英オークスに前売り1番人気で臨む無敗のクラシック馬 2番手グループには前哨戦勝利馬4頭も

2025年05月28日(水) 12:00

距離延長が二冠達成へのカギ

 先週の英ダービーに引き続き、今週は6月6日にエプソム競馬場で行われるG1英オークス(芝12F6y)の展望をお届けしたい。

 ブックメーカー各社が2.75倍から3.25倍のオッズを掲げて前売り1番人気に推しているのが、5月4日のG1・1000ギニー(芝8F)に続く二冠を狙うデザートフラワー(牝3、父ナイトオブサンダー)だ。ゴドルフィンによる自家生産馬で、C.アップルビー厩舎から2歳7月にデビューした同馬。2歳時は4戦。ニューマーケット競馬場のメイドン(芝7F)と条件戦(芝7F)、ドンカスター競馬場のG2メイヒルS、ニューマーケット競馬場のG1フィリーズマイル(芝8F)を全て制し、無敗の4連勝で2歳シーズンを終了した。中でもフィリーズマイルは、2着以下に5.1/2馬身差をつける完勝で、クラシックの有力候補と目される存在となった。前哨戦を使わずに、ぶっつけで臨んだのがG1・1000ギニーで、内外2つに分かれた馬群の内側を先導した同馬は、そのまま後続に1馬身差をつけて逃げ切り勝ち。無敗のクラシック制覇を果たした。二冠達成なるかどうかのカギは、言うまでもなく一気に4ハロン延びる距離への対応だろう。

 父は現役時代、2000ギニーやロッキンジSを制したマイラーで、生涯で1度だけ10F路線に挑んだG1エクリプスSでは8着に大敗している。さらに、母プロミシングランも現役時代、5つの重賞を制した活躍馬で、G2ロックフェルS(芝7F)、G2アルラシディヤ(芝1800m)など、制した重賞の距離は7〜9Fだった。これだけ見ると、距離延長大歓迎という血統背景ではないように見えるが、同馬を管理するC.アップルビー師は、克服可能と強気な姿勢を見せている。師によれば、エプソム競馬場を走る上で最大のポイントは、3コーナー過ぎからの下り坂を、いかにバランスよく駆け降りることが出来るかにあり、下りを走るのも上手なデザートフラワーは、エプソム競馬場でも存分に力を発揮できるとしている。

 5.0倍〜10倍のオッズを提示されて2番手グループを形成する4頭は、いずれも、いわゆるオークスプレップと言われる前哨戦で勝利を収めた馬たちだ。5月4日にニューマーケット競馬場で行われたLRプリティポリーS(芝10F)を3.1/4馬身差で快勝し、デビューから無敗の2連勝を飾ったのが、オーウェン・バロウズ厩舎のファラケヤ(牝3、父ニューベイ)だ。シャドウェルによる自家生産馬で、祖母がG1・BCフィリー&メアターフ(芝11F)など2つのG1を制したラフドゥードだから、22年の欧州年度代表馬バーイードや、G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)など12F路線のG1を2勝したフクムらが、従兄弟にいるファミリーだ。

 5月7日にチェスター競馬場で行われたLRチェシャーオークス(芝11F75y)を勝っての参戦になるのが、エイダン・オブライエン厩舎のミニーホーク(牝3、父フランケル)だ。G2サマーマイル(芝7F213y)など2重賞を制したティルジットの半妹で、ゴフスオービー1歳市場にて185万ユーロ(当時のレートで2億9387万円)でクールモアに購買されたのがミニーホークだ。2歳10月にデビュー。コーク競馬場のメイドン(芝8F)で2着となった後、レパーズタウン競馬場のメイドン(芝8F)を制し、デビュー2戦目で初勝利をあげて2歳シーズンを終了。チェシャーオークスが今季初戦だった。

 5月10日にリングフィールド競馬場で行われたLR英オークストライアルフィリーズS(芝11F133y)を9馬身差で圧勝しての参戦となるのが、これもエイダン・オブライエン厩舎のジゼル(牝3、父フランケル)だ。G1ジャストアゲームS(芝8F)など2つのG1を制したニュースペーパーオブレコードの初仔となるジゼルは、クールモアとホワイトバーチのパートナシップによる自家生産馬。2歳10月にカラ競馬場のメイドン(芝7F)を制し、デビュー2戦目で初勝利をあげた後、G3スタフォーズタウンスタッドS(芝8F)で3着となって2歳シーズンを終了。オークストライアルSが今季初戦だった。

 そして、5月14日にヨーク競馬場で行われたG3ミュージドラS(芝10F56y)を5.1/2馬身差で制しての参戦となるのが、またしてもエイダン・オブライエン厩舎のワール(牝3、父ウートンバセット)だ。クールモアによる自家生産馬で、G1愛メイトロンS(芝8F)など2つのG1を制したハイドレンジアや、G1・英1000ギニー(芝8F)など同じく2つのG1を制したハモーサの姪にあたるのがワールだ。2歳時は4戦し、G3スタフォーズタウンスタッドS(芝8F)を含む2勝をあげた。今季初戦となったカラ競馬場のG3パークエクスプレスS(芝8F)は6着に敗れたが、続くG3ミュージドラSでは一変した動きを見せて2度目の重賞制覇を飾った。

 複数いるオブライエン厩舎の馬から、主戦のライアン・ムーア騎手がどれを選択するかで、オッズは大きく変わる可能性がありそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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