2025年08月11日(月) 18:00
単勝オッズ8.9倍(5番人気)のドンインザムードが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週はレパードSが行われ、単勝オッズ8.9倍(5番人気)のドンインザムードが優勝を果たしました。
伊吹 人馬ともに素晴らしかったですね。最内枠から好スタートを決めてハナ争いに加わり、ジャナドリア(6着)やヒルノハンブルク(3着)を先に行かせる形で3番手のポジションを確保。向正面でこの2頭の外に持ち出し、3コーナーで早くも並びかけています。残り200m地点のあたりからはヒルノハンブルクとの追い比べになりましたが、決勝線の手前で半馬身ほど前へ。最内を突いて伸びてきたルヴァンユニベール(2着)に対してもリードを保ったまま先頭でゴールしました。万全の仕上げで送り出した陣営はもちろん、完璧なレース運びでドンインザムードの潜在能力を引き出した松山弘平騎手にとっても、会心の勝利だったのではないでしょうか。
M ドンインザムードは重賞初制覇。3走前のヒヤシンスS、2走前のUAEダービーでそれぞれ3着となった実績があるものの、2勝クラスの前走で6着に敗れてしまったこともあり、半信半疑だった方も多かったのではないかと思います。
伊吹 前走は単勝オッズ2.1倍(1番人気)の支持を集めながらも勝ち馬に0.6秒差をつけられる完敗。ただ、後続が早めに仕掛けてくる難しい展開でしたし、そもそも国外遠征からの帰国初戦だったわけですから、度外視して良かったのかもしれません。UAEダービーは、最終的にアドマイヤデイトナやHeart Of Honorの粘り腰に屈したとはいえ、ゴール前の直線で一旦先頭に立つなど、着順以上に高く評価できる内容。比較の難しいメンバー構成で、実際に単勝オッズもだいぶ割れていましたから、この馬の実力を信じていた方から見れば絶好の狙い時でしたよね。正直なところ私は疑っていた側のひとりなので、見立ての甘さを反省しているところです。
M レパードSを制したことで、ドンインザムードはJDクラシックへの優先出走権を獲得。今後はダートグレード競走路線においてもかなりの注目を集めることになるでしょう。
伊吹 陣営やジョッキーが右回りでのレースぶりに対して課題を指摘していましたし、実際の戦績を見た印象からも、おそらく現時点においては左回りがベター。大井競馬場で施行されるJDクラシックなど、右回りのコースを舞台としたビッグレースも多いわけですから、そこにどう対応していくかが当面の課題かと思います。もっとも、ドンインザムードはまだキャリア7戦で、ポテンシャルの高さは十分過ぎるほどに証明済み。伸びしろのあるスター候補という、馬券的にも面白い存在ですから、今後も目が離せません。
M 今週の日曜札幌メインレースは、さまざまな世代や路線からトップホースが集う真夏の名物重賞、札幌記念。昨年は単勝オッズ14.5倍(5番人気)のノースブリッジが優勝を果たしました。なお、その2024年は単勝オッズ7.8倍(3番人気)のジオグリフが2着に、単勝オッズ13.4倍(4番人気)のステラヴェローチェが3着に食い込んで、単勝オッズ1.3倍(1番人気)の支持を集めたプログノーシスは4着どまり。波乱含みの一戦と見ておいた方が良いのでしょうか。
伊吹 2024年が3連単8万3130円、2023年も3連単16万8930円の好配当決着だったとはいえ、2018年から2022年の計5回はいずれも3連単の配当が1万円台。堅く収まる年も少なくないレースです。
M 過去10年の札幌記念における単勝人気順別成績を見ても、3着以内馬30頭中26頭は6番人気以内の支持を集めていた馬。超人気薄の馬が上位に食い込んだ例はそれほど多くありませんね。
伊吹 ちなみに、単勝7番人気から単勝9番人気の馬は2015年以降[0-2-1-27](3着内率10.0%)、単勝10番人気以下の馬は2015年以降[0-1-0-50](3着内率2.0%)でした。単勝1番人気馬がしばらく勝ち切れていない点は若干気になるものの、伏兵を積極的に狙っていくべきレースとは言えない印象。上位人気グループの各馬をそれぞれどう評価するかが買い目作りのポイントになってくるかと思います。
M そんな札幌記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ホウオウビスケッツです。
伊吹 今回は人気の中心となりそうな馬を挙げてきましたね。単勝1番人気の立場でレースを迎える可能性すらありそう。
M ホウオウビスケッツは昨年の函館記念を勝っている実績馬。4走前の天皇賞(秋)でも3着に健闘しています。前走の大阪杯は5着どまりでしたが、優勝馬ベラジオオペラとのタイム差はわずか0.4秒。素直に中心視しようと考えている方も多いのではないでしょうか。
伊吹 どちらかと言えば穴党であるAiエスケープがこの馬を挙げてきたということは、今回は妙味ある伏兵が見当たらなかったようですね。この見立ても踏まえたうえで、私はレースの傾向からホウオウビスケッツの信頼度を測っていきたいと思います。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりでしょう?
伊吹 まずは格の高いレースにおける実績をチェックしておきたいところ。2018年以降の3着以内馬21頭中16頭は、“JRAの、2200m未満の、GI・GIIのレース”において2着以内となった経験がある馬でした。
M 今回と同じ2000mか、今回より短い距離のGIやGIIで連対を果たしたことのある馬は、高く評価して良さそうですね。
伊吹 ちなみに、“JRAの、2200m未満の、GI・GIIのレース”において2着以内となった経験がない、かつ“中山の、GI・GIIのレース”において2着以内となった経験がない馬は2018年以降[0-1-0-48](3着内率2.0%)。この条件に引っ掛かっている馬は割り引きが必要だと思います。
M ホウオウビスケッツは2023年のスプリングS、2024年の毎日王冠、2025年の金鯱賞でそれぞれ2着となっている馬。実績や距離適性に不安はありません。
伊吹 あとは臨戦過程も素直に評価した方が良さそう。同じく2018年以降の3着以内馬21頭中18頭は、前走の条件がGIでした。
M ビッグレースからの直行組が優勢、と。
伊吹 前走の条件がGI以外だったにもかかわらず3着以内となった3頭のうち2頭は、前走が鳴尾記念だった馬。昨年までの鳴尾記念は宝塚記念の前哨戦で、今年からは宝塚記念もその前哨戦も施行時期が早まりましたから、GI以外のレースをステップに臨む馬はますます苦戦しそうです。
M 大阪杯から直行してきたホウオウビスケッツにとっては、望ましい状況と言えるのではないでしょうか。
伊吹 さらに、同じく2018年以降の3着以内馬21頭中16頭は、キャリア16戦以内でした。
M こちらも思いのほかはっきりと明暗が分かれています。
伊吹 なお、出走数が17戦以上、かつ前年の札幌記念において5着以内となった経験がない馬は2018年以降[1-1-0-45](3着内率4.3%)。当レース適性の高さを証明している馬でない限り、キャリア17戦以上の馬は強調できません。
M ホウオウビスケッツはキャリア15戦。レースの傾向からも不安要素は皆無と言って良さそうですね。
伊吹 もともと私もこの馬に◎を打つつもりでした。コース替わりはまったく問題ないはずですし、展開に恵まれる可能性も高いのではないでしょうか。Aiエスケープも有力と見ているのであれば心強い限り。少点数で仕留められるよう、他馬の比較に注力したいと思います。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
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