エリキングが大外一気で神戸新聞杯V 今年もキズナがリーディングサイアートップを走る

2025年09月22日(月) 18:00

血統で振り返る神戸新聞杯

【Pick Up】エリキング:1着

 父キズナは昨年の総合リーディングサイアー。今年もロードカナロアに2億円弱の差をつけてトップを走っています。昨年の皐月賞馬ジャスティンミラノが早期引退し、戦力的には大きな痛手だったのですが、今年はエリキング、ナチュラルライズ、サトノシャイニング、ショウナンザナドゥ、マジックサンズ、レーゼドラマ、グローリーリンクといった3歳世代がよく頑張っています。

 エリキングの母ヤングスターは、芝2200mの豪G1クイーンズランドオークスの勝ち馬。母の父ハイシャパラルは英・愛ダービー、愛チャンピオンS、BCターフ2連覇など芝G1を6勝した名馬。

 母ヤングスターは近い世代にデインヒル、ダルシャーン、ノーザンダンサーを併せ持ちますが、これはジャスティンミラノの母マーゴットディドと似ています。また、ライトバック(桜花賞3着、オークス3着/父キズナ)の母インザスポットライトも、デインヒル、ダルシャーン、サドラーズウェルズが共通するのでよく似ています。

 3代母ユーザーフレンドリー(英・愛オークス、英セントレジャーなどG1を5勝は欧州年度代表馬に輝いた女傑。エリキングはスタミナと底力に関しては盤石といえる血統なので、距離が延びても問題ないでしょう。

血統で振り返るオールカマー

【Pick Up】レガレイラ:1着

 母ロカはディープインパクトの姪で、桜花賞馬ステレンボッシュ、菊花賞馬アーバンシックの伯母にあたる良血です。現役時代に新馬戦を圧勝し、1番人気で臨んだ阪神JFは8着。その後、クイーンC3着、チューリップ賞4着などの成績を残しました。繁殖成績はきわめて優秀。今回1、2着したレガレイラとドゥラドーレス(父ドゥラメンテ)を産んでいます。

 スワーヴリチャードは母方にダンジグを持つ配合パターンが成功しており、レガレイラ、アーバンシック、スウィープフィート、コラソンビートという4頭の重賞勝ち馬のほか、レディネス、パワーホール、ショーマンフリートといった活躍馬が出ています。レガレイラとアーバンシックは父が同じで母同士が全姉妹なので100%同血です。

 レガレイラは中山3勝目。ただ、スワーヴリチャード産駒は基本的に直線の長いコースや外回りコースを得意としているので、レガレイラの次走候補に挙げられている天皇賞(秋)、エリザベス女王杯、ジャパンCは、いずれも問題なく走れる舞台でしょう。

 スワーヴリチャードの初年度の種付け料は200万円で、これが4年間続きました。初年度産駒が大ブレイクし、5年目から1500万円に値上げ。繁殖牝馬の質が劇的に上昇するのは今春誕生した5世代目の産駒からです。2027年にデビューする馬たちが大いに楽しみです。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【サートリストラム】

 アイルランドで誕生し、競走馬としては大きな実績を残せませんでしたが、ニュージーランドへ渡って種牡馬入りすると大成功。同国で1回、オーストラリアで6回リーディングサイアーとなりました。生涯に送り出したステークスウィナーは140頭以上に及びます。

 その父サーアイヴァーは、手綱をとった名騎手レスター・ピゴットが、英三冠馬ニジンスキーを差しおいて「私が乗った最高の馬」と評したほどハイレベルな能力を備えていました。しかし、サイアーラインを形成する能力はもうひとつで、北半球ではこれといった後継種牡馬を残せませんでした。しかし、同じ1971年に誕生したサートリストラムとインペリアルプリンスが、それぞれニュージーランドとオーストラリアに繋養されて成功を収め、とくに前者はザビール、グローヴナー、マローディングといった後継種牡馬も成功し、一大勢力を築きました。

 基本的にはスタミナタイプですが、あらゆるカテゴリーで活躍馬を量産したので、万能型といってもいいでしょう。

 最も優れた後継種牡馬であるザビールは、スタミナを武器にニュージーランドとオーストラリアの双方でリーディングサイアーとなりました。その直系の子孫であるサヴァビールはニュージーランドで10回、ロンロはオーストラリアで1回リーディングサイアーとなっています。

 サートリストラムの血を持つわが国の重賞ウィナーは、ユーバーレーベン、ビービーガルダン、プリモシーン、ベルカント、コスモキュランダ、マイネルエンペラー、マイネルファンロンなど14頭います。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「デビュー時に人気薄だった名馬は?」

 大レースを勝つような馬は、デビューする前から期待され、新馬戦で人気に推されるケースがほとんどです。しかし、なかには人気薄で出走した馬もいます。

 たとえば、年度代表馬のタイトルを取った馬のなかでデビュー戦の人気が最も低かったのはトウメイ(1966年生)。札幌の新馬戦に出走した際、8頭立ての6番人気でした。同馬は翌春、桜花賞2着、オークス3着と好走し、5歳時に本格化。1971年の天皇賞(秋)、有馬記念を連勝し、牝馬ながら年度代表馬に選出されました。繁殖牝馬としても、天皇賞(秋)を勝ったテンメイや道営競馬で活躍したホクメイを産んでいます。

 顕彰馬では戦前に活躍したセントライト(1938年生)が挙げられます。わが国初の三冠馬です。3歳春のデビュー戦は12頭中7番人気でした。このレースをセントライトは5馬身差圧勝します。兄弟にトサミドリ、クリヒカリ、タイホウ(大鵬)がいる超良血で、セリでは当時の日本ダービー1着賞金の3倍以上という高額で落札された高馬でしたが、デビュー前、ハイレベルな能力が外部に広まらないよう、厩舎が情報を外に出さず、それが原因で人気にならなかったようです。

 ちなみに、セントライトの血を引く馬はいまも存在しています。最近の重賞勝ち馬では、2024年のチューリップ賞を勝ったスウィープフィートがこれに当たります。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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