米・フレッシュマンサイアー争い 上位にはコントレイルの近親も

2025年11月19日(水) 12:00

首位は「種付け料3万ドル」からの巻き返し

 今週のこのコラムは、アメリカにおける今年のフレッシュマンサイアー・ランキングの現状をご紹介したい。

 今年の2歳が初年度産駒ということは、種牡馬入りしたのは2022年である。この年、アメリカでスタッドインした新種牡馬で、種付け料が最も高かったのは、ダーレー・アメリカにて7万5千ドルで供用されたエッセンシャルクオリティ(父タピット)だった。ゴドルフィンによる自家生産馬で、ブラッド・コックス厩舎からデビューした同馬は、2歳時のBCジュベナイル、3歳時のトラヴァーズSなど通算で4つのG1を制覇。2歳時、3歳時と2年連続でエクリプス賞のチャンピオンホースに選出され、現役を退いている。おばに米2歳牝馬チャンピオン・フォークロアがいて、すなわち日本のコントレイルとも近親にあたるという牝系も優秀で、種牡馬としての期待が非常に高かったのも当然だった。

 11月17日現在、エッセンシャルクオリティ産駒は北米で132万1671ドルの賞金を収得し(The Blood-Horseの集計)、フレッシュマンサイアー・ランキングの2位につけているから、まずまずの成績を残していると言えよう。アケダクト競馬場のLRナシュアS(d8F)を含めて2勝しているマイワールド(セン2)が現段階での出世頭で、重賞勝ち馬はまだ出ていない。

 22年にアメリカでスタッドインした新種牡馬で、2番目に種付け料が高かったのが、ヒルンデイルにいて5万ドルで供用されたシャーラタン(父スパイツタウン)だった。

 キーンランド・セプテンバーにて70万ドルで購買され、ボブ・バファート厩舎の一員となった同馬。3歳2月にサンタアニタパーク競馬場のメイドン(d6F)でデビューし、ここを5.3/4馬身差で制すると、続くサンタアニタパーク競馬場の一般戦(d8F)も10.1/4馬身差で圧勝。3戦目となったオークローンパーク競馬場のG1アーカンソーダービー(d9F、分割1)も6馬身差で制し、3連勝でG1制覇を果たした。その後、球節の骨片が飛んでいるのがわかり、摘出手術を受け8か月の戦線離脱を余儀なくされたが、復帰戦となったサンタアニタ競馬場のG1マリブS(d7F)を4.1/2馬身差で制して4連勝。4歳シーズンの初戦となったG1サウジC(d1800m)でミシュリフの2着に敗れて連勝がストップ。これが現役最後の1戦となり、通算5戦4勝の成績で種牡馬入りした。

 その圧倒的スピードは魅力的で、関係者の人気も高く、24年の1歳市場に登場したシャーラタン初年度産駒の平均価格は24万8627ドルと、エッセンシャルクオリティの18万0591ドルを大きく上回り、マーケットの評価も上々であった。

 ところが11月17日現在、シャーラタンはフレッシュマンサイアー・ランキングで第8位と、期待が大きかった割には出遅れている。41頭がデビューしたうち、12頭が勝ちあがったが、ブラックタイプを獲得した馬は出ていない。勝ち上がった馬たちにしても、使われて2戦目以降に初勝利をあげる馬が少なくないことも、いささか想定に反している点かもしれない。

 もっとも、種牡馬の初年度産駒の動き方が、予測に反した例などは、古今東西枚挙に暇がなく、まだしばらくは推移を見ていく必要がありそうだ。

 そんな中、11月17日現在で産駒が229万8393ドルを収得し、フレッシュマンサイアー・ランキングの首位を独走しているのが、スペンドスリフト・ファームで供用されているヤウポン(父アンクルモー)だ。

 G2デルマーダービー(芝9F)2着、G2トワイライトダービー(芝9F)2着などの成績を残したソーヤーズヒルの半弟にあたり、キーンランド・セプテンバーにて35万ドルでピンフックされた同馬。ファシグティプトン・ガルフストリーム2歳セールに上場されるも、48万5千ドルで主取りになり、仕切り直しとなったOBSジューン2歳セールにて22万5千ドルという、1歳時の値段より10万ドル以上低い価格で購買されて、スティーブン・アスムッセン厩舎の一員となった。マーケットでは、シビアな評価を受けたということである。

 デビューを果たしたのは、セールでの購買から1年が経過した3歳6月で、チャーチルダウンズ競馬場のメイドン(d6F)をハナ差で制してデビュー勝ち。続くサラトガ競馬場の一般戦(d6F)を3.3/4馬身差で制し連勝を飾ると、陣営は早くも重賞参戦を決断。これに応えてヤウポンは、サラトガ競馬場のG2アムステルダムS(d6F)を2馬身差で、ピムリコ競馬場のG3チックラングS(d6F)を4馬身差で制し、無敗の快進撃を続けた。

 続くG1BCスプリント(d6F)で8着に敗れて連勝がストップ。4歳初戦となったG1ドバイゴールデンシャヒーン(d1200m)も8着に敗れたが、帰国後は、ピムリコ競馬場の特別ライトザフューズS(d6F)、サラトガ競馬場のG1フォアゴーS(d7F)を連勝。8戦6勝の成績をもって現役を退き、初年度(22年)の種付け料は3万ドルが設定された。

 24年のイヤリングセールに登場した初年度産駒の平均価格は16万5349ドルだったから、マーケットの評判は悪くなかった。

 2歳戦が始まると、ヤウポン産駒は仕上がり早の特性を存分に発揮。ここまでデビューした産駒数の65頭というのは、フレッシュマンサイアーの中では断トツだし、勝ち上がり数の24頭もトップ。そんな中から、5.3/4馬身差で制したフィンガーレイクス競馬場の特別ニューヨークブリーダーズフューチュリティ(d6F)を含めて3戦3勝のアークティックビースト(牡2)や、6馬身差で制したアケダクト競馬場の特別メイドオブザミストS(d8F)を含めて2戦2勝のレットミーカウントザウェイズ(牝2)らが登場。今後への期待が高まっている。

 スペンドスリフト・ファームからは、同馬の26年種付け料が6万ドルに上がることが、既に発表されている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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