2025年10月14日(火) 18:00
単勝オッズ7.0倍(4番人気)のラヴァンダが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週はアイルランドTが行われ、単勝オッズ7.0倍(4番人気)のラヴァンダが優勝を果たしました。
伊吹 陣営はもちろん、鞍上の岩田望来騎手にとっても気持ちの良い勝利だったのではないでしょうか。好スタートを決めたものの、無理に先手を主張せず枠なりでレースを進め、向正面では中団の外めを追走。先団の各馬に離され過ぎないくらいのポジションを確保しながら3コーナーから4コーナーを通過し、ゴール前の直線に入っています。逃げたアドマイヤマツリ(7着)が粘り込みを図る中、残り400m地点のあたりから少しずつ前との差を詰め、残り200m地点のあたりで内のアドマイヤマツリ、アンゴラブラック(2着)、カナテープ(3着)に接近。そのままアンゴラブラック・カナテープとの追い比べになり、最後は外からライラック(4着)も伸びてきましたが、この争いからわずかに抜け出し先頭で入線しました。上位の各馬がそれぞれ素晴らしい競馬をしていましたし、道中の流れや仕掛けのタイミング次第では、まったく違った結果になっていたかもしれませんね。これだけ難しい展開の中で完璧な結果を残したわけですから、人馬とも本当にお見事です。
M ラヴァンダは重賞初制覇。前走の仲秋Sを勝ってオープン入りしたばかりではあるものの、今年の阪神牝馬Sと府中牝馬Sで3着に好走していました。
伊吹 もともと3歳時にもフローラSで2着に、秋華賞で4着に健闘した実績がある馬。牝馬限定の重賞で善戦できるくらいの能力があることは十分過ぎるほどに証明していましたし、妙味ある存在と見ていた方も多かったのではないでしょうか。ちなみに、前回の当コラムで指摘した通り、当レースの前身にあたる2019年から2024年の府中牝馬Sは内枠有利で、馬番が9番から18番の馬は[0-1-2-33](3着内率8.3%)。私はこの辺を理由にラヴァンダをやや軽視してしまったのですが、結局今回も好枠を引いたアンゴラブラックやカナテープが上位入線を果たしていて、この傾向に大きな変化はなかったと見ることができます。そんな中で8枠15番からライバルを捻じ伏せたというのはなかなかのインパクト。着差以上に価値のあるパフォーマンスだったと言って良いかもしれません。
M そうなると、今後が楽しみですね。
伊吹 陣営のコメントによると、京都芝2200m外のエリザベス女王杯は距離が課題になると見ているようで、出否は未定とのこと。ただ、自在性のある馬ですし、参戦してきたら十分にチャンスはあると見るべきでしょう。もちろん、1マイル前後のビッグレースに照準を定めてくるようならば、それはそれで面白そう。次の狙い時をしっかり見極められるよう、引き続き今回の走りをしっかり分析しておきたいと思います。
M 今週の日曜京都メインレースは、3歳牝馬三冠競走の最終関門、秋華賞。昨年は単勝オッズ2.3倍(1番人気)のチェルヴィニアが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ14.6倍(5番人気)のボンドガールが2着、単勝オッズ3.9倍(2番人気)のステレンボッシュが3着という結果で、3連単の配当は1万1970円どまり。堅く収まりがちというイメージを持っている方が多いかもしれません。
伊吹 実際、過去10年の秋華賞における3連単の配当は、平均値が3万6509円、中央値が2万585円。ちなみに、2017年以降の過去8年に限ると、平均値は2万2995円、中央値は1万3365円です。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝7番人気以下だったにもかかわらず連対を果たした馬は1頭だけ。一方、上位人気グループの馬はそれぞれ悪くない成績を収めています。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝5番人気以内の馬は2015年以降[10-9-6-25](3着内率50.0%)、単勝6番人気から単勝10番人気の馬は2015年以降[0-1-4-45](3着内率10.0%)、単勝11番人気以下の馬は2015年以降[0-0-0-71](3着内率0.0%)でした。人気薄の馬が複数馬券に絡む可能性はかなり低いという前提に基づいて買い目を組み立てるべきでしょう。
M そんな秋華賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、パラディレーヌです。
伊吹 話の流れ的にもちょうど良いところを挙げてきましたね。人気の中心ということはなさそうですが、ある程度の支持は集まるはず。
M パラディレーヌはキャリア6戦。3走前のフラワーCで2着に、2走前のオークスで4着に健闘しています。もっとも、休養を挟んで臨んだ前走のローズSは8着どまり。さまざまな受け取り方ができる戦績ですし、評価は割れるかもしれません。
伊吹 ただ、前哨戦で大敗を喫してしまったことにより、今回は妙味あるオッズがつきそう。馬券に絡む確率が高そうであれば、しっかりマークしておくべきでしょう。少なくとも、Aiエスケープはそう見ている模様。この見立てに基づいて、私はレースの傾向からパラディレーヌの信頼度を測っていきたいと思います。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?
伊吹 近年の秋華賞は内外極端な枠に入った馬が不振。阪神芝2000m内で施行された2021年・2022年を含む2021年以降の3着以内馬12頭中11頭は、馬番が5番から14番でした。
M なるほど。実績馬の枠順次第では、大きな波乱が起きるかもしれませんね。
伊吹 おっしゃる通り。事前の予習も大事ですが、このレースに関しては枠順次第で柔軟に構えるべきでしょう。
M 出馬表が発表されたら、まずはパラディレーヌの馬番をチェックしたいと思います。
伊吹 あとは直近のパフォーマンスも重要なファクターのひとつ。同じく2021年以降の3着以内馬12頭は、いずれも前走の着順が3着以内でした。
M 大敗直後の馬は割り引きが必要ですね。
伊吹 堅めの決着が目立っている最大の原因はこのあたり。今年も前走好走馬を重視するべきでしょう。
M 先程も触れた通り、パラディレーヌは前哨戦のローズSで8着に敗退。近年の傾向を見る限りだとあまり強調できません。
伊吹 実績面に関して言うと、オークスにおいて3着以内となった経験がある馬は2021年以降[4-1-3-2](3着内率80.0%)と堅実。一方、この経験がなかったにもかかわらず3着以内となった4頭のうち3頭は、“同年の、JRAの、2000m未満の、GI・GIIのレース”において3着以内となった経験がある馬でした。
M オークスで馬券に絡んだ馬と、今回より短い距離のGI・GIIで好走したことのある馬を狙いたいところですね。
伊吹 逆に言うと、フローラSや紫苑Sでしか好走していない馬はちょっと不安。今年の該当馬も扱いに注意した方が良いと思います。
M パラディレーヌも、“2025年の、JRAの、2000m未満の、GI・GIIのレース”において3着以内となった経験はありません。
伊吹 正直なところ、私は他の馬に重いシルシを打つつもりでした。現時点でも複数の不安要素を抱えていますし、枠順次第ではもっと評価を下げることになりそうです。ただ、今年はオークスの2着馬と3着馬がエントリーしてこなかったので、オークス4着の実績はそれなりに尊重した方が良さそう。Aiエスケープも有力と見ているわけですから、オッズや枠順次第では押さえておこうと思います。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
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