2025年11月11日(火) 12:00
■前回まで
新冠の武田牧場で生まれたハイセイコーは大井の伊藤正美厩舎に入厩した。初陣は3歳時の1972年7月12日、大井ダート1000mの未出走戦。辻野豊を背に2着馬を8馬身突き放し、驚異的なレコードタイムで圧勝した。(馬齢は旧馬齢)
ハイセイコーの初陣のゴールはどよめきに包まれていた。あまりの強さに、観客は声を上げるのも忘れていたのだ。勝ちタイムはレコードの59秒4。
それまで大井ダート1000mのレコードを保持していたのは南関東で史上初の三冠馬となったヒカルタカイであった。同馬は古馬になると中央に移籍し、天皇賞(春)で2着馬に2秒8という八大競走史上最大の着差をつけて優勝。さらに次戦の宝塚記念をレコードで制した名馬である。
ヒカルタカイが大井のダート1000mでレコードを記録したのは、ハイセイコーのデビュー戦から遡ること6年、1966年7月16日のことだった。タイムは1分0秒2。1分の壁はまず破られないと言われていたのだが、ハイセイコーは、まったく追われることなくコンマ8秒も更新してしまったのだ。
前評判どおりの「怪物」だった。
ハイセイコーのデビュー戦に騎乗した辻野豊は、自分が上手く乗ったとも、下手に乗ったとも思っていなかった。ただ・・・
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島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。「Number」「優駿」「うまレター」ほかに寄稿。著書に『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ブリーダーズ・ロマン』。「優駿」に実録小説「一代の女傑 日本初の女性オーナーブリーダー・沖崎エイ物語」を連載中。 関連サイト:島田明宏Web事務所
コラム
【ハイセイコー物語】初陣/第5話
【ハイセイコー物語】アクシデント/第4話
【ハイセイコー物語】入厩/第3話
秋華賞に関わる一族
【ハイセイコー物語】野武士 /第2話
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