【ヴィクトリアM AI予想】昨年はテンハッピーローズを推奨! 相性の良いAIが指名した注目馬は?

2025年05月12日(月) 18:00

単勝オッズ26.1倍(9番人気)のパンジャタワーが優勝(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

波乱続きというわけではない点に注意したい

AIマスターM(以下、M) 先週はNHKマイルCが行われ、単勝オッズ26.1倍(9番人気)のパンジャタワーが優勝を果たしました。

伊吹 お見事と言うほかありませんね。五分のスタートを決めて流れに乗り、道中は中団の外めを追走。先行勢を射程圏内に入れた絶好のポジションでレースを進め、ゴール前の直線入り口で大外に持ち出しています。好位にいたアドマイヤズーム(14着)らが抜け出しを図る中、残り400m地点を過ぎたところで前の各馬を捕らえ、残り200m地点のあたりで単独先頭に。最後は内から伸びてきたチェルビアット(3着)、マジックサンズ(2着)との追い比べになったものの、逆転を許すことなく押し切りました。結果的に差し馬が上位を占めたとはいえ、ワンテンポ早く仕掛けて後続の追撃を完封したわけですから、着差以上に高く評価できる内容。松山弘平騎手の好判断とパンジャタワーの潜在能力が絶妙に噛み合った、素晴らしい勝利です。

M パンジャタワーはGI初制覇。デビュー2戦目の京王杯2歳Sを勝っている重賞ウイナーですが、2走前の朝日杯FSで12着に、前走のファルコンSで4着に敗れていましたし、上位に食い込む可能性は低いと見ていた方も多いのではないでしょうか。

伊吹 前回の当コラムで指摘した通り、近年のNHKマイルCはディープインパクト系種牡馬やロベルト系種牡馬の産駒が期待を裏切りがち。上位人気馬の大半がこの条件に引っ掛かっていたこともあり、どちらの父系にも属していないタワーオブロンドン産駒のパンジャタワーは面白い存在だと考えていました。もっとも、ここ2戦が少々物足りない内容だったこともあって、結局◎は打てなかったんですよね。3着のチェルビアットも同様の理由で強調できたわけですし、予想の詰めが甘かったと反省しています。

M パンジャタワーは京王杯2歳Sを制した時も単勝オッズ21.0倍(8番人気)だった馬。能力の高さを証明したとはいえ、注目を集めにくいタイプと見て良さそうですから、今後も目が離せませんね。

伊吹 母のクラークスデールは残念ながらレースに出走することなく現役を退いたものの、半兄に2009年の日本ダービーを制したロジユニヴァースがいる良血馬。また、父のタワーオブロンドンは4歳時の秋にスプリンターズSを勝っているので、この馬もまだまだ伸びしろがありそうです。これまでのレースぶりを見る限り、もう少し短い距離やもう少し長い距離も問題なくこなせそう。人気の盲点となっているタイミングを見逃さないよう、引き続きしっかりマークしておきましょう。

M 今週の日曜東京メインレースは、上半期の最強古牝馬決定戦と位置付けられている一戦、ヴィクトリアマイル。昨年は単勝オッズ208.6倍(14番人気)のテンハッピーローズが優勝を果たしました。ちなみに、そのテンハッピーローズはこの週の当コラムでAiエスケープが推奨していた馬。これをきっかけにご愛読いただいている方も多いのではないかと思います。

伊吹 あれからもう一年も経ったんですね。過去10年のヴィクトリアマイルにおける3連単の配当を振り返ってみると、半数の5回は5万円未満。2015年(2070万5810円)、2017年(91万8700円)、そして昨年(91万6640円)と、たびたび印象的な高額配当決着となっていますが、堅く収まった年も少なくありません。

M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、2番人気から3番人気の馬が3着内率15.0%と苦戦している一方で、1番人気馬、4番人気から6番人気の馬はまずまず優秀な成績を収めていました。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4番人気から単勝7番人気の馬は2015年以降[6-3-5-26](3着内率35.0%)、単勝8番人気から単勝12番人気の馬は2015年以降[1-3-1-45](3着内率10.0%)、単勝13番人気以下の馬は2015年以降[1-0-1-50](3着内率5.6%)となっています。人気薄の馬はもちろん、上位人気馬や中位人気馬の中にも妙味ある存在がいそうなので、予想されるオッズとのバランスも意識しながらシルシ打ちや買い目作りを進めていくべきでしょう。

M そんなヴィクトリアマイルでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、クイーンズウォークです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。ある程度の支持は集まると思いますが、人気の中心ということはなさそう。

M クイーンズウォークは4歳馬。昨年のクイーンC、ローズS、そして前走の金鯱賞と、すでに重賞を3勝しています。昨秋以降は2000mのレースばかり使われてきましたが、この距離にも十分な実績がある馬ですし、注目している方も多いのではないでしょうか。

伊吹 特別登録を行った馬のうち、牝馬限定戦を除くJRAのGI・GIIを勝ったことがあるのはこの馬だけ。実績上位の一頭と言って良いかもしれません。Aiエスケープが狙い目と見ていることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 近年は年明け以降の重賞で善戦している差し馬が優勢。2020年以降の3着以内馬15頭中9頭は、同年に13頭立て以上のJRA重賞で出走メンバー中5位以内の上がり3ハロンタイムをマークしていました。

M 昨年以前のレースでしか好走していない馬や、先行力の高さを活かしたいタイプはあまり強調できませんね。

伊吹 ちなみに、この条件をクリアしていなかった馬のうち、“前年以降の、東京の、GIのレース”において1着となった経験もなかった馬は2020年以降[0-1-1-47](3着内率4.1%)。今年は東京のGIを勝ったことのある馬がいないので、前出の傾向をより強く意識するべきでしょう。

M クイーンズウォークは前走の金鯱賞で出走メンバー中2位の上がり3ハロンタイムをマークしているのですが、このレースは10頭立て。厳密に言うとこの条件に引っ掛かっています。

伊吹 あとはコース適性も素直に評価した方が良さそう。同じく2020年以降の3着以内馬15頭中13頭は、“前年以降の、東京の、オープンクラスのレース”において“着順が7着以内、かつ上がり3ハロンタイム順位が5位以内”となった経験のある馬でした。

M 東京の重賞やオープン特別を積極的に使ってこなかった馬は、割り引きが必要ですね。

伊吹 おっしゃる通り。今年の該当馬も思い切って評価を下げるべきでしょう。

M 先程も触れた通り、クイーンズウォークは昨年のクイーンCを勝っている馬で、当時の上がり3ハロンタイムは1位。コース適性に不安はありません。

伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬15頭中14頭は、社台ファーム生産馬とノーザンファーム生産馬でした。

M こちらもはっきりと明暗が分かれています。

伊吹 生産者が社台ファーム・ノーザンファーム以外だったにもかかわらず3着以内となったのは、2024年2着のフィアスプライドのみ。今後も同様の傾向が続きそうです。

M クイーンズウォークはノーザンファーム生産馬。オールクリアとはいかなかったものの、不安要素が比較的少ない一頭と言えるのではないでしょうか。

伊吹 実際、私もそれなりに重いシルシを打つつもりでした。思ったよりも人気にならなさそうな雰囲気ですし、Aiエスケープも有力と見ているのは心強い限り。積極的に狙って良いのではないかと思います。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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