11月に浦和記念を勝っています。3番仔リトルハピ(父キズナ)はダートで3戦全勝。まだまだ活躍馬を出せる繁殖牝馬でしょう。現2歳は産駒なし、現1歳はコントレイルの牝馬です。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【スキャットダディ】

 アメリカでダートGIを2勝。種牡馬になると大成功を収め、米三冠馬ジャスティファイを筆頭に、カラヴァッジオ、ノーネイネヴァー、レディオレリア、レディオブシャムロック、ダシータ、スーネーションなど多くの活躍馬を出しました。日本では高松宮記念を勝ったミスターメロディが代表格です。

 基本的には芝・ダート兼用のスピードタイプですが、フィジカルな能力が高く、大レース向きの底力もあり、配合次第ではジャスティファイのように12ハロンをこなす馬も出ました。

 父ヨハネスブルグは日本でも種牡馬生活を送り、ホウライアキコ、ネロ、エイティーンガールといった重賞勝ち馬を出しています。その父ヘネシーはヘニーヒューズの父として有名で、日本で繋養された際にフェブラリーSを勝ったサンライズバッカスを出しています。

 スキャットダディはわずか11歳で早世しましたが、産駒は種牡馬としても優秀で、ジャスティファイはカルティエ賞年度代表馬シティオブトロイなどGI馬を連発しています。カラヴァッジオ、ノーネイネヴァーも優れた産駒を出しており、サイアーラインは着実に広がりを見せています。

 母の父としてはロータスランドが重賞を勝っています。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「父系の連続ダービー制覇記録は?」

 同一国の連続記録は、シュタルケ騎手の母国であるドイツダービーの6代です(カッコ内は生年)。父系図に掲げた馬はすべてドイツダービーを勝っており、ランドグラフ(Landgraf)を起点に6代続きました。6代目にあたる6頭のうち、どれか1頭でもダービー馬を出していれば7代連続でしたが、残念ながら勝ち馬は現れませんでした。

   Landgraf(1914)
     Ferro(1923)
      Athanasius(1931)
       Ticino(1939)
        Neckar(1948)
        │Zank(1961)
        │Waidwerk(1962)
        Orsini(1954)
         Ilix(1963)
         Elviro(1965)
         Don Giovanni(1966)
         Marduk(1971)

 英ダービーとケンタッキーダービーは3代連続が最高。

 日本ダービーは親仔制覇はありますが、親仔孫の3代連続はありません。今年の登録馬のうち、ドゥラメンテ産駒(エムズ、ファイアンクランツ、ホウオウアートマン、マスカレードボール)かキズナ産駒(エリキング、サトノシャイニング、リラエンブレム)が勝てば、3代連続の新記録が達成されます。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

関連情報

新着コラム

コラムを探す