2025年10月22日(水) 12:00
10月18日(土)、王室所有のアスコット競馬場で、5つのG1が組まれた超豪華開催の「ブリティッシュ・チャンピオンズデー」が行われた。
イギリスにおける今年の芝平地競馬は、11月8日にドンカスター競馬場で行われる開催をもって終了する。したがって、シーズンはまだ3週間ほど日程を残しており、この間にも、25日のドンカスター開催に組まれた2歳馬のG1フューチュリティトロフィー(芝8F)をはじめ、3重賞の開催が予定されている。
だが実質的に、イギリスにおける芝の平地は、ブリティッシュ・チャンピオンズデーをもって、ほぼ終戦ムード。競馬メディアの見出しを飾るのも、ここからが本格的なシーズンを迎える障害競馬の話題が中心となる。
イギリスで、ジョッキーのチャンピオンシップが、ブリティッシュ・チャンピオンズデーを最終日として決定するようになったのは、2015年のことだった。競馬というスポーツの挙行がワールドワイドになり、馬はもちろんのこと、騎手たちも、ムチ1本を手に国境を越えて騎乗地に赴くことが当たり前の時代になった。11月になれば米国でブリーダーズCがあり、豪州でメルボルンCがあり、日本でジャパンCがあり、香港で香港国際競走がある。イギリスを拠点とするトップジョッキーたちも、この時季は世界を飛び回るのが常で、つまりは本国を留守にしがちになる。トップジョッキーたちが不在の中で、リーディング争いをするというのは、主役が舞台を降りた芝居を見せられるようなもので、そうであるならば、ブリティッシュ・チャンピオン・デイをもってチャンピオンジョッキーを決めようということになったのである。
同時に、カレンダーイヤー(1月1日から12月31日)をタームとしたリーディングの設定も残されており、したがって制度上は、イギリスには同じシーズンに二人の異なるリーディングジョッキーが生まれることも、おおいにありえることになる。
さて、10月18日をもって決定したイギリスにおける、2025年のチャンピオンジョッキーは、オイシン・マーフィー騎手(30歳)となった。2位のビリー・ロックネイン騎手(19歳)の108勝に対し、オイシン騎手は143勝で、ほぼ独走態勢だった。オイシン騎手のリーディングは、2019年、2020年、2021年、2024年に次いで、5度目のことだった。
2025年のオイシン騎手は、勝利数が多かっただけでなく、内容も濃い1年を送った。5月にJ&T.ゴスデン厩舎のリードアーティストに騎乗して、ニューベリー競馬場のG1ロッキンジS(芝8F)を制したのを皮切りに、7月にはサイード・ビン・スルール厩舎のトルネードアラートでG1バイエルンツホトレネン(芝2000m)を、8月にはアンドレ・ファーブル厩舎のサジールでモーリスドゲスト賞(芝1300m)を制覇。さらにヨーク競馬場のイボア開催では、豪州からの遠征馬アスフォーラでG1ナンソープS(芝5F)を、アンドリュー・ボールディング厩舎のネヴァーソーブレイヴでG1シティオブヨークS(芝7F)制覇を成し遂げた。その後、アスフォーラではパリロンシャン競馬場のG1アベイドロンシャン賞(芝1000m)制覇も果たしている。また、日本調教馬ビザンチンドリームに騎乗し、G2フォワ賞(芝2400m)制覇を飾ったのも、日本の競馬ファンの記憶には新しいところだろう。
ことほどさように、きわめて腕の良い乗り役さんであり、かつ、英語以外にフランス語やドイツ語も話すというインテリがオイシン・マーフィー騎手なのだが、お騒がせ事件を何度となく起こしているのがこの男だ。
2019年6月、騎手に対して抜き打ちで行われたテストで、呼気からアルコールが検出されて騎乗停止に。2020年7月にはフランスで、これも抜き打ちでおこなわれたテストで、体内からコカインの成分を検出。本人はコカインの使用を強く否定し、テスト前日にコカイン常習者と性行為を行ったことが要因と抗弁。それでも、3か月の騎乗停止を受けることになった。新型コロナの流行で行動制限が設けられた際も、これを逸脱する行為があったとして処分を受けた他、今年6月にも飲酒運転で捕まり、7万ポンドの罰金と20か月の運転免許停止処分を受けている。
これからも長く乗り続けてほしい騎手だけに、おおきな事故につながる前に、飲酒を控えめにし、体調を含めた私生活の管理に気を配ってほしいものである。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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