【アイルランドT AI予想】一変を期待して良さそう!? Aiが推す伏兵の強調材料と不安要素

2025年10月06日(月) 18:00

レーベンスティールが優勝(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

中位人気の各馬をどう扱うかがポイントになりそう

AIマスターM(以下、M) 先週は毎日王冠が行われ、単勝オッズ7.7倍(5番人気)のレーベンスティールが優勝を果たしました。

伊吹 着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。五分のスタートを決めて流れに乗り、ホウオウビスケッツ(2着)とサトノシャイニング(3着)を先に行かせる形で好位のポジションを確保。ハナを切ったホウオウビスケッツが1000m通過58.6秒のペースでレースを引っ張る中、先行した2頭をマークする形で追走し、ゴール前の直線に入っています。その後、残り400m地点を過ぎたところでまずサトノシャイニングを捕らえにかかり、残り200m地点のあたりで完全に抜き去ると、そのまま先頭のホウオウビスケッツを急追。決勝線の手前でかわし切り、最後は逆に半馬身の差をつけて入線しました。先行勢が上位を占めた形ではあるものの、タイムや上位馬の実績を考えると、決して楽な展開ではなかったはず。レーベンスティール自身はもちろん、冷静沈着な手綱捌きでこの馬の持ち味を引き出した津村明秀騎手も素晴らしかったですね。

M レーベンスティールは自身4度目の重賞制覇。実績上位と言える存在だったものの、今年に入ってからはAJCC12着、しらさぎS7着と苦戦続きでしたから、評価に悩んだ方も多かったのではないかと思います。

伊吹 正直に申告しておくと、私も馬券を買う直前まで悩んでいて、結果的に裏目を引いてしまいました。戦績以外にもいくつか不安な点があったとはいえ、潜在能力の高さは十分過ぎるほどに証明済み。確率的なことを考えると、買い目から外すのは少々無理筋だったかもしれません。逆に、もともとこの馬を狙っていた方にとっては、かなり妙味のある配当だったのではないでしょうか。

M レーベンスティールは5歳ですが、まだキャリア14戦。今後も楽しみですね。

伊吹 母の父がトウカイテイオーという血統背景もあり、デビュー当初から注目を集めていた馬。GIIだけで既に3勝をマークしているわけですから、諸々の条件が噛み合えばもうひとつ上のビッグタイトルにも手は届くと思います。大舞台でこの馬に的確なシルシを打てるよう、今回のパフォーマンスやこれまでの戦績をいまのうちにしっかり復習しておきましょう。

M 今週の日曜東京メインレースは、下半期の大舞台を目指す古牝馬が激突する一戦、アイルランドT。今年が第1回目ではあるものの、2024年までの府中牝馬S(アイルランドT府中牝馬S)を前身としており、その昨年は単勝オッズ3.6倍(2番人気)のブレイディヴェーグが優勝を果たしました。ちなみに、2着は単勝オッズ37.2倍(10番人気)のシンティレーション、3着は単勝オッズ2.3倍(1番人気)のマスクトディーヴァで、3連単の配当は2万9330円にとどまっています。

伊吹 2015年から2024年の府中牝馬Sにおける3連単の配当を振り返ってみると、平均値は7万9325円、中央値は6万7210円。20万円を超えた年こそないものの、伏兵が好配当決着を演出した例も決して少なくはありません。

M 2015年から2024年の府中牝馬Sにおける単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬は3着内率が7割。人気の中心となっているような馬はそれなりに信頼して良さそうですが……。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は[3-5-4-8](3着内率60.0%)、単勝3番人気から単勝5番人気の馬は[4-2-2-22](3着内率26.7%)、単勝6番人気から単勝12番人気の馬は[3-3-4-55](3着内率15.4%)、単勝13番人気以下の馬は[0-0-0-24](3着内率4.3%)となっていました。中位人気馬の成績があまり良くないレースである点を意識しながら買い目作りに臨むべきでしょう。

M そんなアイルランドTでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ライラックです。

伊吹 興味深いところを挙げてきましたね。上位人気や中位人気ということはなさそうで、もし馬券に絡んだら妙味ある配当をもたらしてくれるはず。

M ライラックは6歳馬。2022年のエリザベス女王杯で2着となった実績がある馬ですし、前走のクイーンSでも勝ち馬と0.3秒差の4着に健闘しています。もっとも、3着以内に好走を果たしたのは現在のところ2023年の府中牝馬S(3着)が最後。積極的に狙おうと考えている方はそれほど多くないかもしれません。

伊吹 馬齢や近走成績を見る限りでは強調しづらいものの、能力やコース適性の高さは証明済みで、穴人気してしまう可能性も低め。非常に悩ましい存在と言えそうですね。ただ、Aiエスケープは絶好の狙い目と見ている模様。この見立てを踏まえたうえで、ライラックの好走確率を見積もっていきましょう。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 まずは実績と距離適性を素直に評価したいところ。2019年から2024年までの府中牝馬Sにおける3着以内馬18頭中15頭は、“前年以降の、JRAの、2000m未満の、重賞のレース”において2着以内となった経験がある馬でした。

M はっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 2000m以上のレース、条件クラスやオープン特別のレースを主戦場としてきた馬は、扱いに注意しましょう。

M ライラックの戦績を振り返ってみると、“2024年以降の、JRAの、2000m未満の、重賞のレース”における最高着順は、前走のクイーンSで記録した4着。この傾向を見る限りだと少々不安です。

伊吹 あとは直近のパフォーマンスも見逃せないファクターのひとつ。同じく2019年から2024年までの府中牝馬Sにおける3着以内馬18頭中15頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.5秒以内でした。

M こちらも興味深い傾向。大敗直後の馬はあまり上位に食い込めていません。

伊吹 なお、前走のコースが国内、かつ前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.6秒以上だったにもかかわらず3着以内となった3頭は、いずれも“前年以降の、JRAの、GIのレース”において3着以内となった経験があった馬。これほどの実績馬は今年もあまりいないので、基本的には前走好走馬を重視するべきだと思います。

M 先程も触れた通り、ライラックは前走のクイーンSで勝ち馬と0.3秒差の4着に善戦。前走好走馬である点は高く評価して良いのではないでしょうか。

伊吹 さらに、同じく2019年から2024年までの府中牝馬Sにおける3着以内馬18頭中15頭は、馬番が1番から8番でした。

M 内枠有利・外枠不利なレースと見ておきたいところですね。

伊吹 おっしゃる通り。今年は多頭数のメンバー構成となりそうですし、枠順次第で柔軟に構えた方が良いかもしれません。

M 現時点においては何とも言えませんが、仮に外寄りの枠を引いてしまうようだと、レースの傾向からは強調しづらい一頭ということになります。

伊吹 今のところ、私は他の馬を中心とした買い目で勝負するつもりです。今年は【表B】と【表C】で挙げた傾向を両方ともクリアしている馬がそれなりにいるので、基本的にはそれらの馬を重視するべきでしょう。もっとも、これだけの実績馬がおそらく超人気薄の立場でレースを迎えることになるわけですから、無理に嫌う必要はまったくないはず。他ならぬAiエスケープも有力と見ているわけですし、レース当日までじっくり動向を注視しておいた方が良いと思います。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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