【エリザベス女王杯 AI予想】今回は絶好の狙い時!? AIの注目馬は波乱を演出できるか

2025年11月10日(月) 18:00

単勝オッズ27.7倍(9番人気)のミステリーウェイが優勝(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

手頃なオッズがついている伏兵の一発に注意したい

AIマスターM(以下、M) 先週はアルゼンチン共和国杯が行われ、単勝オッズ27.7倍(9番人気)のミステリーウェイが優勝を果たしました。

伊吹 鞍上の松本大輝騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。好スタートを決めてスムーズに先行し、スタンド前の直線半ばで早くも先頭のポジションを確保。1コーナーから2コーナーで後続との差を広げ、そのまま向正面を通過し、5馬身ほどのリードを保ったまま3コーナーに入っています。4コーナーでマイネルカンパーナ(7着)、ホーエリート(6着)、ボルドグフーシュ(11着)らが迫ってきたものの、ゴール前の直線に入っても脚色は衰えず、内ラチ沿いで先頭をキープ。中団から伸びてきたディマイザキッド(3着)、スティンガーグラス(2着)らの追撃も凌ぎ切って入線しました。終始完璧なレース運びだったと思いますし、後続からのプレッシャーに怯むことなく走り切ったミステリーウェイもお見事。こんな競馬をされてしまったら、他の馬はなす術がありませんよね。

M ミステリーウェイは7歳馬で、今回のレースが通算36戦目。3走前の御堂筋Sを勝ってオープン入りを果たしたばかりの馬です。

伊吹 約4か月の休養を挟んで臨んだ2走前の札幌日経賞こそ4着どまりだったものの、前走の丹頂Sを快勝し、重賞初挑戦となったここでいきなりタイトルを奪取。完全に本格化したと言って良いでしょう。管理する小林真也調教師は開業5年目。2022年の東京ハイジャンプをゼノヴァースで、2025年のクラスターCをサンライズアムールで制していますが、JRAの平地重賞を勝ったのはこれが初めてでした。ちなみに、2025年の小林真也調教師は11月9日時点で28勝をマークしており、JRAリーディングトレーナーランキング(着度数順)で18位にランクイン。JRAのレースにおける単勝回収率は147%、複勝回収率は108%となっています。急激に成績が良化していることもあってか、実力を過小評価されている印象。今後も目が離せません。

M ミステリーウェイの次走以降も楽しみですね。

伊吹 どこを目標にするのかはわかりませんが、こういう脚質の馬ですし、常に一発を警戒しておきたいところ。GIIを勝ったとはいえ、今回のアルゼンチン共和国杯はハンデキャップ競走であり、人気もなかったわけですから、マークされるような立場になることはしばらくないでしょう。次の狙い時を逃すことがないよう、ここ数戦のパフォーマンスをしっかり復習しておこうと思います。

M 今週の日曜京都メインレースは、さまざまな世代の有力馬が一堂に会する下半期の牝馬チャンピオン決定戦、エリザベス女王杯。昨年は単勝オッズ9.5倍(3番人気)のスタニングローズが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ41.2倍(12番人気)のラヴェルが2着、単勝オッズ8.7倍(2番人気)のホールネスが3着という結果で、3連単27万8100円の好配当決着。今年も伏兵の台頭を警戒しておくべきでしょうか。

伊吹 過去10年のエリザベス女王杯における3連単の配当を振り返ってみると、平均値こそ43万206円ですが、中央値は9万1955円。2021年に339万3960円の高額配当が飛び出している一方で、堅めの決着となった年も少なくありません。

M とはいえ、過去10年の3着以内馬30頭中9頭は単勝7番人気以下だった馬。人気薄の馬もしっかりチェックしておいた方が良さそうです。

伊吹 過去10年の単勝人気順別成績をより詳しく見てみると、単勝4番人気から単勝5番人気の馬は2015年以降[2-3-1-14](3着内率30.0%)、単勝6番人気から単勝12番人気の馬は2015年以降[2-7-1-60](3着内率14.3%)、単勝13番人気以下の馬は2015年以降[0-0-0-51](3着内率0.0%)となっていました。超人気薄の馬はあまりおすすめできませんが、多少なりとも魅力を感じる馬に妙味あるオッズがついていたら、積極的に狙って良いのではないかと思います。

M そんなエリザベス女王杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シンリョクカです。

伊吹 話の流れ的にもちょうど良い塩梅の馬を挙げてきましたね。単勝二桁人気クラスの立場で臨むことになるかもしれませんが、魅力を感じている方はそれなりにいるはず。

M シンリョクカは5歳馬。昨年の新潟記念を勝っているうえ、デビュー2戦目の阪神JFで2着となった実績もあります。昨年のエリザベス女王杯では、勝ち馬スタニングローズと0.5秒差、2着馬ラヴェルと0.1秒差の4着に健闘。しばらく馬券に絡めておらず、さらに注目度が落ちそうな今回は絶好の狙い目かもしれません。

伊吹 2走前のヴィクトリアマイルも、6着どまりだったとはいえ勝ったアスコリピチェーノとの差はわずか0.2秒。展開を考えれば大健闘と言って良いでしょう。衰えを心配する必要はなさそうですし、どうやらAiエスケープもそう考えている模様。この見立てを踏まえたうえで、レースの傾向とこの馬のプロフィールを見比べていきたいと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 まずは直近のパフォーマンスを素直に評価したいところ。2020年以降の3着以内馬15頭中13頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.5秒以内でした。

M なるほど。大敗直後の馬は強調できませんね。

伊吹 おっしゃる通り。今年も前走好走馬を重視するべきでしょう。

M シンリョクカは前走の新潟記念で4着に敗れてしまったものの、勝ち馬シランケドとの差はわずか0.2秒。この条件は問題なくクリアしています。

伊吹 あとは年明け以降にどんなレースを選択してきたかもチェックしておいた方が良さそう。同じく2020年以降の3着以内馬15頭中10頭は、同年に今回と同じ競馬場のレースで7着以内となった経験がある馬でした。

M 今年の場合は京都のレースにおける実績が明暗を分けそうです。

伊吹 なお、“同年の、今回と同じ競馬場のレース”において7着以内となった経験がなかったにもかかわらず3着以内となった5頭のうち4頭は、前走の条件がGI・GII、かつ前走の上がり3ハロンタイム順位が2位以内だった馬。前走が好内容だった実績上位の差し馬でない限り、京都のレースを積極的に使ってこなかった馬は評価を下げるべきでしょう。

M シンリョクカは今年に入ってから京都のレースを走っていないうえ、前走の条件がGIII、かつ前走の上がり3ハロンタイム順位が8位。残念ながら、この条件はクリアできていません。

伊吹 さらに、同じく2020年以降はノーザンファーム生産馬が比較的優秀な成績を収めています。

M 出走数が多いとはいえ、しっかり結果を残しているあたりはさすがですね。

伊吹 一方、生産者がノーザンファーム以外、かつ出走数が11戦以上の馬は2020年以降[1-1-0-34](3着内率5.6%)でした。今年もノーザンファーム生産馬とキャリアの浅い馬が中心と見るべきでしょう。

M シンリョクカは下河辺牧場の生産馬で、キャリア16戦。こちらの条件にも引っ掛かっています。

伊吹 今のところ、私は他の馬を中心とした馬券で勝負するつもりです。もっとも、能力やコース適性の高さは証明済みですし、超人気薄なのであれば無理に嫌う必要はありませんよね。他ならぬAiエスケープが有力と見ているわけですから、この馬から大穴を狙ってみるのもひとつの手でしょう。

netkeibaアプリで続きを読む

このまま続きを読む

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

関連情報

新着コラム

コラムを探す