2025年08月04日(月) 18:00
単勝オッズ4.6倍(2番人気)のピューロマジックが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週はアイビスSDが行われ、単勝オッズ4.6倍(2番人気)のピューロマジックが優勝を果たしました。
伊吹 着差以上の完勝と言って良いでしょう。五分のスタートを切ったものの先行争いには加わらず、外寄りに固まった馬群の内、中団のポジションを追走。残り400m地点のあたりでさらに内へ持ち出し、すぐ前にいたカフジテトラゴン(12着)らを捕らえにかかっています。残り200m地点を過ぎると併走する馬がいなくなり、その後は単騎でラストスパート。外ラチ沿いでウイングレイテスト(3着)、テイエムスパーダ(2着)らが追い比べを繰り広げる中、決勝線の手前で先頭に並びかけ、結局テイエムスパーダにクビ差先着しました。2着から6着までを二桁馬番の馬が占めたように、全体的な流れとしては外枠からセオリー通りの競馬をした馬に有利なレース展開だったはず。C.ルメール騎手の手綱捌きが本当に絶妙だったと思いますし、仮に好枠を引いていたら、より決定的な差がついたかもしれません。さまざまな要因によってピューロマジックの強さが際立った形ですね。
M ピューロマジックは自身3度目の重賞制覇。3歳時に葵Sと北九州記念を連勝したものの、昨秋以降のレースでは苦戦が続いており、今回は約4か月の休養を挟んでの参戦でした。
伊吹 前走のアルクオーツスプリント(5着)は、スタートで後手を踏んだこともあって後方からの競馬に。残り400m地点のあたりで致命的な不利を受けてしまいましたが、そこからまた態勢を立て直して追い上げ、勝ったBelievingから0.4秒差の5着に食い込んでいます。スムーズにハナを切る展開でなくとも好走できることや、直線コースに対する適性の高さを示したわけですから、そのあたりがあまり評価されていないように感じた今回は絶好の狙い目だったのかも。正直なところ私自身も最終的に軽視してしまったので、反省しなければなりません。
M 今後はさらに注目度が高まりそうですね。
伊吹 現在の芝短距離路線で活躍している他馬の陣営からすると、かなり手強い存在となったのではないでしょうか。スプリンターとしての優秀さは十分過ぎるほどに証明済みですし、ここ2戦のパフォーマンスによって道中の出方も読みづらくなりました。馬券を買う我々も次走以降は評価に悩みそう。来るべきタイミングで的確に取捨を判断できるよう、今のうちにしっかり復習しておきましょう。
M 今週の日曜新潟メインレースは、3歳ダート三冠競走の最終戦であるJDクラシックの前哨戦、レパードS。昨年は単勝オッズ2.2倍(1番人気)のミッキーファイトが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ52.9倍(11番人気)のサトノフェニックスが2着、単勝オッズ15.3倍(6番人気)のミッキークレストが3着という結果で、3連単10万4110円の好配当決着となっています。
伊吹 2017年以降の過去8年における3連単の配当を振り返ってみると、10万円に届かなかったのは2021年(7万670円)、2022年(4万2810円)の2回だけ。ちなみに、当該期間中の平均値は27万7745円、中央値は12万3205円です。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、1番人気馬が3着内率7割とそれなりに健闘している一方で、3着以内馬30頭のうち12頭を7番人気以下の馬が占めています。
伊吹 より詳しく見てみると、単勝13番人気以下の馬は2015年以降[0-0-0-28](3着内率0.0%)だったものの、単勝7番人気から単勝12番人気の馬は2015年以降[4-4-4-48](3着内率20.0%)でした。それなりの魅力を感じる馬であれば、単勝二桁人気クラスであっても積極的に狙っていきたいところ。その分、上位人気グループの馬はやや慎重に評価するべきでしょう。
M そんなレパードSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、サノノワンダーです。
伊吹 話の流れ的にもちょうど良いところを挙げてきましたね。おそらく、単勝二桁人気になるかならないかくらいのオッズでレースを迎えることになるはず。
M サノノワンダーは2走前の青竜Sで3着となった実績がある馬。古馬相手のレースだった前走の小金井特別でも2着に食い込んでいます。今回は人気の盲点になりそうですし、面白い存在と言えるのではないでしょうか。
伊吹 前回の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名していたアイビスSDのウイングレイテストは、単勝オッズ24.5倍(10番人気)の低評価を覆して3着に健闘。サノノワンダーにも同様の結果を期待して良いのかもしれません。好調なAiエスケープが有力視しているという事実を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。
M 最大のポイントはどのあたりですか?
伊吹 まずは直近のパフォーマンスを素直に評価したいところ。2021年以降の3着以内馬12頭中11頭は、前走の着順が4着以内でした。
M 前走好走馬が優勢、と。
伊吹 前走の着順が5着以下だったにもかかわらず3着以内となったのは、国外遠征からの帰国初戦だった2024年のサトノフェニックスのみ。格の高いレースから直行してきた馬を含め、大敗直後の馬は疑ってかかるべきでしょう。
M 先程も触れた通り、サノノワンダーは前走の小金井特別で2着に好走。この条件は問題なくクリアしています。
伊吹 あとは血統も重要なファクターのひとつ。同じく2021年以降の3着以内馬12頭中10頭は、父がエーピーインディ系・ミスタープロスペクター系以外の種牡馬でした。
M なるほど。こちらもしっかりチェックしておきたいところですね。
伊吹 今年はエーピーインディ系種牡馬やミスタープロスペクター系種牡馬の産駒が例年より少なめ。しかし、それでもやはりこの傾向を無視するわけにはいきません。
M サノノワンダーの父はヘニーヒューズで、エーピーインディ系やミスタープロスペクター系に属していない種牡馬。こちらも強調材料のひとつと言って良いでしょう。
伊吹 さらに、同じく2021年以降の3着以内馬12頭中11頭は、JRA、かつ1800mから2000m、かつ10頭立て以上、かつ1勝クラス以上のレースを勝ったことがある馬でした。
M 1700m以下のレースや2100m以上のレース、そして少頭数のレースを勝ち上がってきた馬は割り引きが必要ですね。
伊吹 おっしゃる通り。特に距離適性は厳しくジャッジした方が良いと思います。
M サノノワンダーがこれまでにマークした2勝は中山ダ1200mのレースと東京ダ1600mのレースで、1600m超のレースを使うのは今回が初めて。残念ながらこの傾向からは強調できません。
伊吹 私自身、今回は他の馬を中心視するつもりでした。少なくとも、コース替わりがマイナスに働く可能性はそれなりに高いと見るべきでしょう。もっとも、思った以上に妙味あるオッズがつきそうな雰囲気ですし、他ならぬAiエスケープが狙い目と見ているわけですから、無理に嫌う必要はないはず。私も、手を広げる余裕があればしっかり押さえておくつもりです。
このまま続きを読む
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
伊吹雅也「究極のAI予想!」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
特別登録
レパードS
予想オッズ
レパードSの人気をチェック!
特集
レパードSを完全攻略!
コラム
平均馬連配当5100円と荒れ模様 ラウンドテーブルの血がフィット
「デビュー前から頭には…」 初ダートでレパードSに挑むヴィンセンシオ、師の“狙い”とは
競輪
競輪を気軽に楽しもう!全レース出走表・競輪予想、ニュース、コラム、選手データベースなど。