宝塚記念で“豊マジック”炸裂の武豊騎手 見事な騎乗、レース後の名言全てに感激しました!

2025年07月01日(火) 12:00

 上半期を締めくくる、ファンの夢を乗せて走るグランプリ・宝塚記念。夢を乗せて逃げ切り勝ちを収めたメイショウタバル号と武豊騎手おめでとうございます。また、石橋守調教師をはじめ陣営の皆様もおめでとうございます。

 レース後の武豊騎手のコメントにあった「馬が繋いでくれた人の縁、人が繋いでくれた馬の縁」。武豊騎手の騎手人生そのものが表された名言だと思い感動の思いでいっぱいです。この一戦を生観戦できたことに改めて感激し震えました。競馬の歴史をたどれば、石橋調教師と武豊騎手と松本オーナーとのご縁がずっと続いていたんだなぁと思い、あの名言が神言霊だと僕の脳と心に響きました。

日々是好日

▲メイショウタバルが宝塚記念を制覇(c)netkeiba

 あれだけ引っかかる馬で本来の力を出し切るのはとっても難しい業だと思います。しかしそれを、得意の逃げで成し遂げてしまうのはまさに“豊マジック”です。1000mを1分で走ることが、馬の疲れを残さない理想の走りと言われています。

 豊騎手の体内時計は、凄く正確です。以前トレセンで、豊騎手に「今何時ごろですか?」とお聞きすると「8時10分に調教したから8時40分くらいかな」と答えてくれました。時計を見ると時差はほぼなし。さすがだなと思いました。

 僕も競馬学校の卒業試験の時、1000mを1分で走る試験があったのですが、0.2秒くらい早かったような記憶があります。体内時計の訓練をしっかり受けていましたが、今もなかなか難しく守れていませんね。

 石橋先生と言えばメイショウサムソン号での日本ダービー制覇を思い出します。皐月賞と合わせて見事に二冠を達成。名コンビでしたね。

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▲石橋師とメイショウサムソンの名コンビ(撮影:下野雄規)

 豊騎手はコメントの中で「涙が出そうになるくらいうれしいです」とおっしゃっていました。父ゴールドシップとの親子制覇、宝塚記念歴代最多勝となる5勝目、石橋厩舎の初GI勝利など記録づくしの宝塚記念となり、競馬場は熱気ムンムンでした。

 私も現役の時に経験ありますが、勝たせるペースで走らせるのはとっても難しい技です。フジノプライアムという馬で東京競馬場で騎乗の時、レース途中から引っかかり逃げるレースになりました。レース後、そのレースを見た助手さんがこのままでは競走馬としてだめになってしまうと思い、毎日乗り込み調教をつけて、人との信頼関係をつくってくれました。

 次の中京競馬場でのレースでは、スタートからきちんと折り合い3コーナーあたりから仕掛けるとそのままゴール板を突き抜けました。馬の基本をしっかり持つ助手さん方のおかげです。

 レースで走っている馬の調教をやり直すのは、とっても難しいことです。時間もかなりかかる作業を丁寧に調教してくださる助手さんの力は、凄いと思います。こうした方々の努力のおかげで、安心してレースに乗ることができます。僕もフジノプライアム勝たせることができ、馬主さんも中京の方だったので一緒にお祝いしてくださり嬉しかったです。

 そんな宝塚記念の1週前に行われた安田記念は、ジャンタルマンタル号が優勝。3年連続でのマイルGI制覇も素晴らしいです。陣営の皆様おめでとうございます。

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▲ジャンタルマンタルが安田記念を制覇(撮影:下野雄規)

 さて6月3日に、阪神競馬場で引退競走馬支援イベント・サンクスホースデイが開催されました。角居元調教師やTCCのオーナー山本さんも参加され、僕もブースにボランティアで参加させていただきました。ブースではパネルディスカッションやグッズの販売もありました。

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▲ブースは賑わいを見せていました

 能登で引退馬支援に携わる角居元調教師は「イベントを始めて10年以上になりますが、大きな活動になってきて嬉しいです。協力体制が整ってきました」と感謝の気持ちを述べられていました。始められた頃に僕も珠洲市に行き、馬に乗ったり子供たちと馬と一緒に海岸のごみ拾いをして過ごしたことを思い出しました。

 珠洲市は地震で大きな被害を受けて今も奮闘していると思うので、お手伝いできたらいいなぁと思い「また呼んでください」とお願いしたところ、「また手伝ってな」と言っていただきました。珠洲市は、海岸がとってもきれいな街で、お魚もお米も美味しいところです。復興支援も引退競走馬支援も続けていきたいですね。みなさんの力が大きな支援になります。

 そして最終レース終了後、酒井学騎手、高田潤騎手、河原田菜々騎手も参加してチャリティオークションが行われました。横山典弘騎手が出品して下さった菊花賞勝利時の鞍やレイが落札されるなど大きな話題を呼びました。沢山の方が参加し、協力してくださり大きな成果を上げることができました。収益は引退競走馬のために使わせていただきます。馬の一生は短いので競走馬として引退してからリトレーニングしてくれる牧場が出来れば、馬たちも安心して余生を送れると思います。

日々是好日

▲オークション後に記念撮影

 僕の愛馬、オースミコスモ号も乗馬を卒業してから北海道の浦河で余生を過ごし、22歳で昨年天国へ旅立ちました。3年前に会いに行き広い牧場でゆったり元気に過ごしているのを見たときはうれしかったです。「僕のこと覚えてるか?」「うんうん」と言ってもらったように思いました。もう一度行きたいと思いながら行けなかったのが残念でした。

 馬も人も現役引退後、余生を過ごす場所があるといいなぁと思います。それまで、しっかり生きる力を活きるにかえて、障がい者乗馬を諦めずに頑張ります。強化選手に選考され、来年の世界選手権に向けての海外遠征も多くなってきました。

 学業の方では、高校3年生になり教科も難しくなってきました。今まさに政治・経済を勉強中で7月5日からは前期考査も始まります。また同時に、就職か進学かの選択決定も始まっています。高次脳機能障害の複雑な脳で懸命に考え、混乱中です。誰かアドバイスしてください(悲鳴)。

オカン 競馬場へ行きいろいろ体験することも多く騎手時代には経験できなかったことを学んでいるようだが、記憶に残してほしいです。記憶にも記録にも残らないのではもったいない。せっかくの強化選手選考を生かして、記憶と記録に挑んでください。高校生活も楽しみながら卒業できることを願うばかりです。がんばれ! 息子よ!

 7月4日には、母校へ行き、学生に「諦めずに挑む決意」を話しに行きます。講演活動ですが、若いパワーを頂いて帰れたらいいですね。こんな機会を作ってくださった学生に感謝です。

 つねかつこと常石勝義&オカン

(文中敬称略、次回の更新は8/1(木)を予定しています)

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常石勝義

1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。

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