トップナイフが好相性の札幌で初重賞V デクラレーションオブウォー産駒は今年重賞3勝目

2025年08月18日(月) 18:00

血統で振り返る札幌記念

【Pick Up】トップナイフ:1着

 札幌芝2000mは、2歳夏に4馬身差で初勝利を挙げた舞台で、一昨年の札幌記念では2着と健闘しています。もともと相性のいいコースでしたが、今回は一昨年と同じ稍重のコンディションだったことも味方したのか、10番人気の低評価を覆して初の重賞タイトルを獲得しました。

 父デクラレーションオブウォーは現役時代、クイーンアンS(英G1・芝8ハロン)とインターナショナルS(英G1・芝10ハロン88ヤード)を勝った芝の一流馬。種牡馬としても成功し、日本にやってくる前に仏2000ギニー馬オルメド(Olmedo)をはじめ7頭のG1馬を
出しました。JRAではこれが5頭目の重賞勝ち馬となり、今年だけでも3頭が重賞を勝っています。

 2代父ウォーフロント(War Front)はズバッと切れる脚はないものの、スピードの持続力が持ち味。他にアメリカンペイトリオット、ザファクターなどの後継種牡馬がわが国で供用されています。ラストの決め手比べになると厳しくなる血統なので、雨の影響で馬場が重くなり、レースの上がり3ハロンが36秒9という競馬になったのは幸いでした。向正面でじわっと位置取りを上げたのは、府中牝馬Sを勝った際のセキトバイーストのレースぶりとよく似ています。

 トップナイフはステラウインド(七夕賞2着、青葉賞3着/父ゼンノロブロイ)の半弟で、3代母はアメリカからの輸入牝馬ワンスウエド。ということは、テイエムオペラオー(年度代表馬、JRA顕彰馬)と同じファミリーです。

 今年、芝1800m以上のJRA重賞を勝った馬のなかで、サンデーサイレンスを持たないのは、トップナイフとセキトバイーストの2頭のみ。いずれもデクラレーションオブウォー産駒です。同産駒は、母方にサンデーサイレンスを持たない馬のほうが持つ馬よりも成績(連対率、1走あたりの賞金額)が上、という珍しいタイプです。

血統で振り返る中京記念

【Pick Up】マピュース:1着

 父マインドユアビスケッツは現役時代、ドバイゴールデンシャヒーン(首G1・ダ1200m)を連覇するなど6つの重賞を制覇したダート短距離馬。種牡馬としてはデルマソトガケ(全日本2歳優駿、UAEダービー、BCクラシック2着)が代表産駒で、芝の重賞勝ち馬はホウオウビスケッツ(函館記念)に次いで2頭目となります。

 母フィルムフランセはダート4勝馬でシンボリクリスエスの娘。レッドルゼル(JBCスプリントなど重賞3勝)の半姉にあたる良血です。

 父の産駒は、勝ち星の3/4近くをダートで挙げており、母方の血もパワー寄り。マピュースはダート向きに出てもおかしくなかったのですが、芝の速い時計に対応しています。今後、ダートを使う可能性は小さいと思いますが、走らせてみたら強い、という可能性はあるでしょう。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【キングヘイロー】

 現役時代に高松宮記念、中山記念、東京新聞杯、東京スポーツ杯3歳Sを勝ちました。皐月賞とマイルCSでいずれも2着、有馬記念でも4着となっているので、短距離専用馬だったわけではありません。

 父ダンシングブレーヴ(インターナショナルクラシフィケーションで史上最高値の141ポンド)、母グッバイヘイロー(米GIを7勝)という、80年代に大活躍したヨーロッパとアメリカの名馬同士を組み合わせた超良血馬。それだけでなく、「ドローン≒ヘイロー≒サーアイヴァー3×2.3」という異様な凝縮を抱えているため、きわめて影響力の強い名血となりました。ドローン(Drone)、ヘイロー(Halo)、サーアイヴァー(Sir Ivor)は、いずれも瞬発力やスピードを特長とする血で、血統構成がよく似た“相似な血”です。たとえば、ディープインパクトはヘイロー≒サーアイヴァー2×4という相似な血のクロスを持っています。

 父としてカワカミプリンセス(オークス、秋華賞)、ローレルゲレイロ(高松宮記念、スプリンターズS)、メーデイア(JBCレディスクラシック)を出しましたが、総合種牡馬ランキングでは14位が最高順位(2006年)。しかし、母の父としてはイクイノックス、ピクシーナイト、キングズソード、ディープボンドなど次々と大物を送り出し、現代の重要血脈のひとつとなっています。この血を持っていること自体が大きなアドバンテージといってもいいでしょう。キングヘイローを抱えたイクイノックスやピクシーナイトが種牡馬となっているので、いずれキングヘイローのクロスを持つ活躍馬も現れるはずです。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「アロヒアリイは凱旋門賞でも好勝負になりますか?」

 8月16日、日本調教馬アロヒアリイがギヨームドルナノ賞(仏GII・芝2000m)を逃げ切りました。順調であれば10月5日の凱旋門賞に駒を進めることになります。

 次走で戦う相手は今回とはレベルが違いますし、2400mは初距離で、雨が降りやすい時季だけに力の要る馬場コンディションとなることも十分考えられます。ただ、血統的には多少の道悪であればこなせるタイプで、パリロンシャン競馬場も合うのではないかと感じます。

 母の父オルフェーヴルは現役時代に三冠を制したほか、凱旋門賞で2着2回(2012、13年)という成績を残し、同コースで行われたフォワ賞(GII)を連覇しました。「母の父」としての成績はきわめて優秀。2010年以降、母の父として500走以上した155頭の国内繋養種牡馬のなかで、オルフェーヴルの連対率19.8%はナンバーワンです。

 父ドゥラメンテは札幌の洋芝を得意としており、アロヒアリイ自身は凱旋門賞馬トニービンを4×4で持ちます。日本の馬場よりもむしろ海外の洋芝のほうが向くのではないか、という配合構成です。成長力のある血統でもありますから、3歳夏を越して力をつけている可能性はあるでしょう。どこまでやれるか楽しみです。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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