【追悼企画・前編】池添兼雄元調教師、蛯名正義調教師らが明かす「私が“メイショウ”松本好雄オーナーから頂いたモノ」

2025年09月08日(月) 18:01

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▲「松本好雄オーナーから頂いたモノ」を関係者が明かす(c)netkeiba

「メイショウ」の冠名で競馬ファンにも長く親しまれた松本好雄オーナーが8月29日、逝去されました。メイショウサムソン、メイショウドトウ、メイショウボーラー、メイショウマンボ、そしてメイショウタバルなど数々のGI馬を所有されたことに加え、優しく寛大な心をうかがわせるエピソードも多くありました。「人がいて、馬がいて、そしてまた人がいる」とは松本オーナーが大切にされた座右の銘。

松本オーナーを偲び、netkeibaでは縁のあった方々に「松本オーナーから頂いた“モノ”」というテーマで思い出を伺いました。優しさ、教え、言葉、勝利…など、受け取った数々の“モノ”と同時に、みなさんが口にしたのはオーナーへ尽きることのない感謝の思いでした。

松本オーナー、これまで所有馬とともに感動のレースを見せてくださり、ありがとうございました。

※掲載は五十音順です

(取材・構成=馬切もえ、小田穂乃実、netkeiba編集部)

飯田祐史調教師「メイショウマンボを託してくださったお気持ち」

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▲飯田祐史調教師(写真左から2人目、(c)netkeiba)

 別格の方なので、教えていただいたことや背中を見て思うことはたくさんありますが、そう簡単に真似できることではありません。1週間だけならできるかもしれませんが、競馬の世界は思うようにいかないことが多い中、我慢したり優しい言葉をかけたり、それを何十年もずっとされてきたことがすごいと思います。

 色んな思い出がある中で、たとえばメイショウマンボは遡れば祖母にメイショウアヤメがいます。父(明弘調教師)の厩舎にアヤメがいて、その子供も父の厩舎に、開業してからは僕の厩舎に預けていただきました。活躍馬を出せなくてもずっと預けていただいて、子供を残すことにされて、その先に出てきたのがマンボ。オーナーが繁殖を諦めていたらマンボは生まれてこなかったですし、「成績が出ないから飯田のところはダメだ」と他の厩舎に行っていたら、うちではなかったと思います。

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▲メイショウマンボ(c)netkeiba)

 こういうことが私だけじゃなくて、他の調教師、騎手、牧場さんとの付き合いの中でたくさんありました。私もジョッキーとしてデビューしてから今に至るまで、いい時も悪い時もずっと支えていただいて、それが一番ありがたいことです。

 だから、メイショウダッサイでJ・GIを勝てたことは一つの目標でもあったので嬉しかったです。すごく印象深いのは、中山グランドジャンプでJ・GI2勝目を挙げた絶頂期に繋靭帯炎になった時のことです。一度はトレセンに入厩させたけどやっぱりダメで、オーナーに諦めてもらわないといけない、という電話をかけました。

 怒られるのを覚悟でいると、「でもな、GIを2つも勝ってるんやで。偉いんやで、この馬は」と言っていただきました。そして、いよいよ引退するという日、わざわざトレセンまで足を運んでくださって、担当厩務員の肩を叩いて「ご苦労さんやったな」と声をかけてくださいました。厩務員も感動していました。最後にダッサイをひと目見に来たということもあると思いますけど、どちらかというと担当者に声をかけるつもりでいらしたんだろうなと思いました。

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▲メイショウダッサイで中山大障害などJ・GIを2勝(撮影:下野雄規)

 労いの言葉をかけたり、人を大切にすることが集約されて、所有馬の活躍だったのではないかと思います。お亡くなりになられたことはすごく残念で、突然だったのでショックと喪失感が大きいです。天国から見守っていただいているとして、「祐史、あんなに頼りなかったのに、ちょっとはしっかりしたよな」と思ってもらえるように頑張らないと、と思います。

池添兼雄元調教師「人を集め、人を支える──唯一無二のお人柄」

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▲池添兼雄調教師(c)netkeiba

 現役時代に大変お世話になりました。調教師定年後も電話を差し上げたら、気軽に対応してくださり、8月23日に2000勝お祝いの電話を差し上げた時も「みなさんのおかげなんですよ」と・・・

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