2025年12月01日(月) 18:00
単勝オッズ6.2倍(4番人気)のカランダガンが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週はジャパンCが行われ、単勝オッズ6.2倍(4番人気)のカランダガンが優勝を果たしました。
伊吹 お見事と言うほかありませんね。五分のスタートを決めたものの、序盤の先行争いには加わらず、中団馬群の中を進みながら1コーナーへ。2コーナーからはマスカレードボール(2着)のすぐ後ろ、ダノンデサイル(3着)のすぐ外につけ、この2頭をマークするような形で向正面を通過しています。ゴール前の直線に入ると大外へ持ち出し、すぐ内のマスカレードボールと併走しながら先行勢を急追。残り200m地点のあたりで先に抜け出しかけていたクロワデュノール(4着)をかわすと、その後は2頭による一進一退のマッチレースとなりましたが、決勝線の手前でカランダガンがわずかに競り勝ち、アタマ差だけ先着しました。マスカレードボールのレースぶりもほぼ完璧と言えるものだっただけに、これを捻じ伏せたカランダガンの強さやM.バルザローナ騎手の素晴らしい手綱捌きがより際立った印象。走破タイムも芝2400mのJRAレコードとなる2分20秒3でしたし、レース史に残る名勝負と言って良いのではないでしょうか。
M カランダガンは3走前のサンクルー大賞、2走前のキングジョージVI世&クイーンエリザベスS、前走の英チャンピオンSに続く自身4度目、4戦連続のGI制覇。外国調教馬によるジャパンC制覇は2005年のアルカセット以来で、実に20年ぶりです。
伊吹 外国調教馬が馬券に絡んだのも2006年3着のウィジャボード以来。国外のホースマンからするといろいろな意味で攻略しにくいレースだったと思うのですが、そういったイメージがこの勝利によって変わってくるかもしれません。なお、カランダガンは今年の指定外国競走を勝っている馬なので、1着賞金(5億円)に加えて300万US$(約4億7000万円)の報奨金を獲得しました。ちなみに、来年からはこの制度が見直され、ジャパンCの優勝馬は最大で500万US$(約7億8000万円)の報奨金を受け取ることも可能に。少なくとも賞金面に関して言えばかなりの魅力があるレースですし、勝機があることもカランダガンが証明してくれたわけですから、これをきっかけとして世界各国のトップホースが集う一戦になってくれれば良いなと思います。
M カランダガンは4歳のセン馬。カルティエ賞年度代表馬のタイトルを獲得するなど、既にレジェンドクラスの成績を収めていますが、繁殖入りの選択肢がないだけに、今後も競走馬として更なる活躍を見せてくれるのではないでしょうか。
伊吹 日本への遠征が成功したうえ、今年のドバイシーマクラシックでもダノンデサイルの2着に健闘。輸送を苦にするタイプではありませんよね。また、初めての勝利を収めたデビュー2戦目はオールウェザーのコースが舞台。ダートのレースを問題なくこなす可能性もありそうです。陣営の目標設定を含め、今後もその動向をしっかりチェックしておきたいと思います。
M 今週の日曜中京メインレースは、下半期のダート王決定戦と位置付けられている一戦、チャンピオンズC。昨年は単勝オッズ2.2倍(1番人気)のレモンポップが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ5.5倍(2番人気)のウィルソンテソーロが2着に、単勝オッズ42.6倍(9番人気)のドゥラエレーデが3着に食い込み、3連単の配当は1万8050円どまり。堅めの決着をイメージしておいた方が良いのでしょうか。
伊吹 2023年のチャンピオンズCも1着レモンポップ、2着ウィルソンテソーロ、3着ドゥラエレーデという結果で、昨年とまったく同じ組み合わせだったわけですが、当時は190万2720円の高額配当決着。過去10年のチャンピオンズCにおける3連単の配当を見ても、平均値は28万6092円、中央値は8万3670円です。堅く収まった年もあるとはいえ、荒れにくいレースではありません。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、3着以内馬30頭のうち10頭は単勝7番人気以下。伏兵の一発を警戒しておいた方が良さそうですね。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4番人気から単勝10番人気の馬は2015年以降[3-2-7-58](3着内率17.1%)、単勝11番人気以下の馬は2015年以降[1-1-1-53](3着内率5.4%)となっていました。少なくとも一頭くらいは中位人気や下位人気の馬が馬券に絡んでくるという想定で買い目を組むべきだと思います。
M そんなチャンピオンズCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ペプチドナイルです。
伊吹 話の流れ的にもちょうど良いところを挙げてきましたね。実績上位ではありますが、今回はかなり人気を落としそう。
M ペプチドナイルは2024年のフェブラリーSを制した実績があるGIウイナー。2走前の南部杯でも3着に食い込んでいます。もっとも、前走の武蔵野Sは9着どまり。7歳馬ですし、上積みは期待しづらいと見ている方が多いのではないでしょうか。
伊吹 とはいえ、昨年のチャンピオンズCは優勝馬レモンポップと0.4秒差の5着。このレースが合わないということはなさそうですから、注目度が下がるようであれば絶好の狙い目かもしれません。Aiエスケープが有力と見ていることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からペプチドナイルの好走確率を見積もっていきたいと思います。
M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?
伊吹 近年のチャンピオンズCは血統が明暗を分けている印象。2020年以降の3着以内馬15頭中9頭は、ミスタープロスペクター系種牡馬の産駒でした。
M 父にミスタープロスペクター系種牡馬を持つ馬は好走率も優秀ですね。
伊吹 一方、父がミスタープロスペクター系以外の種牡馬、かつ前走のレースがJBCクラシック以外だった馬は2020年以降[0-1-1-40](3着内率4.8%)。このレースと相性が良いミスタープロスペクター系種牡馬の産駒と、古馬ダート中長距離路線の王道を歩んできた馬に注目するべきレースと言えます。
M ペプチドナイルの父はミスタープロスペクター系に属するキングカメハメハ。この点は強調材料のひとつと見て良いでしょう。
伊吹 あとは臨戦過程も重要なファクター。同じく2020年以降の3着以内馬15頭は、いずれも前走との間隔が中3週から中10週でした。
M なるほど。適度なレース間隔で臨む馬を重視したいところですね。
伊吹 おっしゃる通り。前走との間隔が詰まり過ぎている馬や、その逆に休養を挟んで臨む馬は強調できません。
M ペプチドナイルは前走の武蔵野Sから中2週。残念ながらこの条件に引っ掛かっています。
伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬15頭中10頭は、ビッグレースからの直行組でした。
M 前走がGI・JpnIのレースでなかった馬は過信禁物、と。
伊吹 ちなみに、前走の条件がGI・JpnI以外、かつ生産者がノーザンファーム以外の馬は2020年以降[0-0-2-33](3着内率5.7%)。ノーザンファーム生産馬でない限り、GIIやGIIIをステップに臨む馬は疑ってかかるべきでしょう。
M ペプチドナイルは前走の武蔵野SがGIIIで、生産者は杵臼牧場。先程触れた間隔を含め、やや不安の残る臨戦過程です。
伊吹 私は思い切って無印にする予定でした。怖い一頭ではあるものの、この辺までシルシを回すと点数が多くなり過ぎてしまいますからね。ただ、オッズ的には狙い頃ですし、Aiエスケープの評価が高い点は気になるところ。レースの傾向をあまり気にせずこの馬から勝負するのもひとつの手でしょう。
このまま続きを読む
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
伊吹雅也「究極のAI予想!」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
特別登録
チャンピオンズC
予想オッズ
チャンピオンズCの人気をチェック!
特集
チャンピオンズCを完全攻略!
コラム
厩舎初のJRAダートGI制覇へ! シックスペンス、ダート転向の“意図と自信”
ニュース
【チャンピオンズC想定騎手】ルクソールカフェはジェルー騎手、ダブルハートボンドは坂井瑠星騎手
競輪
競輪を気軽に楽しもう!全レース出走表・競輪予想、ニュース、コラム、選手データベースなど。