英・愛の各種リーディング争いが佳境迎える リーディングサイアー 首位はナイトオブサンダー

2025年09月03日(水) 12:00

シーズン終盤に高額賞金競走が目白押し

 9月の声をきき、英国や愛国における今シーズンの芝平地開催も、残すところ2か月ほどとなった。人馬いずれも、各種のリーディング争いが佳境に入っている中、英国と愛国の数字を合算したリーディングサイアー争いで首位をひた走っているのが、ナイトオブサンダーだ。

 8月31日の競馬を終えた段階で、同馬の産駒の収得賞金は487万7634ポンド。2位につけているウートンバセットが380万1031ポンドで、100万ポンド以上の差をつけている(Racing Post 集計より)。英国も愛国もこれからが、シーズン終盤の高額賞金競走が目白押しの季節を迎えるため、確定的なことはまだ言えないが、リーディング争いでナイトオブサンダーが圧倒的優位に立っていることは間違いない。初年度産駒が3歳となった20年に28位に入り、翌21年が16位で初のトップ20入り。22年が13位、23年が12位と、着実にランクを上げた後、昨年8位で初のトップ10入りを果たした同馬にとって、リーディングを獲れば自身初の快挙となる。

 11年3月に、LRフレームオブタラS(芝8F)2着馬フォレストストームの初子として愛国で生まれたのがナイトオブサンダーだ。4代母が、86年の欧州2歳牝馬チャンピオンにして87年のG1・愛1000ギニー(芝8F)を制したフォレストフラワーというファミリーを背景に持つ。

 ナイトオブサンダーの父は、一世代のみを残して早世したドバイミレミアムの後継としてその血を継承し、後世に橋渡しする重責を担っているドバウィだ。ナイトオブサンダーは、その5世代目の産駒の1頭となる。初年度産駒からG1・2000ギニー(芝8F)やG1・ジャックルマロワ賞(芝1600m)を制したマクフィら送り出したドバウィだが、フォレストストームの初子がタタソールズのオクトーバーセールに上場された12年秋の段階では、まだ本格的ブレークの一歩手前で、フォレストストームの初子はラバー・ブラッドストックに3万2千ギニー(当時のレートで約433万円)という廉価で購買されている。

 ナイトオブサンダーという競走名となった牡馬は、サイード・マナナ氏の所有馬としてリチャード・ハノン厩舎から2歳10月にデビュー。ジャドモント所有馬でジョン・ゴスデン調教師が管理したキングマンと同期で、3歳初戦となったG3・グリーナムS(芝7F)でキングマンの2着になると、続くG1・英2000ギニー(芝8F)ではキングマンを2着に退けて優勝。続くロイヤルアスコットのG1・セントジェームズパレスS(芝7F213y)ではキングマンの2着と、この年の3歳マイル路線の最前線で活躍した。

 3歳シーズン後半、古馬との戦いでもG1・クイーンエリザベス2世S(芝8F)2着、G1・ムーランドロンシャン賞(芝1600m)3着などの成績を収めた後、3歳シーズンが終わると同馬をゴドルフィンが買収。リチャード・ハノン厩舎に留まって迎えた4歳シーズン初戦のG1・ロッキンジS(芝8F)を制し、2度目のG1制覇を達成した。

 しかし、続くG1・クイーンアンS(芝8F)は5着、G1・サセックスS(芝8F)は6着と崩れ、シーズン半ばの8月に現役引退が決定。愛国のキルダンガンスタッドで種牡馬入りしたナイトオブサンダーの、供用初年度となった16年の種付け料は3万ユーロだった。

 17年に生まれた初年度産駒から、G1・アベイドロンシャン賞(芝1000m)など短距離G1を4勝したハイフィールドプリンセスや、G1・プリティポリーS(芝10F)勝ち馬サンダリングナイツを始め、北半球生まれだけで11頭もの重賞勝ち馬が誕生。シャトルされた豪州でも、G1・クイーンズランドダービー(芝2400m)勝ち馬クケラチャを含む4頭の重賞勝ち馬が登場。20年には2万5千ユーロだった種付け料が、21年には7万5千ユーロと、3倍に跳ね上がった。

 18年生まれは、G2・キングジョージS(芝5F)など短距離重賞を3勝したスエイザなど、重賞勝ち馬の数は3頭に限られ、19年生まれは現在のところ、重賞勝ち馬ゼロと沈黙している。

 しかし、20年生まれは米国でG1・ジェニーワイリーS(芝8.5F)を制したチョイシャなど、ここまで4頭の重賞勝ち馬が出て復調。

 ナイトオブサンダー躍進の礎を築いたのが、5世代目の産駒となる21年生まれで、G1・愛チャンピオンS(芝10F)勝ち馬エコノミクスという世界ランカーが登場。同じく21年生まれのオンブスマンが、4歳となった今季、G1・プリンスオブウェールズS(芝9F212y)とG1・インターナショナルS(芝10F56y)という2つのG1を制し、父がサイヤーランキングで急浮上する原動力となった。同じ21年生まれのエストレンジも、4歳となった今季、G2・ランカシャーオークス(芝11F175y)など2重賞を制した他、G1・ヨークシャーオークス(芝11F188y)で2着に健闘。

 ちなみに、21年生まれのナイトオブサンダー産駒からは、米国でG1・ジャストアゲームS(芝8F)を制したダイナミックプライシングや、日本でデビューしLR淀短距離Sなど5勝をあげているソンシらも出現している。さらに、今季のナイトオブサンダーにとって、大きな戦力となったのが22年生まれのデザートフラワーで、春先早々にG1・英1000ギニーを制した同馬は、父にとって初めてとなる3歳クラシック勝ち馬となった。

 閉幕まで2カ月となった英国・愛国の芝平地シーズンで、リーディングサイアー争いがどう推移していくか、興味深く見守りたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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