2025年06月11日(水) 12:00
英国競馬の華と呼ばれる「ロイヤルアスコット」の開催が、6月17日から21日に迫っている。このコラムでは今週と来週の2回にかけて、開催期間中に組まれている8つのG1を展望したい。
まずは、初日の第1競走として施行されるのが定番になっている、ストレートマイルを使った4歳以上によるG1クイーンアンS(芝8F)。5月17日にニューバリー競馬場で行われたG1ロッキンジS(芝8F)の、再戦ムードが濃厚だ。
ロッキンジSを制したのは、5番人気だったリードアーティスト(牡4、父ドバウィ)。3歳だった昨年、この路線のG3を2勝していたが、今季初戦となった前走のG2サンダウンマイル(芝8F)は8着に敗退。ロッキンジSは人気を落としての参戦だった。道中3番手から残り2Fで先頭に立った後、内から伸びてきたダンシングジェミナイに一旦は3/4馬身ほど交わされたが、残り100mからリードアーティストがファイトバック。逆にダンシングジェミナイをクビ差交わすという、なかなかの味のある内容でG1初制覇を果たした。
1番人気で2着に敗れたダンシングジェナイ(父4、父キャメロット)は、昨シーズンのG1仏2000ギニー(芝1600m)2着馬。今季初戦のLRドンカスターマイル(芝8F)、前走G2サンダウンマイルを連勝しての参戦だったが、惜しくもG1初制覇には手が届かなかった。
中団待機からよく追い込んだものの3着に終わったロザリオン(牡4、父ブルーポイント)は、2歳時にG1ジャンリュックラガルデール賞(芝1400m)、3歳時にG1愛2000ギニー(芝8F)とG1セントジェームズパレスS(芝7F213y)を制している実力馬だ。3歳シーズン後半は呼吸器系疾病で全休。ロッキンジSは実に11カ月ぶりの出走だった。ロッキンジSを使われ、上積みが期待されるとして、ブックメーカー各社はこの馬を、前売り1番人気に推している。
そして、ロッキンジSが4着だったノータブルスピーチもまた、3歳時にG1英2000ギニー(芝8F)とG1サセックスS(芝8F)を制しているトップホースだ。同馬もロッキンジが今季初戦で、使われての変わり身があるはずだ。
続いて、初日の第3競走に組まれているのが、3歳以上による距離5FのG1キングチャールズ3世S(芝5F)だ。
中心になると見られているのは、ビリービング(牝5、父メーマス)である。2歳時から5F〜6Fの路線で活躍し、3歳時にG3テキサニタ賞(芝1200m)、4歳時にG2サファイアS(芝5F)に優勝している同馬。しかしG1では、G1ナンソープS(芝5F)2着、G1フライングファイブ(芝5F)2着など、惜敗が続いていた。昨年12月にニューマーケット競馬場で行われたタタソールズ・ディセンバーセールに上場されると、クールモアが300万ギニーで購買。5歳を迎えた今季も現役に留まり、シーズン初戦となったG1アルクーツスプリント(芝1200m)を制し、悲願のG1初制覇を果たした。同馬はこの春、フランケルを交配され、既に受胎が確認されており、おそらくはG1キングチャールズ3世が現役最後の一戦となるはずだ。
ビリーヴィングにとって最大の敵は、昨年に続いて2年連続で英国に遠征してきた、豪州調教馬のアスフォーラ(牝6、父フライングアーチー)だ。昨年、祖国でこの路線の重賞4勝の看板を引っ提げて渡英した同馬は、英国2戦目となったG1キングチャールズ3世Sに優勝。待望のG1初制覇を果たした。その後も英国に留まった同馬は、グッドウッド競馬場のG2キングジョージS(芝5F)2着、ヨーク競馬場のG1ナンソープS(芝5F)4着の成績を残した。帰国し、約8か月のリフレッシュ期間をもらった同馬は、今年4月12日にモーフェットヴィル競馬場で行われたG3RNアーウィンS(芝1100m)で復帰。ここで勝利し、6度目の重賞制覇を達成。続いて出走した、4月26日に同じくモーフェットヴィル競馬場で行われたG1ロバートサングスターS(芝1200m)は7着だった。同馬は、5月30日にニューマーケット競馬場に到着し、調整が積まれている。
続いて、初日の第4競走に組まれているのが、3歳牡馬による7F213yのG1セントジェームスパレスSだ。焦点は、英仏愛3か国の2000ギニー勝ち馬による競演にある。
5月3日にニューマーケット競馬場で行われたG1英2000ギニー(芝8F)を制したのが、ゴドルフィンのルーリングコート(牡3、父ジャスティファイ)だ。その後、二冠を目指して6月7日のG1英ダービー(芝12F6y)に向けて調整されていたが、馬場が渋ったことを理由に発走2時間前に陣営が取り消しを宣言。同時に、矛先をセントジェームスパレスSに切り替えることも発表された。
5月11日にパリロンシャン競馬場で行われたフランス版2000ギニーのG1プールデッセデプーラン(芝1600m)を制したのが、クールモアのアンリマティス(牡3、父ウートンバセット)だ。2歳時は6戦し、G1BCジュベナイルターフ(芝8F)など3重賞を含む4勝。3歳初戦のレパーズタウン2000ギニートライアル(芝7F)を制したのに続いて、G1プールデッセデプーランもアタマ差の接戦をモノにして、2度目のG1制覇を果たした。
5月24日にカラ競馬場で行われたG1愛二千ギニー(芝8F)を制したのが、ジョン&セイディ・ゴスデン厩舎のフィールドオブゴールド(牡3、父キングマン)だ。今季初戦となったニューマーケット競馬場のG3クレイヴンS(芝8F)を制した後、1番人気に推された英2000ギニーは、後方から猛然と追い込んだものの、ルーリングコートを1/2馬身とらえ損なって2着。鞍上をK.シューマーク騎手からC.キーン騎手に替えて臨んだG1愛二千ギニーは、2着以下に3.3/4馬身差をつける快勝で、前走の雪辱を果たした。そのレースぶりが印象的だったことから、ブックメーカー各社はフィールドオブゴールドを前売り1番人気としている。
続いて、開催2日目の第4レースに組まれているのが、4歳以上による9F212yのG1プリンスオヴウェールズSだ。
中心と見られているのが、クールモアが送り出すロサンゼルス(牡4、父キャメロット)だ。3歳だった昨年、G1愛ダービー(芝12F)に勝ち、G1英ダービー(芝12F6y)やG1凱旋門賞(芝2400m)で3着になるなど、12F路線の主力として活躍した同馬。4歳となった今季はここまで10F路線を歩み、カラ競馬場のG1ムーアスブリッジS(芝10F)、同じくカラ競馬場のG1タタソールズGC(芝10F110y)を連勝している。
昨秋のG1チャンピオンS(芝10F)勝ち馬で、今季初戦のG1タタソールズGCが2着だったアンマート(セ7、父オウタード)、仏国におけるこの路線の重賞2勝馬で、前走パリロンシャン競馬場のG1ガネー賞(芝2100m)が2着だったマップオブスターズ(牡4、父シーザスターズ)、昨秋のG1愛チャンピオンS(芝10F)勝ち馬で、ここが今季初戦となるエコノミクス(牡4、父ナイトオブサンダー)らが、2番手グループを形成している。
ロイヤルアスコット3日目以降のG1・4競走は、来週のこのコラムで展望する予定だ。
なお今年のロイヤルアスコットは、グリーンチャンネル開局30周年特別企画として、5夜連続で生中継される予定。日本の競馬ファンの皆様も、ぜひご注目いただきたい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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