2025年06月01日(日) 12:00
春のGIレースは、外国人騎手の活躍が目立ちましたね。とても丁寧な騎乗で、馬と会話をしながら乗っているように見えただけでなく、なによりみんなポジション取りが上手いなと思いました。
5月25日に行われたオークス。長い距離が未経験の馬も多く、難解なレースでした。スローペースの中、カムニャック号のシュタルケ騎手は馬の手ごたえを信じて内でじっと我慢し、最後の直線で上手く外へ出し追い込みアタマ差の勝利。友道厩舎、陣営の皆様おめでとうございます。またシュタルケ騎手、オークスの最高齢制覇おめでとうございます。惜しくもアタマ差の2着に敗れたアルマヴェローチェ号騎乗の岩田望来騎手も素晴らしかったです。悔しさをバネに、この馬と挑んでください。楽しみにしています。
▲シュタルケ騎手がオークス最高齢勝利騎手に(撮影:下野雄規)
そんななか、今月の僕の注目は“花の12期生”の活躍。やっぱり同期の活躍は感無量ですよ。
新潟大賞典をシリウスコルト号で制覇した古川吉洋騎手、おめでとうございます。最高やな! また、管理する田中勝春調教師も重賞初制覇おめでとうございます。騎手時代の先輩・後輩タッグを組んだ勝利でした。シリウスコルト号の転厩初戦、六甲Sで手綱を任されて初コンビで2着と健闘。手応えをつかみ、続く福島民報杯で田中勝春厩舎の初勝利に貢献しました。「この馬は自分から動いて勝っているから強いよね」と満足気に言えるのは、馬との相性がピッタリな証拠でしょう。
▲先輩・後輩タッグが新潟大賞典を制覇(撮影:小金井邦祥)
「普段から田中先生にお世話になっているので最高です」とレース後語っていた古川騎手。田中さんは、僕が落馬し2年後に東京競馬場へ行ったときにも一番に「大丈夫か? よく来たな」と話しかけて下さったことがあり、僕もその気持ちがよくわかるような気がします。とっても親切で気さくに声をかけてくれる先輩騎手でした。調教師と騎手と馬、三者の信頼関係が深くなるのが、競馬の醍醐味です。
古川騎手もデビューから30年目を迎えるんだよねぇ。ますますホースマンとしての熟練度が増してきたように感じます。これからが楽しみです。改めて田中勝春調教師、陣営の皆様おめでとうございます。
そして、京都ハイジャンプをアンクルブラック号で制覇した高橋亮調教師と高田潤騎手、おめでとうございます。京都のジャンプコースはとっても難しいので見ていても力が入ります。高橋亮調教師は、競馬学校生時代から調教師になりたいと言っていた記憶があります。2013年9月に35歳で厩舎を開業し、調教に関して自分の信念を貫いています。福永祐一調教師とともに活躍が楽しみです。
福永祐一調教師といえば、お父様の名を冠した福永洋一記念が今年で16回目を迎えました。「感謝しかありません」と語る祐一調教師。今年からは地方全国交流レースになり、ますます多くの方からの注目を集めていて素晴らしいです。
同期では、和田竜二騎手もテイエムオペラオーで大活躍し、昨年通算1500勝を達成。今年からは息子の陽希騎手とともに親子で競い合い記録を伸ばしています。細江純子さんも馬体診断を的確にされ、馬券的中率も高くなっていますよね。“花の12期生”は“大輪花の12期生”だよ。みんなからパワーをもらい僕もその一人として頑張ります。
▲和田竜二騎手の1500勝記念のブルゾン
今年は強化選手に選考され、26年8月ドイツ・アーヘンでパラ馬術世界選手権が行われます。いよいよそこに向けての大会が始まってきました。4月はベルギーのワレヘム大会に参加。ベルギーは初めてだったので緊張しましたが、外国の方から「ブラボー」と言ってもらいちょっと嬉しくなりました。ヨーロッパは乗馬大国なので、どこに障害があるのか分からないほど皆さん上手でした。思わず「馬の動きが流れるような演技をしていて上手いなぁ」と見とれてしまいました。
▲ベルギーのワレヘム大会の会場
また、篠宮寿々海先生指導の強化合宿にも参加。手の動きなどをわかりやすく教えていただき、明石乗馬でその通りに騎乗をすると、薫コーチに「その乗り方をしっかり覚えるように」とお言葉をいただきました。
5月16〜18日は、CPEDI3☆GOTEMBA2025に参加。世界選手権を目指しての大会でしたが、大雨が降り馬場コンディションも悪くとても厳しい大会になりました。特に、水たまりを車が通過したときの音に馬が反応し、いつもの平常心ではなくなってしまうので落ち着かせるのに苦労しました。そんな中でしたが、なんとか経路を間違えずに騎乗でき、演技をこなすことができました。2日目は、馬も環境に慣れて上手く演技をしてくれたので1位になりました。しかし、ポイントが低かったのでフリースタイルには出場できず残念でした。
コンビを組んだヴァリアント号はとても賢い馬で、大会慣れもしているのでいつも安心して背中に乗ることができます。ただ、僕は左半身麻痺があるために拳が揺れたり左の脚が上手く使えず、踏ん張れないので騎座から少しずつずれてしまいます。拳が揺れるとハミが取れなくなるので、右手はしっかりひじを曲げ脇腹に付けるように騎乗しようと心がけています。麻痺のある左手は、馬の亀甲の上に置いて馬の動きの邪魔をしない様に乗るのが課題です。
▲御殿場大会の様子
いつもコーチが的確に騎乗スタイルを指示してくれるのですが、なかなか難しいです。片足で立つと震えるんですよね。左手の握力も弱いのでテイクジムで日々トレーニングをしています。まだまだ課題が山積みです。せっかくいただいたチャンスを無駄にしないように1日1つ目標を決めて、実行あるのみです。
例えば歩くとき、左足がつま先歩きになってしまうのですが、気をつければそうならずにきちんと歩けるんですね。「1、2…1、2…」と声をかけながら「あるこーあるこー私は、げんきー♪」のような感じで歩いたらきれいな歩き方になります。実行あるのみです。
古川騎手が言っていた「辞めないでよかった。この1勝が僕にとって、とても大事な忘れられない1勝になる」のように、僕もそう思える瞬間が来るまで挑み続けます。
その裏で、大会参加のために学校も休んでいたのでその分の補習授業を受けてきました。3年生になり勉強も難しくなり、進学か就職かの選択をするように言われました。そこで就職の選択をすると、面接の練習をすることに。競馬学校を受験したときを思い出しました。
5月18日には栗東Sが開催されました。それに伴い、京都競馬場で栗東市観光協会、TCC(引退競走馬支援)、みみの里の協力でゼッケンバック販売がありました。僕が大会で参加できなかったので、母が代理で参加してきてくれました。当日は、栗東市の市長さんがゼッケンバックを購入して下さり、写真も撮らせていただき感謝です。
ファンの方々にもTCCについて興味を持っていただき、ゼッケンバックもたくさん買っていただけたようです。栗東市のピーアールもでき、引退競走馬の理解や興味も持っていただけるよい機会になりました。こうした大きな輪が、今後も広がってくれるといいですね。
▲栗東市の市長さんもブースに来てくださいました
オカン 海外大会が増え経験も多くなってきましたが、思うように騎乗できない難しさがあるようです。毎日の生活の中で体幹や歩き方の訓練をしています。震えはなかなか抑えられないようですが記憶力が改善されてきているようで、海外遠征後の忘れ物がなくなってきました。経路も覚えています。同期の活躍が大きな刺激になりうれしいです。京都競馬場へボランティアに行った際、息子のことを覚えてくれて応援してくれる方がいらして嬉しかったです。その恩返しになるよう、息子よ頑張れ! 最後のチャンスかもしれないよと思って挑んでください。
つねかつこと常石勝義&オカン
(文中敬称略、次回の更新は7/1(火)を予定しています)
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常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。
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