アルジーヌが母仔制覇を達成 母のレコードタイムには僅か届かず

2025年08月04日(月) 18:00

血統で振り返るクイーンS

【Pick Up】アルジーヌ:1着

 母キャトルフィーユは2014年のクイーンSをレコード勝ちしているので、今回のアルジーヌの勝利によって母仔制覇を達成しました。ちなみに、母が樹立した1分45秒7のレコードタイムはいまだに破られていません。今回のアルジーヌのタイムは1分46秒0でした。

 2代母ワンフォーローズはカナダ最優秀古牝馬に3回選ばれた名牝。キャトルフィーユの他にレディアルバローザ(中山牝馬S2回)、エンジェルフェイス(フラワーC)を産んでいます。ケイアイファームの大黒柱ともいえる名牝系です。

 母は繁殖牝馬として優秀で、本馬の他にロードプレジール、メルトユアハート、サンクフィーユ(いずれも3勝クラス)を産んでいます。これらのうち、本馬、サンクフィーユ、メルトユアハートの3頭はロードカナロアを父に持ちます。ロードカナロアはケイアイファームの生産馬なので、この組み合わせが多くなるのは必然なのですが、しっかり成功しています。

「ロードカナロア×ディープインパクト」の組み合わせは、エリザベス女王杯を勝ったブレイディヴェーグや、レッドモンレーヴ、ファンタジストといった重賞勝ち馬を出しており、東京芝を最も得意としています。ただ、ワンフォーローズの一族は直線の短いコースに適性があり、本馬はそちらの傾向がより強く表れています。

血統で振り返るアイビスSD

【Pick Up】ピューロマジック:1着

 母メジェルダは現役時代にファンタジーSで2着と健闘しました。ピューロマジックの全兄メディーヴァルは新潟芝1000mの韋駄天S(OP)の勝ち馬で、半兄バグラダスはGI朝日杯FS5着馬。

 ピューロマジックとメディーヴァルの父はアジアエクスプレス、バグラダスの父はマジェスティックウォリアーと、いずれもダート向きの種牡馬から誕生しています。にもかかわらず芝で活躍しているのは、ディープインパクトを父に持つ母メジェルダの適性が優越しているからでしょう。

 父アジアエクスプレスは、現役時代に朝日杯FSとレパードSを勝った芝・ダート二刀流。ただ、産駒は完全にダート向きです。通算成績は芝19勝、ダート125勝と、全勝利数の87%をダートで挙げています。母の父にディープインパクトを持つ配合は様相が異なり、芝13勝、ダート9勝と、芝の成績がダートを上回っています。

「アジアエクスプレス×ディープインパクト」は、芝・ダートを問わず中央開催よりもローカルの成績がいい、という特長があります。中央開催の芝コースのなかで最も成績が優れている京都は、直線が平坦です。馬券で狙う際は、直線に坂のあるコースでは割り引いて、直線が平坦となっているコースで積極的に買ってみたいところです。

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【エルコンドルパサー】

 ジャパンC、NHKマイルC、サンクルー大賞、フォワ賞などを勝ち、凱旋門賞で2着と健闘しました。年度代表馬、JRA顕彰馬に選出されています。

 名種牡馬キングマンボ(キングカメハメハの父)の初年度産駒。母サドラーズギャルの「スペシャル=リサデル3×2」という全きょうだいクロスを継続する形で、自身は「ヌレイエフ≒サドラーズウェルズ3×2」という4分の3同血クロスを持ちます。

 ちなみに、サドラーズウェルズの肌にキングマンボを交配する、という配合パターンの最初の成功例はエルコンドルパサーで、母の全きょうだいクロスを継続する部分も含めて、すべて馬主の渡邊隆さんが意図的にデザインしたものです。

 1999年にヨーロッパのG1戦線で活躍したのですが、翌春の種付けで誕生した世代(2001年生)から「キングマンボ×サドラーズウェルズ」の配合が急増。その後、毎年のようにこの配合から活躍馬が出現し、ディヴァインプロポーションズ、ヴァージニアウォーターズ、ヘンリーザナビゲーターといったクラシックホースも誕生しました。ビッグアーサーとセキフウの母となったシヤボナもこのパターンです。

 エルコンドルパサーは7歳の若さで死亡したため、種牡馬としてはわずか3世代しか残せませんでした。しかし、ヴァーミリアン、ソングオブウインド、アロンダイト、トウカイトリック、サクラオリオン、アイルラヴァゲインなど、芝・ダート、距離の長短を問わず多くの重賞勝ち馬を送り出しました。

 それ以外にも、クリソプレーズ(クリソベリル、マリアライト、クリソライトの母)の父、ダンスアミーガ(カムニャック、キープカルムの母)の母の父となるなど、母方に入って優れた働きをしています。スタミナや底力を強化する血です。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「ロッタレースの牝系はアーモンドアイ以外に活躍馬が出ていますか?」

 ロッタレースは1992年にアメリカで誕生し、ノーザンファームで繁殖生活を送りました。トライマイベスト(デューハーストS)、エルグランセニョール(愛ダービー、英2000ギニー、デューハーストS)の4分の3妹にあたる良血です。

 娘のフサイチパンドラがエリザベス女王杯と札幌記念を勝ち、オークスで2着となりました。その娘、つまりロッタレースの直系の孫にあたるアーモンドアイがGIを9勝し、年度代表馬2回とJRA顕彰馬に選出されました。

 ロッタレースはフサイチパンドラの他にこれといった産駒を出すことができず、コンティノアール(OP)、ファンタジア(準OP)といったこのファミリーの主だった活躍馬は、いずれもフサイチパンドラの直系子孫です。繁殖牝馬となったアーモンドアイは、このファミリーの評価をさらに高めることが期待されます。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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