2025年09月29日(月) 18:00
ウインカーネリアンが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週はスプリンターズSが行われ、単勝オッズ50.0倍(11番人気)のウインカーネリアンが優勝を果たしました。
伊吹 ウインカーネリアンはキャリア34戦目、鞍上の三浦皇成騎手も通算127回目のJRAGI騎乗で待望の初勝利。陣営はもちろん、競馬ファンの多くにとっても感慨深い勝利だったのではないでしょうか。大外枠ながらも素晴らしいスタートを決めて飛び出し、道中は逃げたジューンブレア(2着)のすぐ後ろを追走。トウシンマカオ(10着)をはじめとする実績馬にマークされる形となったものの、4コーナーで後続を引き離し、ジューンブレアに並びかけています。残り200m地点を過ぎてもジューンブレアとウインカーネリアンの脚色は衰えず、併走したまま決勝線へ。最後の最後にウインカーネリアンがアタマ差だけ前に出て激戦を制しました。ジューンブレアと武豊騎手のレース運びも完璧だっただけに、これを捻じ伏せたウインカーネリアンの強さがより際立った形。お見事と言うほかありませんね。
M ウインカーネリアンは8歳馬。今年4月のアルクオーツスプリントで2着となるなど、芝短距離路線のトップホースとして長く活躍してきましたが、2023年の東京新聞杯以来となる久々の勝利です。
伊吹 なかなか勝ち切れなかったとはいえ、格の高いレースでも時折素晴らしいパフォーマンスを見せていましたし、ビッグタイトルを奪取できるくらいの潜在能力はもともとあったのだと思います。もちろん、それをこれだけの長期に渡って維持したり、諸々の条件が噛み合ったここでしっかりと出し切ったりできたのは、この馬にしかできない大きな偉業。個性派が輝きを見せた一戦として、長く競馬ファンの記憶に残るのではないでしょうか。
M 今後は未定とのことですが、まだまだ我々を驚かせてくれるかもしれませんね。
伊吹 3歳時の皐月賞で4着に食い込むなど、中距離やマイルのレースにも十分な実績がある馬で、1200mのレースを使ったのは昨年の高松宮記念(4着)が初めて。まだこの路線においては底を見せていないわけですし、仮に使ってくるならば別路線でも面白い存在となりそうです。次の狙い時を的確に察知するべく、これまでのパフォーマンスを復習しながら動向を注視していきたいと思います。
M 今週の日曜東京メインレースは、天皇賞(秋)やマイルCSへと繋がっていく注目のGII、毎日王冠。昨年は単勝オッズ3.5倍(1番人気)のシックスペンスが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ7.4倍(4番人気)のホウオウビスケッツが2着に、単勝オッズ8.3倍(5番人気)のエルトンバローズが3着に食い込んで、3連単の配当は1万7060円。今年も堅めの決着をイメージしておいた方が良いのでしょうか。
伊吹 過去10年の毎日王冠における3連単の配当を振り返ってみると、平均値は1万7328円、中央値は1万1545円。なお2万円超の配当となったのは2017年が最後で、2018年以降の過去7年に限ると、平均値が8013円、中央値が8690円です。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、単勝7番人気以下の馬はほとんど上位に食い込めていません。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気から5番人気の馬は2015年以降[2-9-7-22](3着内率45.0%)、単勝6番人気以下の馬は2015年以降[0-0-3-67](3着内率4.3%)でした。人気薄の馬を狙っても良いと思うのですが、その場合も上位人気馬を安易に軽視してしまわないよう心掛けるべきでしょう。
M そんな毎日王冠でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ディマイザキッドです。
伊吹 面白いところを挙げてきましたね。上位人気グループの一角を占めるということはなさそうですし、場合によってはかなり妙味あるオッズがつきそう。
M ディマイザキッドは4歳馬。3走前のアメジストSを勝ってオープン入りし、前走の函館記念でも勝ち馬と0.4秒差の4着に食い込んでいます。もっとも、まだオープンクラスのレースでは馬券に絡んだことがないうえ、今回は約3か月の休養明け。GIIの今回は厳しい戦いになると見ている方が多いかもしれません。
伊吹 1800mのレースを使うのは3歳時の共同通信杯(4着)以来ですから、そのあたりも不安視されそうですね。それでもなおAiエスケープが有力と見ているのは興味深いところ。この見立てを踏まえたうえで、レースの傾向とこの馬のプロフィールを見比べていきましょう。
M 最大のポイントはどのあたりだと考えていますか?
伊吹 まずは出走数をチェックしておきたいところ。2019年以降の3着以内馬18頭中17頭は、キャリア16戦以内でした。
M なるほど。キャリア17戦以上の馬は強調できませんね。
伊吹 昨年の優勝馬シックスペンスは出走時点でキャリア4戦。出走数が少ない馬ほど信頼できるレースと見るべきでしょう。
M ディマイザキッドはキャリア12戦。特別登録を行った馬のうち、5番目に少ない数字です。
伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価した方が良さそう。同じく2019年以降の3着以内馬18頭中17頭は、前走の着順が4着以内でした。
M こちらもはっきりと明暗が分かれています。
伊吹 前走の着順が5着以下だったにもかかわらず3着以内となったのは、先程も触れた2024年1着のシックスペンスのみ。この条件に引っ掛かっている馬は、思い切って評価を下げた方が良いかもしれません。
M ディマイザキッドは前走の函館記念で4着に健闘。ギリギリではありますが、この条件をクリアしている側の一頭です。
伊吹 さらに、同じく2019年以降の3着以内馬18頭中12頭は、前走で東京のレースを使っていた馬でした。
M 一方、前走で東京以外のレースを使っていた馬は3着内率が13.3%どまり。他場のレースをステップに臨む馬は疑ってかかるべきなのでしょうか。
伊吹 基本的にはそう考えておくべきだと思いますが、前走のコースが東京以外、かつ前走の条件が重賞、かつ前走の出走頭数が14頭以上だった馬は2019年以降[1-1-4-18](3着内率25.0%)とまずまずの成績。多頭数の重賞を経由してきた馬であれば、それほど心配する必要はありません。
M ディマイザキッドの前走、函館記念は函館芝2000mが舞台のGIIIで、出走頭数は14頭。大きな不安要素が見当たりませんし、期待して良さそうですね。
伊吹 もともと私もこの馬には重いシルシを打つつもりでした。実績面が心許ないとはいえ、今年は例年よりも前走好走馬が少ないメンバー構成。十分にチャンスがあると見て良いのではないでしょうか。Aiエスケープも中心視しているのであれば心強い限り。実際のオッズも確認したうえで、どういった形で馬券に絡めるかをじっくり検討したいと思います。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
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