2025年12月01日(月) 18:01
▲和田竜二騎手が「引退馬」への思いを語る(撮影:小田穂乃実)
12月7日、JRA馬事公苑で開催されるRRC(引退馬競走杯)FINAL。元競走馬たちが舞台を新たに活躍を見せる大会の開催を前に、現役JRA騎手・和田竜二騎手に「競走馬のセカンドキャリア支援」についてお話を伺いました。
競馬界が抱える課題のひとつ「競走馬のセカンドキャリア」。長年、その支援を続けている和田騎手が、競馬界と馬術界を繋ぐ意義、現状の手応えと課題、情報発信を通じた反響について語ります。そして今回、セカンドキャリアとして注目を集めるRRCへの熱い思いも明かしてくれました。
(取材・文=小田穂乃実)
──引退馬支援に関してこれまでの活動を振り返っていただけますか?
和田 他の方が尽力されていたおかげで馬術界や引退馬を支援している方々との繋がりもできていて、僕も色々お話を聞くことができています。活動を通して、今後もっと競馬界とその先の馬術界とのサークルが繋がってきたら、いい循環になりそうだなと感じています。乗馬になって活躍しているサラブレッドもいますし、すごく面白い世界。だんだんと浸透してきている感じはしますね。
──そもそも引退馬支援を始めたきっかけは何ですか?
和田 JRAの引退競走馬の検討委員会に選出されている関係もあり、活動をさせていただくようになりました。その中で自分にできることは何かあるかなと考え、乗馬の世界や牧場の方々とお話をさせていただき、宣伝役になれたらなと活動させていただいています。
──競走馬のセカンドキャリアは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
和田 主に乗馬ですね。RRCのような大会も増えていますし、馬術用にリトレーニングされる馬もいます。馬術に向いている馬もいるようで、実際にオリンピックにもサラブレッドも何頭か出ていますしね。ただ、そういう部分も表に出てこないと分からないですよね。もう少し競馬とリンクさせてやっていく方がいいのかなと思います。
──ジョッキーとして思うこともあったのでしょうか?
和田 騎乗していた馬についてはやはり気になりますね。ただ、乗馬クラブは行っている人も多いですが、養老牧場はなかなか行く機会がないですよね。
──YouTubeなどを活用して、騎手仲間などと情報発信を積極的にされています。その輪が広がり、騎手の方々の間でも注目度が向上しているようにお見受けします。
和田 これまであまり見ていなかった人も、見たらやっぱり面白いなという人も多いですしね。馬術の大会に出ると、楽しいからまた来年もという人もいます(笑)。競馬と乗馬は違いますが、競馬が生きてくることもありますし、自分の乗っている馬が馬術の世界で活躍していたら応援したくなります。みんな馬に乗るのが趣味みたいなものですからね。
▲和田竜二騎手が見据える「引退馬支援」の未来(撮影:小田穂乃実)
──視聴者の方からの反響は?
和田 ありがたいことに、“動画がきっかけで乗馬を始めました”という声をいただくことがあります。意義のあることですし、やはり身近に感じてもらうことは大切ですね。情報を繋いでいくことはとても重要です。
──「ウマ娘」の効果で競馬ファン以外の注目度も上がっているようにお見受けします。ウマ娘が「競馬」のみならず、「馬産業」「引退馬」に与えた影響はやはり大きいものでしょうか?
和田 そうですね。ウマ娘の人気によって引退馬が注目されるきっかけも生まれています。実際の馬に触れたことがない人も多いでしょうし、「ウマ娘」の影響は大きいと思います。僕らの中でもゲームからこの世界に入った人も多いですし、本当に間口は何でもいいと思います。
業界に興味を持って、経験や興味が膨らんで職業として挑戦するのか、趣味なのか、動物が好きだから乗ってみたいと思うのか、そこからどう繋がっていくかも人それぞれですしね。
──現役時代にコンビを組んだことがある馬たちとセカンドキャリアで再会できた時はどんな気持ちになりますか?
和田 やっぱりかわいいですよね。でも現役時代と全然雰囲気が違いますね(笑)。気性が荒かった子でも穏やかになっています。リトレーニングされて、また別のアスリートとして育っていて、馬ってこんな変わるんやなって思います。
──これまでの活動を通して見えてきた課題はありますか?
和田 乗馬や馬術などへの敷居がもうちょっと低くなったらいいなと思います。競馬界も馬業界について知ってもらうためにいろいろなことに取り組んでいますし、興味を持ってもらうしかないと思います。
引退してからの馬の行き先を追っていっていますが、それがどこまでうまく機能していくか。まだまだこれからだと思うけど、追っていかないと先が繋がらないですしね。
──馬業界全体の人手不足が問題となっていますが。
和田 そうですね。生産頭数がどんどん増えている一方、人が少なくなっていますからね。やはり馬の世話には人手が必要になってきます。引退馬を受け入れるキャパシティがもっと大きくなればいいなと思います。
──ずばり、和田騎手にとって「馬」とはどのような存在ですか?
和田 生活の一部、家族みたいなものです。騎手は競馬に乗って特に身近に生活していますしね。最後まで気になるのは当たり前だと思いますし、馬のおかげで生きてきた人間としてという気持ちはありますね。恩返しみたいなものです。
──さて、この度行われるRRC「引退競走馬杯」はどのような大会ですか?
和田 引退した競走馬たちが乗馬用にリトレーニングされ、馬場馬術、障害を予選から本選まで1年かけて競う大会です。すごくあったかい雰囲気の中行われていますね。参加者の方々はかなり熱いですが(笑)。
──初開催から今年で7回目となりますが、大会のこれまでを見られてきてどのような印象を持たれていますか?
和田 年々盛り上がっていますし、レベルも上がってきていますね。もっとメディアなどで取り上げてほしいなと思います。ファンの方々の知っている馬も多く出場していますし、馬たちの成長の記録をもっと発信していくと面白いと思います。
──どのようなポイントに注目して見るといいでしょうか?
和田 今年だけに注目するのではなく、これまでの大会の映像も残っているので、遡ってこれまでと比べて見てみると面白いと思います。去年は全然跳べなくて怖がっていたのに今年は跳べてる! とか、予選から何が違うのかなとか。それにやっぱりルールを知ってからの方が面白いですね。
──最後に、RRC FINALに出場する人馬へメッセージをお願いします。
和田 全人馬無事で大会を終えてほしいなと思います。順位は出ますけど、みんな表彰されるような素晴らしいこと。全人馬能力を発揮してくれたらいいなと思います。
(文中敬称略)
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