2025年07月23日(水) 18:01
▲競走馬たち“休養施設”にお邪魔しました!(c)netkeiba
“滞在競馬”がメインとなる夏の北海道シリーズですが、全馬が次のレースまで競馬場の馬房でずっと過ごせるわけではなく、放牧にでたりと移動をしなければなりません。広大な北海道で、少しでも馬たちにとって良いコンディションを保つために作られたのが『真狩サマーステーブル』です。そこで今回、“厩務員さんのお仕事”を体験してきました。一頭一頭の個性に触れる毎日で、競馬ファンとして見てきた世界がぐっと近づいた1週間でした。
(取材・文=netkeiba編集部)
夏の北海道シリーズが開幕中の中央競馬。舞台となる函館競馬場・札幌競馬場には馬房の数に限りがあるため、レースの間隔が空く馬は放牧に出なければなりません。
ですが、北海道の広い土地では、その移動だけでも体力を消耗してしまい、思うように休養できないケースも少なくないそうです。そんなこの時期ならではの課題を解消するために、2023年、北海道真狩村に誕生したのが、矢作芳人調教師が全面プロデュースした外厩施設『真狩サマーステーブル』です。
真狩村は、自然に囲まれた静かな場所で、空気もとっても澄んでいて、風が抜ける音や鳥のさえずりが心地よく響きます。そんな環境の中で馬たちは穏やかに過ごしており、心も体もリラックスできる場所だと感じました。移動の負担を最小限に抑えながら、落ち着いた環境でしっかりと休ませてあげられる…まさに夏競馬における“理想の中継地点”という印象を受けました。
真狩サマーステーブル!(c)netkeiba
今回は、その『真狩サマーステーブル』で、実際にサラブレッドたちのお世話を体験させていただきました。
朝5時半。まだ夜が明けきらないうちに厩舎へ向かいます。馬のお仕事をされている方からすると、むしろ遅いくらいかもしれませんが、普段9時頃から仕事をしている自分にとっては特別早起きです(笑)。
厩舎に着くと、まだ寝転がっている子もいれば、すでに元気いっぱいに壁を蹴っている子もいて、それぞれの朝を迎えていました。
まずは馬体チェックからスタート。体温を測って、体や脚を触りながら、人と話すようにコミュニケーションをとって健康状態を確認していきます。そのあと、少しだけ朝ごはんをあげて、馬たちはウォーキングマシンやトレッドミルへ。ここは休養をメインとする施設なので、乗り運動などは基本的に行わないそうです。
ウォーキングマシンで体を動かします(c)netkeiba
トレッドミルを上手にこなしてたくさん汗をかきました(c)netkeiba
馬たちが運動している間に、人間も働きます。
馬房掃除はまずボロ拾いから。いろんなところにしている子、なんとなく隠している子、同じ場所にする子…。こんなところにも性格が出ていて、「馬ってかわいいなぁ」と思いながらひたすら拾います。
続いて寝藁の入れ替え。藁をすくって、湿っていたり汚れた部分を取り除き、まだ使える藁は角の3ヶ所に分けて置きます。スタッフ(プロホースマン)さんは手際よく進めていましたが、これが思った以上に難しい…! まず藁がうまくすくえない。助けてもらいながらなんとか終えました。新しい藁を足してふわふわにして、ふかふかベッドをつくります!
きれいな部分は馬房の角に集めて(c)netkeiba
新しい藁を足したらふわっふわにします!(あまり伝わらない…)(c)netkeiba
馬房を整えたら、近くの湧水から汲んできたおいしいお水と朝ごはんを用意。このタイミングで夜飼い分も含めて3食分のごはんをまとめて準備しておきます。馬によって飼料や配合が少しずつ違っていて、本当にいろんな種類の飼料がありました。競走馬にとっても食事がどれだけ大事かを改めて実感します。
全員の1日分を一気につくります(c)netkeiba
飼い桶の底からしっかり混ぜます!(c)netkeiba
乾草を補充したら、馬たちを迎える準備が完了です。
午後の仕事は14時頃から。朝と同じように馬体をチェックして、ウォーキングマシンへ。馬が運動している間にさっと馬房を掃除し、新しいお水やごはん、乾草を追加します。
午前か午後かは気候などで決まるそうですが、運動から戻った馬はシャワーで汗を流します。競馬ファンにはおなじみの、あのストローみたいなホースを脚にくるくる巻きつけてクールダウンしながら、ブラシで汚れを落とし…、
スパイラルレッグクーラーというらしい。元気な子は動くので外れます(c)netkeiba
それから汗こきで水分をとって、拭き取って仕上げます。特に繋(つなぎ)の部分はしっかり拭くのが大事だそうで、ここをおろそかにすると脚元の病気の原因になると教わりました。ご指導のもと、丁寧に拭かせていただきました。
汗こき越しのかわいいサラブレッドさん(c)netkeiba
夜は20時〜21時頃に夜飼いをして、おやすみ! と声をかけて1日が終了です。
普段取材を通して競走馬それぞれの個性に魅力を感じていましたが、実際にお世話をさせてもらうと、この1週間の短い期間でも本当にいろいろな性格の子がいることを改めて知ることができました。
馬房がお隣同士で、いつも顔をくっつけて仲良くしている女の子たち。片方が外に出ると、残されたほうが寂しそうにきゅーんと鳴いたり、前掻きが止まらなくなって大騒ぎしたり…。馬運車からなかなか降りてこない子、慣れるまでごはんが食べられない子、逆にどっしり落ち着いている子もいて、それぞれ本当に個性豊かです。
競馬が終わってそのまま入厩! 今日はおつかれさまでした。(c)netkeiba
ポニーのホーネットくんのお散歩も日課です!(c)netkeiba
いろんな感情を持つ動物たちを相手に、ただ流れ作業でお世話をするのではなく、一頭一頭の様子をよく見ながら、心を込めてケアすること。それが競馬を支えるんだと改めて感じました。
頭を撫でながら「もう一生会わないんだろうなぁ」とつぶやくスタッフさんの言葉からも、一頭のサラブレッドに本当にたくさんの人が関わっているんだな、としみじみ思いました。
***
真狩サマーステーブルには、競走馬用の外厩施設のほかに、一般のお客様が泊まれるコテージ「コテージ・エクリプス」が併設されています。
(c)netkeiba
コテージは3棟あり、それぞれコントレイル棟、リスグラシュー棟、ラヴズオンリーユー棟と矢作厩舎の名馬たちの名前が付いています。コントレイル棟はこんな雰囲気です!
コントレイル棟の表札(c)netkeiba
ヒーロー列伝のポスターも飾ってあります(c)netkeiba
2階のリビング部分(c)netkeiba
コントレイル棟のベッドルームは3部屋!(c)netkeiba
コテージからも羊蹄山の絶景が眺められます!(c)netkeiba
厩舎稼働中は営業しておりませんが、夏競馬が終わったあとの9月〜5月頃まで宿泊が可能です。
ロケーションと空気が抜群なだけでなく、JRA賞のトロフィーやコントレイルの小さい銅像なども飾ってあり、競馬ファンの方にはたまらない空間になっています。ご興味のある方は、ぜひ訪れてみてください!
▽コテージエクリプス
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