2022年03月03日(木) 12:01
地方競馬を見つめ続けてきたキャスター・荘司典子が“ばんえい競馬”を熱く語る!
競馬記者、元ジョッキー、アナウンサー、タレント、お笑い芸人など各界の競馬好きによって構成される「地方競馬アンバサダー」が思い思いのスタイルで楽しむ、地方競馬の魅力を隔週で発信!
全国各地で日々繰り広げられている地方競馬。その中に帯広競馬場で行われている“世界で唯一の競馬・ばんえい競馬”が存在していることは日本の競馬をより奥深いものにしています。
サラブレッドの競馬を見慣れていると「何これ?」「どうなっているの?」と様々な興味が湧きまくる、ばんえい競馬の魅力をご紹介しましょう。
第50回ばんえいダービー (c)Furlong
およそ1トンの雄大な馬体を持つ重種馬たちが鉄のソリを曳き、力とスピードで着順を競う競馬。
そのルーツは北海道の開拓時代を支えた農耕馬たちで、車も重機も無かった時代に、人々とともに原野を切り開いた馬たちの力比べから発祥しています。
ばんえい競馬のゴールが鼻先ではなくソリの後端で判定されるのは、「荷物をきっちり最後まで運ぶ」というそのルーツに由来すると知ると、納得しますね。
コースは直線200mのセパレートコースでフルゲート10頭。途中、高さ1mの第1障害と高さ1.6mの第2障害を越えてゴールを競います。
帯広競馬場コース図
ばんえい競馬を見始めた方がまず「おやっ?」と思うのは途中で馬が止まることではないでしょうか。なぜ止まるのか?それを例えるならこういうことです。
人間がすごく重い荷物を持って誰がいちばん先にゴールに届けることが出来るか競っている、しかも途中に坂が2回もある。その場合、自分の余力と進むスピードを考慮して、道中で休憩して息を整え「いかにトータルで早く運んで結果を出すか」と考えますよね。つまり自分の馬の状態とライバル馬の出方を見ながら、「ソリを曳いて進む」と「止めて休む」のバランスを考えて勝負をしているんです。
この駆け引きこそ、ばんえい競馬の騎手の腕の見せ所で、この点を理解するとレースを非常に面白く観戦することができます。
ちなみに第2障害を下りてからゴールまでは、騎手の意思で止めてはいけないというルールがあります。
つまり第1障害と第2障害の間で止まるのは騎手の戦略で、【刻む(きざむ)】と表現し、第2障害から先で止まるのは馬自身が疲れて止まってしまう事象で【詰まる(つまる)】と言います。その違いに注目してレース実況をぜひ聞いてみてください。
これを踏まえて「おお、阿部騎手、第2障害の前に刻んでいるな」とか「ああ〜メムロボブサップが詰まった」などと表現できれば、もうあなたはばんえい競馬の達人?!
馬場状態は馬場水分のパーセントが発表されます。
水分量が少ないとソリが重くなるので【重馬場(おもばば)】、水分量が多いとソリが軽くなるので【軽馬場(かるばば)】と表現。馬場のイメージ的にはサラブレッドの場合と逆になりますね。
軽馬場だとスピードタイプの馬が、重馬場だとパワータイプの馬が有利。雪の中での競馬になると積雪でソリの滑りが良く、ノンストップでゴールすることもあって、とにかく水分量を読むことは大事。
帯広競馬場の同じコースで常に行われている競馬ですが、天候・馬場水分・斤量差など様々な要因で日々変化しているので、全く飽きることはありません。
逃げ・先行・差し馬など脚質によって馬の個性があるのはサラブレッドのレースと同じ。 障害の上手・下手、障害を下りてからの脚色など、見慣れてくれば“予想のファクター”も様々で、知れば知るほど面白く興味が湧いてきます。
2歳でデビューした後、およそ10歳までと現役期間も長く、しかも足元の怪我や事故が少ない競馬なので、レース間隔が短いのもばんえい競馬の魅力。お気に入りの馬を見つけたら長い期間応援することができます。
他にもパドックの見方とか、馬装の美しさとか、ばん馬の血統についてとか、まだまだ語り足りない魅力が盛り沢山です!
何はともあれ皆さん、ぜひぜひ、ばんえい競馬にご注目ください。
競馬好きの方ならハマること間違いなしです!
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