ジャンタルマンタルが春のマイル王者に 日本の芝に適性があるパレスマリス産駒

2025年06月09日(月) 18:00

血統で振り返る安田記念

【Pick Up】ジャンタルマンタル:1着

 父パレスマリスはベルモントS(米G1・ダ12ハロン)、メトロポリタンH(米G1・ダ8ハロン)の勝ち馬。ジャスティンパレス(天皇賞(春))、アイアンバローズ(ステイヤーズS)の半兄にあたる良血です。アメリカにおける8年間の供用で、BCジュベナイルターフ(米G1・芝8ハロン)を勝ったストラクター(レックススタッドで供用中)など4頭の北米重賞勝ち馬を出しました。全体的には地味な成績です。

 ところが、日本では様相が異なります。わずか7頭の外国産馬・持込馬のうち6頭が勝ち上がり、うち2頭が重賞を勝っています(もう1頭はノーブルロジャー)。アメリカにおける代表産駒が芝馬であることを考えても、日本の芝にそれなりの適性があることは間違いないところでしょう。

 2024年から日高町のダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで供用されています。初年度の種付け頭数は262頭。全種牡馬のなかでナンバーワンです。

 母インディアマントゥアナはレッドカーペットH(米G3・芝11ハロン)の勝ち馬。息子のジャンタルマンタルはその資質を受け継いで芝向きとなりました。

 これで3つめのGIタイトルとなりますが、まだ4歳と若く、現在のマイル路線にはこれといったライバルが見当たらないので、さらにタイトルを上積みする可能性が高いでしょう。

血統で振り返る英ダービー

【Pick Up】ランボーン:1着

 3番人気ランボーンが逃げ切り勝ちを収めました。勝ちタイムは2分38秒50。同じエイダン・オブライエン厩舎の1番人気ドラクロワは直線伸びず9着。

 父オーストラリアは2014年の英・愛ダービー馬。種牡馬入りした2015年の種付け料は5万ユーロでしたが、今年の種付け料は1万ユーロ。10年間で5分の1にまで下落していました。ガリレオ→オーストラリア→ランボーンと3代連続で英ダービーを制覇したことになりますが、これは246回の英ダービー史のなかでタイ記録。もし将来、ランボーン産駒が英ダービーを勝てば、4代連続の新記録となります。

 母ゴッサマーウィングスは、クイーンメアリーS(英G2・芝5ハロン)2着、フライングチルダーズS(英G3・芝5ハロン)3着という成績があります。父オーストラリアは重厚なスタミナ血統なので、母のスピードは好ましいでしょう。

 血統の2代目にガリレオとスキャットダディを併せ持つ、という配合構成は、昨年の勝ち馬シティオブトロイと同じ。ガリレオを抱えた馬の英ダービー制覇は8年連続です。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【バーナーディニ】

 三冠レースのひとつプリークネスSを含めて米G1を3勝。引退レースのBCクラシックでも2着と健闘し、米最優秀3歳牡馬に選出されました。

 父は名種牡馬エーピーインディ、母は米G1馬カララファエラという良血。エーピーインディの代表的な後継種牡馬は、プルピット、マリブムーン、コングラッツ、マインシャフト、フラッターなど、母の父がミスタープロスペクターであることが多いのですが、本馬はクワイエットアメリカンなので一味違います。クワイエットアメリカンは、キラロー≒デミュア2×1と表現することもできる異様な凝縮を抱えており、バーナーディニ以外にも、セイントリアムの母の父、ガンランナーの2代母の父など、現代の重要血脈の要所に含まれています。

 本馬は安田記念を勝ったジャンタルマンタルの母方、平安Sを勝ったアウトレンジの父方に含まれています。今年のケンタッキーダービーとベルモントSの二冠を制覇したソヴリンティの母の父、同じくプリークネスSを勝ったジャーナリズムの2代母の父で、一昨年の米最優秀2歳牡馬フィアースネスの母方にも入っています。近年、多くの強豪馬の血統表のなかに含まれており、その影響力の強さが窺い知れます。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「現1歳で注目すべき新種牡馬は? 」

 すでに1歳馬のクラブ募集が開始されています。新種牡馬の中で種付け頭数の多い順に並べると以下の通りです。左側の数字は種付け頭数、右側は血統登録頭数です。

エフフォーリア     198 125
チュウワウィザード   193 115
サリオス        176 109
ウィルテイクチャージ  174  88
オメガパフューム    155  78
ホットロッドチャーリー 133  80
カラヴァッジオ     128  45
マカヒキ        104  60
ステルヴィオ       91  59
インティ         75  41
ジャンダルム       70  55

 エフフォーリアが種付け頭数、血統登録頭数のいずれにおいてもナンバーワン。初年度の種付け料「300万円」もカラヴァッジオと並んでトップです(2025年は400万円)。3歳時に皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念を勝って年度代表馬に選出された名馬で、エピファネイアの後継種牡馬第一号、という点でも注目です。

 芝向きでは他に、同じ社台スタリオンステーションに繋養されているサリオス(父ハーツクライ)も魅力的です。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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