【菊花賞 AI予想】先週の注目馬は好配当決着に貢献! 好調なAiの見立てをチェック

2025年10月20日(月) 18:00

単勝オッズ5.5倍(2番人気)のエンブロイダリーが優勝(c)netkeiba

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

信頼して良さそうな上位人気馬を的確に見極めたい

AIマスターM(以下、M) 先週は秋華賞が行われ、単勝オッズ5.5倍(2番人気)のエンブロイダリーが優勝を果たしました。

伊吹 着差以上の完勝と言って良いでしょう。スタート自体は五分だったものの、ダッシュのついた馬が多かったこともあって、好位を取りに行くのは難しそうな態勢となったのですが、1コーナーまでの直線部分で積極的にポジションを押し上げていき、結局外めの6番手で向こう正面へ。そのまま先頭のエリカエクスプレス(2着)に迫り、単独2番手で3コーナーに入っています。すぐ後ろにオークス馬のカムニャック(16着)が構える中、エリカエクスプレスを射程圏内に捉えながら追走し、単独2番手のままゴール前の直線へ。逃げ粘るエリカエクスプレスを決勝線の手前で捕らえ、最後は逆に1/2馬身の差をつけて入線しました。結果的に4コーナーを2番手以内で通過した2頭がそのまま上位を占める展開だったとはいえ、3着から5着の3頭はそれぞれ4コーナーを10番手以下で通過した追い込み馬だったわけですから、仮にエンブロイダリーが道中で別な動き方をしていたら、レースの結果はまったく違ったものとなっていたはず。エンブロイダリー自身やその陣営はもちろん、絶妙な手綱捌きで勝ち筋を掴んだ鞍上のC.ルメール騎手も、お見事と言うほかありません。

M エンブロイダリーは桜花賞に続く自身2度目のGI制覇。前走のオークスが9着どまりだったこともあって、半信半疑くらいに見ていた方も多かったのではないかと思います。

伊吹 実際、2014年から2024年の秋華賞における前走の着順別成績を見ると、8着以下だった馬は[0-0-0-44](3着内率0.0%)、4着から7着だった馬も[0-3-2-34](3着内率12.8%)。実績馬を含め、ここ11年は大敗直後の馬が期待を裏切りがちだったのです。こうした傾向を把握していたこともあって、正直なところ私もエンブロイダリーは過信禁物だろうと見ていました。セオリーを打ち破る形で3歳牝馬二冠を達成したわけですから、単純に潜在能力が頭ひとつ抜けているのかも。古馬や牡馬と対戦することになる今後も、相応に高く評価するべきでしょう。

M ちなみに、前回の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名したパラディレーヌは、単勝オッズ16.9倍(6番人気)の低評価を覆して3着に好走。この見立てを信じて妙味ある配当を引っ掛けた方もいらっしゃるのではないかと思います。

伊吹 こちらも素晴らしかったですね。近年の傾向を考えるとやや不安なところもあった馬で、私は押さえに回してしまったのですが、過小評価されているような印象を受けていたのもまた事実ですから、無理に嫌う必要はなかったのかもしれません。ちょうど本格的な下半期のGIシーズンが開幕したところであり、このタイミングでAiエスケープが調子を上げているのは心強い限り。またどこかで成果をあげてくれるのではないでしょうか。

M 今週の日曜京都メインレースは、皐月賞・日本ダービーに続く3歳クラシック三冠競走の最終戦、菊花賞。昨年は単勝オッズ3.7倍(2番人気)のアーバンシックが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ7.1倍(4番人気)のヘデントールが2着に、単勝オッズ23.6倍(7番人気)のアドマイヤテラが3着に食い込み、3連単1万9390円の決着となっています。

伊吹 3連単55万9700円だった2017年など、高額配当が飛び出した年もあるとはいえ、2019年以降の過去6年に限ると、3連単の配当は平均値が2万8932円、中央値が2万1450円どまりです。

M ただ、過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬は連対率が3割。堅く収まりがちなレースかと言われたら、少々微妙なところかもしれません。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2015年以降[5-3-3-9](3着内率55.0%)、単勝3番人気から単勝4番人気の馬は2015年以降[3-3-1-13](3着内率35.0%)、単勝5番人気から単勝10番人気の馬は2015年以降[2-4-5-49](3着内率18.3%)、単勝11番人気以下の馬は2015年以降[0-0-1-78](3着内率1.3%)となっていました。単勝二桁人気クラスの伏兵が馬券に絡んだ例はそれほど多くないので、まずは上位人気馬を慎重に評価していくべきでしょう。

M そんな菊花賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、エリキングです。

伊吹 ちょっと意外なところを挙げてきましたね。実績上位ですし、今回のメンバー構成なら人気の中心となりそう。

M エリキングは京都2歳Sと神戸新聞杯で優勝を果たしている馬。皐月賞では11着に、日本ダービーでは5着に敗れてしまったものの、菊花賞トライアルを制したことで再び注目度が高まっています。特別登録を行った馬のうち、重賞を複数回勝っているのはこの馬だけ。場合によっては単勝1番人気の立場で臨むことになるかもしれません。

伊吹 Aiエスケープがこの馬を指名したということは、今回は妙味ある伏兵が見当たらなかったということなのでしょう。こうした見解を踏まえたうえで、好走馬の傾向とエリキングのプロフィールを見比べていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 まずは直近のパフォーマンスを素直に評価したいところ。2020年以降の3着以内馬15頭中14頭は、前走の着順が3着以内でした。

M 大敗直後の馬はあまり上位に食い込めていませんね。

伊吹 前走の着順が4着以下だったにもかかわらず3着以内となったのは、2021年1着のタイトルホルダーのみ。今年も前走好走馬を重視するべきでしょう。

M 前哨戦の神戸新聞杯を勝っているエリキングにとっては心強い傾向です。

伊吹 あとは血統と実績もしっかりチェックしておきたいファクターのひとつ。同じく2020年以降に限ると、父にサンデーサイレンス系種牡馬を持つ馬は[3-0-3-50](3着内率10.7%)とやや苦戦しています。なお、3着以内となった6頭は、いずれも“JRAの、GI・GIIのレース”において1着となった経験がある馬でした。

M 実績上位の馬でない限り、サンデーサイレンス系種牡馬の産駒は強調できませんね。

伊吹 おっしゃる通り。この条件に引っ掛かっている馬は、思い切って評価を下げるべきでしょう。

M エリキングの父はサンデーサイレンス系に属しているキズナですが、GIIの神戸新聞杯を勝っている実績馬なので、心配する必要はなさそうです。

伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬15頭中14頭は、前走の距離が2200mでした。

M こちらもなかなか興味深い傾向。はっきりと明暗が分かれています。

伊吹 ちなみに、前走が神戸新聞杯だった馬の成績を見ると、神戸新聞杯が中京芝2200mで施行された2020年から2022年ならびに2024年は[1-1-1-22](3着内率12.0%)、阪神芝2400m外で施行された2023年は[0-0-0-8](3着内率0.0%)。どちらもいまひとつですが、再び舞台が阪神芝2400m外に戻った分、今年は例年以上に神戸新聞杯組を疑ってかかった方が良いかもしれません。

M 繰り返し指摘しているように、エリキングは神戸新聞杯の勝ち馬。この傾向は少々気掛かりですね。

伊吹 もっとも、明確な不安要素と言えるのはこの点くらい。私は他の馬を◎に指名する予定ですが、エリキングも無理に逆らう必要はないと見ていました。好調なAiエスケープも同意見なのは心強い限り。十分な利益を確保できるよう、じっくり買い目を検討したいと思います。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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