手堅く「前走不利」を馬券に生かす方法

編集下M(以下、M)　今週は菊花賞ですが、『「今週勝つ！ 」を叶える馬券カレンダー』10月第4週のテーマは『「結果的に不利になった馬」よりも「あらかじめ不利であった馬」の巻き返しを狙う』。菊花賞が年に数回しか施行されない京都3000mという特殊な条件なので、総論的なテーマとなっていますね。例によって後半で菊花賞については伺うことにして、簡単にこちらの解説からお願いします。

10月第4週の狙い方。『「今週勝つ！ 」を叶える馬券カレンダー』(画像は電子版)より

立川(以下、立)　現代の競馬予想におけるトレンドの一つとなっている「前走不利」について取り上げています。

M　私も馬券本編集者の端くれですから、そのトレンドはひしひしと感じていますよ。人気薄の激走を見抜くことができたり、巻き返しの理屈が分かりやすかったりするので、回収率重視、期待値重視が当たり前になっている今の馬券ファンにはとっつきやすいのでしょうね。

立　そうですね。ただ、前走不利を狙う手法は、レース映像を見返したり、馬単位の動きを追ったりしないといけないのでそれなりに手間が掛かるのが難点。そこで書籍では、期待値をあまり下げずに簡略化する方法について解説しています。

M　いわゆる時短ですね。“タイパ”も現代のトレンドですから。

立　結論から言うと、前走不利馬はこれを押さえるだけでも十分に効果を発揮します。

1.対象となるのは、前走好走馬(5着以内、あるいは1秒差以内)のみ
2.展開面で不利を受けた馬は、条件替わりでもあまり信用しない
3.コース形態や馬場状態で不利を受けた馬の巻き返しをねらう

そして、ねらうべきは「1を満たす3の馬」になります。

M　1・2・3それぞれのメカニズムは『「今週勝つ！ 」を叶える馬券カレンダー』(現在、Kindle版半額セール中です！)を読んでいただくとして、「1を満たす3の馬」をねらう理由について簡単に説明していただけますか？

立　不利を受けて惨敗した馬は、その程度の能力の馬であることが多いのに加え、多くの人が注目するため過剰人気になりやすい傾向があります。むしろ、前走不利を受けても好走したのに、思いのほか人気になっていない馬をねらうほうが、期待値で見ても好走率で見ても高くなります。まずはこれが前提。

M　前走好走馬を重視する理由ですね。

立　展開面で不利を受けた馬は、今回、展開が好転する保証はありません。いわゆる“不確定要素”です。しかも、再び展開面の不利があれば確実に凡走することをすでに証明しています。一方、コース形態や馬場状態で不利を受けた馬は、今回明確に条件が好転するケースが多くなります。例えば、芝発走のダートの内枠で被せられて先行できなかった馬が、同コースで外枠に入れば、前走より先行しやすくなることがほとんどです。また、開催後半のローカルの荒れた芝で内枠に入って凡走した馬が、開幕直後のローカル高速馬場の内枠で出走してきたらまず間違いなく馬場のよいところを走ることができます。つまり、条件が好転する確実性が高く、誰の目にも分かりやすいのが3ということ。言うなれば、展開面などの影響で「結果的に不利になった馬」よりも、枠や馬場などの影響で「あらかじめ不利であった馬」の巻き返しのほうが期待できますよということですね。

M　今の開催で当てはまりそうなパターンを教えていただけますか？

立　外枠有利の東京ダート1600mや京都ダート1400mでの内枠凡走馬、新潟芝1000mの内枠凡走馬がレース質に合う条件に出てきたら狙ってみてください。

菊花賞で脚質的に注目したい上がり馬はミラージュナイト

M　ここからは菊花賞の展望に移りましょう。

京都芝3000mの立川式コース図

立　菊花賞は年によって枠順の有利不利はまちまちですが、基本的には差し有利のGIです。上がり5-6Fの持続戦になるので、直線で末脚比べをするに当たって3-4コーナーの下り坂を利用して吹かしてこられるほうがよいことや、単純にクラシックを先行して好走してきた牡馬は能力面で劣ることが多いことなどがその理由。近年、京都で行われた菊花賞で先行して馬券に絡んだのは2023年の勝ち馬ドゥレッツァや2019年の3着馬ヴェロックスくらいですが、前者は別路線組で差しても上がり最速を使える馬が枠を嫌って逃げの手に出たものですし、後者は1番人気を裏切っての3着ですから、前提として先行馬軽視でOK。

M　初角までの距離が短いので内枠有利になるかと思いきや、過去10年でも6-8枠が5勝しているんですよね。

立　枠の有利不利に馬場が大きく影響してくることは間違いないですが、それだけで決まるわけではありません。逃げ先行馬がどの枠に入っているか、馬群はどのような形になるか、どのようなラップで流れる可能性が高いのかなどを考慮して、レース質を判断することになります。そしてここが、単なるトラックバイアスと一線を画すところです。

M　内か外か、二択のレース質を決めるために「馬場」「枠並び」「ラップ」など様々な要素が介在しているわけですね。

立　まず「馬場」の観点から考えてみましょう。今開催の京都芝は非常に時計が速く、ラチ沿いを立ち回れる馬が有利で、結果的にラチ沿いを通しやすい内枠が恵まれていました。ただ、今週末は土日で雨が降る予報になっています。雨量次第で不確定要素が多いので、ここはフラットで見ておくくらいにしておきましょう。

M　続いて「枠並び」。

立　逃げ先行馬が内枠に入るほど縦長隊列になりやすく、また、外枠勢が位置を取りにくくなるので、内枠が恵まれやすくなります。逆に外枠に入ると馬群が凝縮しやすく、被せられる内枠勢が位置を悪くする一方で、外枠差し馬が押し上げやすくなります。

M　こちらは枠順確定を待ちましょう。そして「ラップ」。

立　京都芝の長丁場では仕掛けが遅くなるほど内枠先行馬が有利になりますし、仕掛けが早くなるほど坂の惰性を利用できる外枠差し馬が有利。また、平均ラップで淡々と流れるほど内枠先行有利に、ラップが中盤で緩むほど押し上げが利く外枠差し馬が有利になります。

M　今年のメンバーだとどうなりそうでしょうか？

立　例年に比べて先行勢に人気どころが多いので、枠の並びが非常に重要になります。前提としては差し有利なので、内枠に先行馬が並ぶようなら内枠差し馬を買いたいですし、外枠に先行馬が並ぶようなら外枠差し馬を買いたいところ。馬場はフラットとしていますが、京都芝外回りはフラットなら外をぶん回すほうが有利になりやすいので、雨も考慮すれば、先行馬が外枠に並んで入ってくれて外枠主導になったときの外枠差し馬ねらいが最も確実性が高そうだと考えられます。

M　1、2番人気想定のエリキング、エネルジコはともに差せるタイプなので大崩れはなさそうですね。

立　特に外枠巧者のルメール騎手が騎乗するエネルジコは外枠差し有利の枠並びなら信頼度は高いでしょう。末脚性能が高いものの多頭数が微妙なエリキングは、馬場が悪化して馬群がバラける形がベター。一方、ポジショニングで勝負したいショウヘイやゲルチュタールは展開面で難しさがありそうです。穴なら、今年の牡馬クラシック組はレベルが高めなことは承知しつつ、別路線組から末脚性能が高いミラージュナイト。前走で降した2、3着馬は次走で2勝クラスを勝ち上がっていますし、3勝クラス勝ちで人気を背負うゲルチュタールとそこまで大きな差はないはずで、脚質面の適性差でここは逆転可能でしょう。

＜枠順確定後の追記＞
　京都の天気を見ると日曜から断続的に雨の予報なので、ここは想定どおりフラット気味で見ておきましょう。

　枠の並びとしては、中-外枠にテンに速い馬が入っているので、それほど縦長の隊列にはならず、馬群は一団から中盤緩んでの5-6F持続戦が濃厚。基本的には中-外枠の差し馬が京都の下り坂の惰性を利用して外から伸びてくるイメージで入りたいところです。

　人気馬の中で枠順に最も恵まれたのは15番枠のエリキングだと思いますが、この馬にとっては馬群がバラけるほうがよかったので、外枠主導の馬群で一団の中で揉まれると不安はありますね。川田騎手が馬群の外目に持ち出して、仕掛けを遅らせてくれるとよいのですが、内目早めの競馬を好むだけにレース質と噛み合うか微妙。

　9番枠のエネルジコは周りを先行馬に固められているので、鞍上の判断次第で内にも外にも位置取れるのは強み。特に、自身の外枠3頭が逃げ先行馬なので、ここを行かせて外に持ち出す可能性が高いかなと。信頼度としてはこちらを上位に見るのが妥当でしょう。

　穴で期待していたミラージュナイトは6番枠へ。決してよいとは言えないですが、自身の外枠に先行馬が並んでいるので、こちらも内よりは外に持ち出してくる可能性は高そう。

　2列目候補として残しておきます。あとは能力面で足りないところはありますが、エリキングと同枠の13番枠アロンディと14番枠エキサイトバイオは隊列上恵まれることは間違いないので、人気以上には走ってくれるでしょう。3列目で少し押さえておくのは面白いかもしれません。