2025年08月27日(水) 12:00
10月5日にパリロンシャンで行われるG1・凱旋門賞(芝2400m)へ向けた戦線は今年、牝馬勢が上位人気を占める形となっているが、先週末、そこにまた1頭、新たな牝馬の台頭があった。
24日(日曜日)にフランスのドーヴィル競馬場で行われたのが、牝馬によるG1・ジャンロマネ賞(芝2000m)だった。
昨年までは「4歳以上」だった競走条件が、今年から「3歳以上」に改訂され、3歳世代にも門戸を開放。これを受け、G1・仏オークス(芝2100m)3着馬で、前走G3・プシケ賞(芝2000m)を制し待望の重賞初制覇を果たしたカンクーラ(牝3・父パーシアンキング)、G1・仏オークス2着馬で、古馬との初顔合わせとなった前走G1・ナッソーS(芝9F197y)は4着だったベッドタイムストーリー(牝3・父フランケル)が参戦。前者がオッズ5.9倍の2番人気、後者がオッズ6.0倍の3番人気に支持された。
8頭立てとなった中、オッズ2.4倍の1番人気に推されたのが、ゴドルフィンのシンデレラズドリーム(牝4・父シャマーダル)だった。C.アップルビー厩舎から2歳5月にデビューすると、3歳3月までメイダン競馬場のLRジュメイラ1000ギニー(芝1600m)まで無敗の4連勝。続くG1・英1000ギニー(芝8F)で7着に敗れると、シーズン後半は米国の主要競走に照準を絞り、G1・ベルモントオークス(芝9.5F)を含む2重賞を制覇。G1・BCフィリー&メアターフ(芝11F)でも2着に入る活躍を見せた。
4歳シーズン初戦となったメイダン競馬場のG2・バランシーン(芝1800m)で2着になった後は、ヨーロッパで3戦。前走ニューマーケット競馬場ののG1・ファルマスS(芝8F)を制し、待望の欧州G1初制覇を果たしていた。
レースは、1番枠から好スタートを切ったカンクーラがハナに立って馬群を先導。ベッドタイムストーリーは3番手内ラチ沿い、シンデレラズドリームは6番手を追走した。直線に向くと、道中は4番手にいたクイジサーナ(牝5・父ルアーヴル、7.2倍の4番人気)が末脚を伸ばし、残り1Fの手前でカンクーラを交わして先頭へ。前走G1・プリティポリーS(芝10F)が3着だったシュルヴィー(牝4・父チャーチル、11倍の5番人気)が、前半最後方追走から直線で大外を伸びたが、これに1.3/4馬身差をつけてクイジサーナが優勝。勝負どころでの伸びを欠いたシンデレラズドリーム、ベッドタイムストーリーは、4着と5着に敗退。ゴール前で失速したカンクーラは7着に敗れた。
勝ったクイジサーナは、ウィンター氏のペレル牧場による自家生産馬。半姉にLRプティエトワール賞(AW1900m)2着など2つの準重賞で入着を果たしたキトラ、叔母にG1・カドラン賞(芝4000m)勝ち馬ミルエミルがいるという血統背景を持つ。F・H.グラファール厩舎に入厩したが、体質が弱く、クイジサーナのデビューは3歳6月までずれ込んだ。
この年は2戦し、メイドンと条件戦を連勝。4歳初戦のLRザルカヴァ賞(芝2100m)で3着になると、次走はG3アレフランス賞(芝2000m)に挑み5着に敗退。しかし、続くLRポーニーズ賞(芝2400m)を5馬身差で制し、特別初制覇を果たした。その後は、昨年のこのレースを目標に調整されたが、最終追い切りで故障を発症。休養を余儀なくされることになった。
昨年末、クイジサーナの能力を高く評価していたグラファール師は、馬主のウィンター氏に対し、5歳となる今季も現役に留まるよう懇願。ウィンター氏もこれを受け入れ、現役続行が決まった。グラファール師の見立てが正しかったことが実証されたのが今季で、緒戦となったコンピエーニュ競馬場の条件戦(芝2000m)を白星で通過すると、前走シャンティイ競馬場のLRペピニエール賞(芝2100m)も2馬身差で楽勝。ここも勝って、G1で重賞初制覇を果たすことになった。
フランス競馬の統括団体であるフランスギャロは、今年から、ジャンロマネ賞を含めた8競走を、「アーク・レーシズ・シリーズ」に指定。勝ち馬は、凱旋門賞への出走資格を得ることになった。クイジサーナは、凱旋門賞デーに行われる牝馬限定G1・オペラ賞(芝2000m)への登録を行っていた一方、凱旋門賞は未登録だったが、ジャンロマネ賞の勝利によって、高額な追加登録料を払うことなく、凱旋門賞への出走が可能になった。グラファール師はレース後、馬主、騎手(C.スミヨン)と相談する必要があるとしながらも、距離(2400m)も重馬場も問題なくこなすことから、個人的には凱旋門賞に向かいたい思っているとコメントしている。
これを受け、大手ブックメーカーのコーラルやラドブロークスは、クイジサーナに21倍のオッズを提示し、凱旋門賞前売り上位人気の一角に浮上させている。
現段階で、各社が6.0〜7.5倍のオッズを提示し、前売り1番人気に支持しているのが、昨秋のG1・英チャンピオンズフィリーズ&メアズS(芝11F133y)勝ち馬で、前走G1・キングジョージVI世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)が2着だったカルパナ(牝4・父スタディオブマン)だ。同馬は、同じくジャドモントが所有したエネイブルが、18年に凱旋門賞制覇を果たした際にプレップレースとした、ケンプトン競馬場のG3・セプテンバーS(AW11F219y、9月6日)が次走になる公算大であることを、陣営が既に発表している。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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