2025年10月30日(木) 12:00
今週末の天皇賞(秋)の舞台は東京芝2000m。スタート直後のカーブがコースの改修によってゆるやかになったのは2003年のことだった。
改修初年度の天皇賞(秋)を勝ったのは大外18番枠のシンボリクリスエス。前年からの連覇で、同馬は次走のジャパンCこそ3着に終わるも、つづく有馬記念を9馬身差で制し、有終の美を飾った。
これは、突出して強かったシンボリクリスエスだから大外を苦にしなかったと見るべきで、外枠が内枠より長い距離を走らされる「外枠不利」の条件は変わっていない。
この特殊なコース形態と、天皇賞(秋)では1991年のプレクラスニー(繰り上がり1着)以来逃げ切り勝ちをした馬が出ていない、という事実は無関係ではないだろう。「他馬を怖がるので逃げたい」とか「切れる脚がないので先行したい」という馬がこのコースで外枠を引いた場合、できれば最初のコーナーまでに、遅くとも向正面の入口付近でポジションを固定しようとする。そうなるとどうしてもテンが速くなり、後ろの馬に有利になる。速くなるとわかっていても行かなくてはならないのが競馬だというのは、本稿の読者には説明不要だろう。
過去10年の天皇賞(秋)で逃げた馬の成績を新しい順に見ていくと――。
2024年 ホウオウビスケッツ 3着(9番枠) 2023年 ジャックドール 11着(10番枠) 2022年 パンサラッサ 2着(3番枠) 2021年 カイザーミノル 14着(10番枠) 2020年 ダノンプレミアム 4着(11番枠) 2019年 アエロリット 3着(5番枠) 2018年 キセキ 3着(10番枠) 2017年 ロードヴァンドール 14着(11番枠) 2016年 エイシンヒカリ 12着(1番枠) 2015年 クラレント 6着(5番枠)
惜しいところまでは行っても勝ち切れないのは、どの枠に入ろうが、ゲートから最初のコーナーまでの距離が近いと序盤のポジション争いが激しくなるから、ということか。
同じようにゲートからすぐ最初のコーナーがあった改修前の阪神芝1600mの桜花賞を勝つ条件は「テンよし、中よし、終いよし」と言われていた。天皇賞(秋)で逃げる場合は、そういう走りを芝2000mで、歴戦の強豪を相手にしなければならないのでハードルが高くなるのだと思われる。
ちなみに、前述したプレクラスニーは10番枠だった。このときは不良馬場だったからむしろ外のほうがよかったのかもしれない。その前に逃げ切った1987年のニッポーテイオーは4番枠だった。
今年逃げるであろうメイショウタバルがどの枠を引くか、注目したい。
さて、買物をしようと街まで出かけたのに財布を忘れたサザエさんは「愉快」だと歌われているが、つい先日、私もそれをやってしまった。が、スマホの交通系ICで決済できたので、愉快なネタにはならなかった。
また、以前、複数箇所で取材や調べ物をするため車で出かけ、どこに駐車したかを忘れてひどく困ってネタにしたこともあったが、今は自動車メーカーのアプリですぐに駐車位置がわかる。
例えば、車で正面衝突したときエンジンが下に落ちて乗員の脚部損傷を避ける構造にすることなどを、失敗しても安全な方向に行くという意味で「フェイルセーフ」と言うのだが、忘れても大丈夫な方向に行く「フォゲットセーフ」、もしくは「フォゲットオッケー」の世の中になってきたのか。
天皇賞(秋)に話を戻すと、もうひとつの連載の年間GI予想で、私が勝つと予想したのはタスティエーラだった。日本ダービーを獲らせたダミアン・レーン騎手が3戦連続で乗るのは好材料だ。
この馬を頭に、3週連続GI制覇を狙うルメさんのマスカレードボールと、クリスチャン・デムーロ騎手が乗る皐月賞馬ミュージアムマイルという2頭の3歳馬に流すか。
思いっ切り本命サイドで外国人騎手ばかりになったので、今週から短期免許で騎乗するアレクシス・プーシャン騎手のアーバンシックも相手に加える。
喜ぶべきなのか、それとも憂うべきなのかわからないが、かなりの確率で的中しそうな気がする。
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島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。「Number」「優駿」「うまレター」ほかに寄稿。著書に『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ブリーダーズ・ロマン』。「優駿」に実録小説「一代の女傑 日本初の女性オーナーブリーダー・沖崎エイ物語」を連載中。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナー写真は桂伸也カメラマン。 関連サイト:島田明宏Web事務所
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