【天皇賞(秋) AI予想】秋華賞でも菊花賞でも注目馬が好走! 好調なAIが選んだ伏兵の名は……

2025年10月27日(月) 18:00

単勝オッズ3.8倍(1番人気)のエネルジコが優勝(c)netkeiba

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

昨年くらいの波乱が起きた年は思いのほか少ない

AIマスターM(以下、M) 先週は菊花賞が行われ、単勝オッズ3.8倍(1番人気)のエネルジコが優勝を果たしました。

伊吹 強かったですね。行きたがる素振りを見せた場面もありましたが、レースの序盤は思い切って後方に控え、15番手のポジションで2周目の2コーナーを通過。向正面で中団まで押し上げ、3コーナーでは早くも先団を捕らえにかかっています。4番手でゴール前の直線に入ると、先に抜け出しかけたエキサイトバイオ(3着)を残り200m地点の手前でかわし、そのまま先頭に。その後は独走態勢となり、中団から伸びてきたエリキング(2着)に対して2馬身のリードを保ったまま入線しました。3000mのレースはもちろん、右回りのレースを使うのも今回が初めてだったうえ、降雨の影響により馬場状態は稍重。さまざまな懸念材料があったにもかかわらず、強気のレース運びでライバルたちを捻じ伏せたわけですから、今回に関してはエネルジコ自身の潜在能力やC.ルメール騎手の手綱捌きが一枚上手だったと言わざるを得ません。

M エネルジコはGI初制覇。今春にダービートライアルの青葉賞を制したものの、態勢が整わず本番への出走を断念していましたから、陣営にとっても感慨深い勝利だったのではないでしょうか。

伊吹 日本ダービー回避は苦渋の決断だったと思いますが、オーナーサイドや厩舎の将来を見据えた選択がこうした形で実を結んだのは良かったですね。復帰戦の新潟記念で2着に敗れてしまったとはいえ、当時の勝ち馬シランケドとのタイム差はわずか0.1秒。まだ底を見せていませんし、古馬相手のビッグレースでも主役を張ることができる器だと思います。母のエノラは現役時代にドイツオークスを勝っている馬。ドゥラメンテのラストクロップということもあり、将来の種牡馬候補としても注目を集める存在ですから、今後も目が離せません。

M ちなみに、前回の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名していたのは、単勝オッズ4.3倍(2番人気)の支持を集めたエリキング。エネルジコを捕らえることはできなかったものの、しっかり連対を果たしました。

伊吹 先週の段階で指摘した通り、どちらかと言えば穴党であるAiエスケープが人気サイドの馬を挙げてきたら、妙味ある伏兵が見当たらなかったのだと判断して良いと思います。結果的に馬連1番人気の組み合わせで決着したわけですし、見立ては正解だったと言えるでしょう。2週前の秋華賞でも、Aiエスケープの注目馬だったパラディレーヌが単勝オッズ16.9倍(6番人気)の低評価を覆して3着に健闘。好調をキープしているようですから、この後も楽しみです。

M 今週の日曜東京メインレースは、さまざまな路線から有力馬が集う下半期の中距離チャンピオン決定戦、天皇賞(秋)。昨年は単勝オッズ3.8倍(2番人気)のドウデュースが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ53.8倍(9番人気)のタスティエーラが2着、単勝オッズ48.1倍(8番人気)のホウオウビスケッツが3着という結果で、3連単39万7100円の好配当決着となっています。

伊吹 過去10年の天皇賞(秋)における3連単の配当を振り返ってみると、平均値は6万6372円、中央値は2万3800円。どの年も優勝馬は単勝オッズ4倍未満の支持を集めていましたし、どちらかと言えば堅く収まりがちなレースですね。

M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、7番人気以下で3着以内となった馬は6頭だけ。そのうち2頭が昨年の2着馬と3着馬だったわけですから、伏兵が上位に食い込む可能性は低いと見ておくべきかもしれません。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4番人気から単勝7番人気の馬は2015年以降[0-5-5-30](3着内率25.0%)、単勝8番人気以下の馬は2015年以降[0-2-2-74](3着内率5.1%)となっていました。人気薄の馬を狙う場合であっても、あまり手を広げずコンパクトな買い目で勝負するべきでしょう。

M そんな天皇賞(秋)でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ロードデルレイです。

伊吹 話の流れ的にもちょうど良い塩梅の馬を挙げてきましたね。人気の中心ということはなさそうですが、ある程度の支持は集まるはず。

M ロードデルレイはキャリア11戦。3走前の日経新春杯で重賞初制覇を果たし、2走前の大阪杯でも2着に健闘しています。前走の宝塚記念で8着に敗れてしまったこともあり、今回はやや注目度が低め。絶好の狙い時と見ている方も少なくないはずです。

伊吹 東京芝2000mのレースはこれまでのところ2戦2勝。コース替わりがプラスに働きそうな点も見逃せませんね。Aiエスケープが有力と見ていることを踏まえたうえで、レースの傾向とこの馬のプロフィールを比較していきましょう。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 近年の天皇賞(秋)は休養明けのぶっつけ本番で臨んだ馬が優勢。2020年以降の3着以内馬15頭中12頭は、前走との間隔が中13週以上でした。

M なるほど。オールカマーや毎日王冠といった、主要な前哨戦を使った馬は疑ってかかった方が良いかもしれませんね。

伊吹 おっしゃる通り。基本的には、上半期のビッグレースから直行してきた馬を重視するべきでしょう。

M 宝塚記念からの直行を選択したロードデルレイにとっては心強い傾向と言えます。

伊吹 あとは、コース適性やキャリアも素直に評価した方が良さそう。同じく2020年以降の3着以内馬15頭中14頭は、東京競馬場のビッグレースを勝っているか、キャリア11戦以内でした。

M こちらもわかりやすい傾向。実績馬や伸びしろがありそうな馬を重視したいところです。

伊吹 この条件をクリアしていなかったにもかかわらず3着以内となったのは、2022年2着のパンサラッサのみ。今年の該当馬も扱いに注意しましょう。

M 先程も触れた通り、ロードデルレイは出走数が11戦。5歳とはいえまだキャリアが浅い馬ですから、伸びしろがあると見做して良いと思います。

伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬15頭中11頭は、生産者がノーザンファームでした。

M ノーザンファーム生産馬とそれ以外では、好走率にも大きな差がありますね。

伊吹 なお、生産者がノーザンファーム以外だったにもかかわらず3着以内となった4頭は、いずれも前走の条件がGI・GII、かつ前走の着順が3着以内。実績上位の前走好走馬でない限り、過信禁物と見ておいた方が良さそうです。

M ロードデルレイはケイアイファームの生産馬で、前走の着順が8着。残念ながら、この傾向を見る限りではあまり強調できません。

伊吹 正直なところ、私は取捨に悩んでいました。人気を考えると無理に嫌う必要はなさそうですが、小さくない不安要素を抱えている点は意識しておくべきでしょう。もっとも、好調なAiエスケープが中心視しているのであれば、素直に信頼して良いのかも。枠順や実際のオッズも確認したうえで、レースの直前にもう一度じっくり考えようと思います。

※10月29日追記:ロードデルレイは出走回避となりました。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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