昨年の全米最優秀3歳牡馬シエラレオーネが優勝 G1ホイットニーSを回顧

2025年08月06日(水) 12:00

BCクラシックに向け、次戦ジョッキークラブGCがカギに

 路線の最高峰となるG1・BCクラシック(d10F、11月1日、デルマー)の開催まで3か月を切り、米国ダート中距離の動きが活発になっている。

 先週のこのコラムで展望をお届けしたように、8月2日にニューヨーク州のサラトガ競馬場で行われた開催のメイン競走に組まれていたのが、古馬によるG1・ホイットニーS(d9F)だった。

 9頭立てとなった中、オッズ2.2倍の1番人気に推されたのが、T.プレッチャー厩舎のフィアースネス(牡4、父シティオブライト)だった。23年に全米最優秀2歳牡馬に選出された同馬。3歳時は6戦し、G1・トラヴァーズS(d10F)など2つのG1を含む3勝。1番人気に推された秋のG1・BCクラシック(d10F)は2着だった。

 今季初戦となったG2・アリシーバS(d8.5F)を快勝後、前走6月7日にサラトガ競馬場で行われたG1・メトロポリタンS(d8F)は、レイジングトレントの2着だった。

 続くオッズ2.95倍の2番人気が、C.ブラウン厩舎のシエラレオーネ(牡4、父ガンランナー)だった。3歳だった昨年は7戦し、G1・BCクラシックなど2つのG1を含む3勝をあげ、全米最優秀3歳牡馬に選出された。今季の同馬はここまで2戦。初戦のG2・ニューオリンズクラシック(d9F)が3着、前走G1・スティーブンフォスターS(d9F)が2着と、勝利に手が届いていなかった。

 G1・ホイットニーSは半マイル=47秒07という、平均よりはやや速い流れになった中、フィアースネスは3番手、シエラレオーネは最後方の9番手を追走した。

 3コーナー過ぎから鞍上が仕掛けたフィアースネスが、4コーナー途中で先頭へ。残り1Fでこれを交わしたのが、昨秋のG1・ジョッキークラブGC(d10F)勝ち馬で、今季初戦の前走アケダクト競馬場の条件戦(d8F)を勝っての参戦だったハイランドフォールズ(牡5、父カーリン、14.8倍の4番人気)。これを残り100mでとらえたのが、直線に向くと大外を追い込んだシエラレオーネで、同馬がそこから1馬身抜け出して優勝。2着がハイランドフォールズで、ゴール前で失速したフィアースネスは、5着に敗れた。

 シエラレオーネの次走は、8月31日にサラトガ競馬場で行われるG1・ジョッキークラブGC(d10F)になる予定だ。

 そのG1・ジョッキークラブGCでシエラレオーネと顔を合わせるのが、フィアースネスと同じT.プレッチャー氏が管理するマインドフレーム(牡4、父コンスティチューション)だ。

 デビューしたのは3歳の3月30日で、したがってG1・ケンタッキーダービー(d10F)には間に合わなかった同馬。しかし、ガルフスリームパーク競馬場のメイドン(d7F)とチャーチルダウンズ競馬場の条件戦(d8.5F)をいずれも楽勝すると、三冠最終戦のG1・ベルモントS(d10F)に参戦。勝ち馬ドーノックから1/2馬身差の2着に好走した。続くG1・ハスケルS(d9F)でも2着になったが、その後、骨挫傷を発症して戦線を離脱した。

 復帰したのは今年3月で、7か月半ぶりの出走となったG2・ガルフストリームパークマイル(d8F)を制し重賞初制覇。さらに次走、G1・チャーチルダウンズS(d7F)を制し、G1・初制覇を果たしていた。その後、マインドフレームが向かったのが、6月28日にチャーチルダウンズ競馬場で行われたG1・スティーブンフォスターS(d9F)で、ここでもシエラレオーネを2着に退けて優勝。戦線の最前線に躍り出ることになった。

 シエラレオーネとマインドフレームのリマッチとなるG1・ジョッキークラブGCは、今年のG1・BCクラシックを占う上でも、大きなポイントとなりそうだ。

 米国ダート中距離路線の古馬勢でもう1頭、ご紹介しておきたいのが、B.バファート厩舎のナイソス(牡4、父ナイキスト)である。2歳10月、サンタアニタ競馬場のメイドン(d6F)で2着以下を10.1/2馬身ちぎるド派手なデビューを果たすと、続いて出走したG3・ボブホープS(d7F)も8.3/4馬身差で快勝。3歳初戦となったG3・ロバートB.ルイスS(d8F)も7.1/2馬身で制して3連勝を飾り、22年生まれ世代の牡馬では、ピカイチの能力の持ち主と話題になったのがナイソスだ。

 当時、バファート厩舎はチャーチルダウンズ競馬場から出走停止処分を受けており、したがってナイソスはG1・ケンタッキーダービーに出走出来ず、陣営は二冠目のG1・プリークネスSを目標とすることを表明した。しかし3月半ば、バファート師から「軽い故障を発症した」との発表があり、ナイソスは戦線離脱。そのまま、夏になっても秋になっても復帰は出来ず、遂に年を越すことになった。

 ナイソスがようやく戦線に戻ったのが今年の5月3日で、1年3か月振りの出走となったG1・チャーチルダウンズS(d7F)で、マインドフレームのクビ差2着(同着)に敗れて連勝がストップ。しかし、復帰2戦目となったG3・トリプルベンドS(d7F)を5.1/2馬身差で制すると、7月26日にデルマー競馬場で行われたG2・サンディエゴH(d8.5F)も2.3/4馬身差で勝利。ダート中距離路線の前線に戻ってくることになった。ナイソスの次走は、8月30日にデルマー競馬場で行われるG1・パシフィッククラシック(d10F)になる予定だ。

 来週のこのコラムでは、米国ダート中距離路線における、3歳世代の有力馬の近況をお伝えしたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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