2025年10月01日(水) 12:00
秋の気配を感じる涼風とともにGIレースがいよいよスタートします。菊花賞前哨戦、GII・神戸新聞杯。勝利を挙げたエリキング号おめでとうございます! スローペースのなかジックリ脚をためて見事な追い上げです。川田騎手の絶妙な手腕に感激です。関係者の皆様、陣営の皆様おめでとうございます。
▲神戸新聞杯はエリキングと川田将雅騎手のコンビが勝利(c)netkeiba
川田騎手にとってはローズSに続く重賞制覇。そしてこの勝利でJRA重賞150勝という節目の記録となりました。書いたり、言うのは簡単ですが、馬に乗ってひとつひとつ積み上げていくのは難しいことだと思います。中内田調教師とのタッグで、更なる活躍を楽しみにしています。馬肥ゆる秋、GI競走が益々楽しみになってきました。ファンの皆様もぜひ生ライブで楽しみましょう。
そして僕の楽しみがもう一つ。J・GIII阪神ジャンプSを制覇したネビーイーム号。小牧加矢太騎手と佐々木晶三調教師、陣営の皆様おめでとうございます! 小牧騎手は乗馬をされていた頃、つま恋乗馬倶楽部での大会はいつも表彰台を独占していました。実はその時、僕も障がい者馬場馬術大会に参加していたんですよ。当時、すごいなーと見とれていました。
▲阪神JSはネビーイームと小牧加矢太騎手のコンビが勝利(c)netkeiba
さて、今月は強化選手に選出されていることもあり忙しくなってきました。その一環として、9月2日から10日までドイツへ強化練習に行ってきました。僕の愛馬のいる厩舎は、ドイツデュッセルドルフ空港から車で2時間くらいのイッベンビューレンという町にあります。場長さんは、フランシスコさんという方で、オリンピックにも出場されていてとってもきれいな乗り方をされる方です。
滞在中はレッスン強化。馬はとっても素直で、手綱が要らないくらいでした。なので、「もっと拳を前にして馬から離れたところに置きなさい」と指導され、日本の馬では全くできない乗り方を教えていただきました。日本でもこういう馬づくりができるといいなと思いました。
レッスンが終わると首元に「ありがとう」の愛撫をし、下馬してから感謝を込めて人参をあげました。夢中で食べてくれる姿を見るとホットな気分になりますね。やっぱりニンジンは大好きなんだな。そこは日本と一緒や(笑)。
▲愛馬もニンジンが大好き!
最後の日、フランシスコさんが乗り方を見せてくれました。背筋を馬と垂直になるくらいに伸ばし、肩幅も馬の幅くらいに開きどっしりと安定して乗るが、軽やかな感じがする。馬に重さの負担をかけない、自分の体を保つことで馬にどさっと乗っかからない乗り方をする。まるで馬の上で浮いてるようでした。「わぁ…凄い乗り方だ。体重の負担がかからないんだ」見ていてよくわかりました。
その姿を見て「んー」と頷くばかりでした。さぁ! がんばるどー! チャレンジです。
滞在中、日曜日は全休だったので大会を見に行きました。乗馬大会の出場条件が厳しくなり、8月も渡航を予定していましたがヨーロッパの選手のみの大会となり今回も出場することはできませんでした。大会の会場はお祭りのようで、観覧車などがあったりバンドの演奏、お店も沢山出店されていました。観客たちもファミリーで楽しんでいました。
▲家族連れで賑わう大会会場
大会に出場している選手の演技を見て、そのレベルの高さを痛感しました。どのようにして、あんなにきれいに人馬一体になった演技ができるんだろう? と疑問を投げかけると、「馬とともに生活をしている。今日だけ乗るのではなく、毎日馬がそばにいます。幼い時からずっと一緒だよ」と聞いて改めて生活習慣の違いを感じました。
▲出場選手の騎乗を見て「どのようにして、あんなにきれいに人馬一体になった演技ができるんだろう」
街を見ていても、5歳くらいの子供と一緒に馬が自宅の周りを散歩しているんですよ。子供の後ろを馬がついていく光景を見たとき、ふと我が家の愛犬と散歩しているときの様子を思い出しました。乗馬大国の経験は、素晴らしかったです。見ることの意義を感じました。僕もリズミカルに、馬に負担をかけずに乗りたいと思いました。乗るのではなく一緒に演技をする気持ちをもって挑んでいきます。
滋賀県で「わたSHIGA輝く国スポ」が開催されています。その後の10月25日から27日までは全国障がい者スポーツ大会が開催されます。是非観戦したいと思っています。しかし、とっても残念なことに、障がい者馬場馬術が競技に入っていないんです。なぜ? どうして? と色々な方に尋ねると全国どの県でも開催されていないからだそうです。とはいえここは馬の街栗東です。全国の国スポで障がい者馬場馬術大会が開催されることをこの機会に願うばかりです。人馬一体となって競う唯一のスポーツです。ずっとずっと待ちます。声を大にして叫びたいです。
さて9月23日は愛馬の日で、福永調教師とパリ五輪の総合馬術で銅メダルを獲得された“初老ジャパン”のメンバー戸本一真選手のトークショーが馬事公苑で開催されました。
福永師は「調教師になって毎日馬と顔を合わせるようになり、本当にかわいいと思えるようになった」といいます。愛情をもって接すれば、それに応えてくれるんだなと改めて思いました。戸本一真選手は、「2大会連続でコンビを組んだ相棒は東京五輪の時は、母国開催でそわそわしている僕を落ち着かせてくれました。逆にパリ五輪では少しテンションが高く、僕が大丈夫となだめ落ち着かせていました」と話していました。お互いに築き上げた信頼関係の深さを感じました。競馬と馬術とは同じ馬を扱う競技でも異なった視点や接し方が必要と感じますね。とっても素敵な対談でしたが参加できず残念でした。次福永厩舎へ行ったときに、その時の様子をもっと詳しく聞きたいと思います。
オカン 強化選手に選出され、以前にも増して経験や体験することが多くなりました。海外遠征時に語学ができなくても身体で表現して過ごす心の強さを感じます。壊れた脳ではなく身体でしっかり覚えていってほしいと願うばかりです。福永調教師や戸本選手のように愛馬とともに築き上げた信頼関係に自信をもって挑んでください。それだけでなく、高校卒業もしてくださいね。息子よ頑張れ! あなた自身のために挑む脳と戦う。ずっと待つわ。
つねかつこと常石勝義&オカン
(文中敬称略、次回の更新は11/1(土)を予定しています)
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常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。
プロフィール
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