2025年07月28日(月) 18:00
単勝オッズ4.4倍(1番人気)のカナテープが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週は関屋記念が行われ、単勝オッズ4.4倍(1番人気)のカナテープが優勝を果たしました。
伊吹 この馬自身も鞍上のR.キング騎手も、お見事と言うほかありません。五分のスタートを切りましたが、ポジション争いに加わることなく向正面を進み、後方の15番手で3コーナーへ。4コーナーでも無理に仕掛けず、ゴール前の直線に入ったところで躊躇なく大外へ持ち出しています。逃げたシンフォーエバー(10着)が残り200m地点のあたりまで先頭をキープしていたものの、インを突いて差してきたオフトレイル(2着同着)らとともにこれを捕らえ、最後はボンドガール(2着同着)を含めた3頭の争いに。内の2頭が併せ馬の形で伸びる中、やや離れた外でしっかり脚を使い、クビ差だけ先着しました。勝ち時計は1分31秒0のコースレコード。結果的に追い込み勢が上位を占めたとはいえ、決して楽な展開ではなかったと思いますし、着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。
M カナテープは6歳牝馬。休養を挟みながら使われてきたこともあり、今回がまだ通算17戦目ではあるものの、2走前の初音Sを勝ってオープン入りを果たしたばかりの馬です。
伊吹 その初音Sを勝った時の鞍上もR.キング騎手でしたね。外国所属のジョッキーとタッグを組んだレースはこれで[2-3-1-0](3着内率100.0%)と、まだ一度も大きく崩れていません。ちなみに、右回りのレースはこれまでのところ[0-0-0-3](3着内率0.0%)ですが、左回りのレースは[5-4-3-2](3着内率85.7%)。得意条件がはっきりしているタイプと言えます。
M 今後も、そういった傾向を踏まえたうえで狙い時を見極めた方が良さそうですね。
伊吹 ただ、これだけわかりやすいと他の競馬ファンもこの点に注目するでしょうし、これから苦手条件を克服する可能性もあるわけですから、あまり絶対視しない方が良いかもしれません。母のティッカーテープは現役時代にアメリカンオークスなどを勝っている実績馬。カナテープは2019年のセレクトセールに上場され、C.フィプケ氏が9072万円で購買しました。出世に時間がかかったとはいえ、もともと素質を高く評価されていたわけですし、より大きな舞台でも活躍を期待できそう。秘められたポテンシャルの高さを計算に入れたうえで、次走以降も上手に付き合っていきましょう。
M 今週の日曜新潟メインレースは、函館スプリントS・北九州記念に続くサマースプリントシリーズの第3戦、アイビスSD。昨年は単勝オッズ7.6倍(3番人気)のモズメイメイが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ6.5倍(2番人気)のウイングレイテストが2着に、単勝オッズ16.0倍(8番人気)のテイエムスパーダが3着に食い込み、3連単の配当は4万9760円にとどまっています。
伊吹 2021年が3連単22万340円、2022年が3連単26万7060円、2023年が3連単80万4460円と、このあたりの時期は波乱続きだったのですが、2015年から2020年のアイビスSDにおける3連単の配当は、平均値が3万1813円、中央値が2万7065円。全体的に見れば堅く収まった年も少なくありません。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、4番人気から6番人気の馬が3着内率1割とやや苦戦している一方で、人気の中心となっている馬はそれなりに堅実です。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2015年以降[6-7-0-7](3着内率65.0%)、単勝3番人気から単勝9番人気の馬は2015年以降[4-3-7-56](3着内率20.0%)、単勝10番人気以下の馬は2015年以降[0-0-3-73](3着内率3.9%)となっていました。中位人気クラスの馬たちをそれぞれどう評価するかがポイントのひとつと言えるでしょう。
M そんなアイビスSDでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ウイングレイテストです。
伊吹 面白いところを挙げてきましたね。人気の中心ということはなさそうですが、ある程度の支持は集まるはず。
M ウイングレイテストは2023年のスワンSを勝っている実績馬。先程も触れた通り、昨年のアイビスSDでも優勝馬モズメイメイとクビ差の2着に健闘しています。8歳になったとはいえ、能力やコース適性の高さは証明済み。魅力を感じている方は案外多いかもしれません。
伊吹 3走前のオーシャンSで3着に食い込んでいますから、加齢による衰えを心配する必要はなさそう。人気薄なら積極的に狙ってみたくなる一頭ですね。Aiエスケープが有力と見ていることを踏まえたうえで、好走馬の傾向とこの馬のプロフィールを見比べていきましょう。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?
伊吹 まずは血統をチェックしておきたいところ。2020年以降の3着以内馬15頭中13頭は、父がディープインパクト系種牡馬かミスタープロスペクター系種牡馬でした。
M 思いのほかはっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 ただし、父がディープインパクト系・ミスタープロスペクター系以外の種牡馬、かつ“JRAの、GI・GIIのレース”において1着となった経験がある馬は2020年以降[0-1-1-3](3着内率40.0%)。昨年の上位馬のように、格の高いレースを勝ち切ったことのある実績馬なら、血統はあまり気にしなくて良いのかもしれません。
M ウイングレイテストの父はスクリーンヒーローで、ディープインパクト系にもミスタープロスペクター系にも属していない種牡馬。しかし、GIIのスワンSを勝っていますから、今年も減点する必要はないでしょう。
伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価した方が良さそう。同じく2020年以降の3着以内馬15頭中10頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.4秒以内でした。
M 大敗直後の馬はやや苦戦していますね。
伊吹 ちなみに、前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.4秒以上、かつ前走の出走頭数が16頭以下だった馬は2020年以降[0-1-1-39](3着内率4.9%)。前走好走馬や多頭数のレースをステップに臨む馬が中心と見るべきでしょう。
M ウイングレイテストの前走は16頭立ての函館スプリントSで、1着馬から0.7秒差の11着に敗退。残念ながらこの条件はクリアできていません。
伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬15頭中11頭は、5枠から8枠の馬でした。
M 新潟芝1000m直が舞台なので、やはり外枠を引くに越したことはなさそうです。
伊吹 なお、枠番が1枠から4枠、かつ前走の馬体重が480kg以上だった馬は2020年以降[0-0-0-23](3着内率0.0%)。内枠から好走を果たしたのが小柄な馬ばかりである点にも注目しておくべきだと思います。
M こちらも前走の馬体重が496kgだったウイングレイテストにとっては少々気掛かりな傾向。外枠を引けなかった場合は疑ってかかるべきなのでしょうか。
伊吹 正直なところ、私は過信禁物だと考えていました。もっとも、私が想像していたよりも人気を落としそうな雰囲気ですし、内枠に入ってしまった場合はより注目度が下がるはず。Aiエスケープが高く評価しているのであれば、無理に嫌う必要はないのかもしれません。枠順や実際のオッズを確認したうえで、馬券上の位置付けをもう一度じっくり検討してみます。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
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