2024年05月18日(土) 18:00
競馬予想と言っても、その方法は人それぞれ。タイム指数や対戦比較など、数々のファクターが存在します。
しかし、その多くが過去の競走成績から導き出すもので、競走経験の少ない若駒が走る「未勝利戦」や全馬が初出走となる「新馬戦」は、苦手とする人も多いかもしれません。
そんな中で、未来を見通すファクターとしてひときわ輝きを放つのが「血統予想」でしょう。
血統予想といえば亀谷敬正氏などが有名ではありますが、今回紹介したいのは新進気鋭の血統予想家「モンジューのひ孫」氏です。
「モンジューのひ孫」氏
何ともセンス溢れるネーミングですが、その由来は曾祖父の名前が「紋重(もんじゅう)」だからというもの。モンジュー自体はご存じの方も多いかと思いますが、まるで競馬との関わりを持つことが宿命だったかのような偶然です。
そんな「モンジューのひ孫」氏が駆使する血統予想は、独自性がある反面、理解が難しい面もあるかと思います。
そこで、少しでも「モンジューのひ孫」氏のことを知ってもらおうと、様々な疑問点をQ&A方式で答えていただきました。興味深い内容となっていますので、血統予想に興味のある方は是非ご一読ください。
──見解で使われている「1/3波」について、意味合い的には「3X+1(3代+1年)」のようですが、読み方は「さんぶんのいちは」で大丈夫でしょうか?
モンジューのひ孫 1/3波(さんぶんのいちは)でいいと思います。3代で1周(循環)とすると、4代目では1/3周、5代目は2/3周となります。数学で用いるラジアンのイメージです。
──「ハリーオンとニールガウは4代周期」とのことですが、これらだけが例外なのでしょうか?
モンジューのひ孫 ジェベルは4代周期で捉えていますが、実用的にはエーピーインディ(母母母母父父ジェベル)の血統解釈に用いる位です。
──例えば、サドラーズウェルズ、ノーザンダンサー、ディープインパクトの場合はどういった解釈になるんでしょうか?
モンジューのひ孫 ノーザンダンサーの様に溢れ返った血は、血統表の特定の座標に限定して捉えます。1/3波ではなく、「母父父ノーザンダンサー群の繁殖馬(の産駒)」といった具合です。逆にこれを定義しなければ、砂スプリンターのエンドスウィープから芝王道路線のスイープトウショウ、アドマイヤムーン、ラインクラフトが出た遺伝現象が腑に落ちない。本質マイラーのサッカーボーイの産駒が菊花賞を得意とした事実は、後のダンスインザダーク産駒の適性と見事に重なる。2頭とも「母父父」にノーザンダンサーの血を備えた種牡馬でした。
現役時代や、直系統のイメージからは結び付きづらい繁殖馬たちを、新たな切り口で捉えるのが「波」のコンセプトです。
サドラーズウェルズは現状ではフォルリの媒介馬として捉えることが多いですが、3代周期に変わりありません。3代周期はあくまでも私が決めた基準であり、長く観察、分析さえすれば、あらゆる繁殖馬に対して他の素数代周期(5、7…)でも新しい発見が出来ると思います。
少なくとも現在私がプロ予想家として活動出来ているので、「3代周期による分析」は効果的と言えるのではないでしょうか。
ディープインパクト産駒はハリーオン4/4波の影響が顕著で、広いコース向き(トニービン産駒と相似)と解釈していました。今後も4代周期で捉える方針です。母父ディープは直仔のイメージを逆手にとって小回りの期待値が高く、好調期の勢いに乗るべき血統群だと思います。
──「母父父ノーザンダンサー群の繁殖馬(の産駒)」のような特殊な例は他にもありますでしょうか? また、ノーザンダンサーの場合は「母父父」で、先の質問でエーピーインディのジェベルは「母母母母父父」でした。これは血が繋がっているであれば、始まりが「何代前」という決まりはないということでしょうか? 「母父父ノーザンダンサー群の繁殖馬(の産駒)」のような固まりを探す際のアプローチ方法などあれば、お教えいただきたいです。
モンジューのひ孫 名馬の血統表は、まるで将棋の名人の盤上に無駄な駒が一枚も無いように、隅々まで行き渡る機能美を感じます。エーピーインディ程の名種牡馬ならば「母母母母父父」を波の始まりと解釈することに抵抗はありません。
実は、エーピーインディを「波」として捉えると、20年以上前に定義したジェベルX/4波と2代スライドする形でよく似ており「もしや?」と推測した通りに6代祖先にジェベルの血を見つけた、というのが本当のところです。仮に1代でもズレがあれば、別の祖先馬に波の起源を求めていました。
「波」はイメージです。
水平線を宇宙から眺めれば曲線であるように、サイアーラインや直系と呼ばれる継承は弧を描いている。野球で打者が変化球の軌道を推測して打つように、遺伝的形質の発現を「周期性」という切り口で読み解く試みが「波」。まずは種牡馬の「母父父」の座標に重さを感じながら血統表を眺めて見て下さい。
<母父父ノーザンダンサー群の繁殖馬>の他では、<母父サンデーサイレンス群の繁殖馬>という解釈が有効だと思います。飽和状態のサンデー血脈も、直仔にあたる媒介馬が牡か牝で印象が大きく異なります。例えば<母父サンデー群の繁殖馬>の産駒は西では阪神芝内回りに強く、今年の大阪杯の1、2着馬も該当。東ではコース形態の近い中山芝よりも東京芝でパフォーマンスを上げる傾向があります。他にもオークスとJCに滅法強いがダービーは勝てない、といった偏りも面白い。また該当馬も多い為、好凡走がシンクロしやすく馬場読みにも活きてきます。
今後は、エピファネイアに代表される<母父父サンデー群の繁殖馬>が増えてくるので、今から意識して観察すれば大きなアドバンテージになる筈です。直系統や繁殖馬の現役時代のイメージを越えて、特定の大レースを席巻する未来は遠くないと思います。
──波の解釈として、一定の期間で対象となる祖先の「特性を引き出す」ということはわかりました。世代の解釈としては、13年周期を基準とした場合それぞれにどういう特徴があるのでしょうか?
モンジューのひ孫 波の基本概念として、「種牡馬の血統座標で最も影響力が大きいのは母父父、及び母父母」と定義すると、その母父父もまた、入れ子構造のように母父父の影響を強く受けていることになる。そうやって辿っていくと、現代のサラブレットの血統に最も影響を与えているのは直系の衰退したマッチェム系のウエストオーストラリアンが真のラスボス(笑)に見えてくる。本当に面白いです。
従って1/3波とは、<3代祖先から繁殖としての資質を大きく受け継いだ種牡馬、及び繁殖牝馬>の産駒、という認識が最もスマートだと思います。1/3波が直接的な遺伝とすると4代周期になって矛盾を孕んでしまいますから。
また、私の予想の見解に頻出するプリンスキロは、2/3波を観察すると新馬や休養明けの期待値が高く実用的ですが、1/3、3/3波は面白くない。恐らくこれはプリンスキロが母父として特に優秀だったことが深く関わっていると推測しています。他に、リファールなどは3/3波を最も多く予想に用います。
最後の質問の答えですが、「波」と「周期的な世代」は別の切り口ですが、扱う適性や特徴は共通しています。 マイナス×プラス=マイナスのように簡単には行きませんが、少なくとも親和性の高い組合せの方が予想の精度が高くなる手応えは感じています。
以下はあくまでも全体像としての一例と割り切って下さい。
1/13 【メイショウサムソン(2003)】<ハリーオン4/4波> ・広いコースに向き、種牡馬として産駒は芝の重の期待値が高い。
2/13 【デアリングタクト(2017)】<プリンスキロ2/3波> ・休養明けの期待値が高く、個々で得意コースが偏る。 ・種牡馬としては、産駒は詰まったローテの好走が目立つ。
3/13 【ディープスカイ(2005)】<ニールガウ1/4波> ・好調期は相手、適性条件を超えての好走が目立つ。 ・繁殖馬(祖父)として、産駒は芝の重の期待値が高い。
4/13 【ブエナビスタ(2006)】 ・学習能力が高い半面、器用貧乏な印象。 ・種牡馬として、産駒は京都芝への適性が高い。 ・特に13年周期による名馬の系譜が美しい。
ニジンスキー(1967) ・カーリアン(1980) ・ビワハイジ(1993) ・ブエナビスタ(2006)
1996年 日本ダービー(1993年産) 1着フサイチコンコルド<父父ニジンスキー(1967)> 2着ダンスインザダーク<母父ニジンスキー(1967)>
5/13 【ステイゴールド(1994)】<カウントフリート1/3波> ・前進気勢に富み、ダートや短距離に強い。 ・種牡馬として産駒は底力に富み、特筆して中山芝のG?レースに強い。
6/13 【スペシャルウィーク(1995)】 <リファール3/3波> ・小回り向きで、詰まったローテに耐性を備える。 ・種牡馬として、フィリーサイアー(牝馬に活躍が偏る)の傾向が強い。 ・繁殖馬(祖父)として、産駒は新馬や休養明けの期待値が高い。
7/13 【アドマイヤベガ(1996)】 ・ペースや仕掛け所など展開に依存しやすい。 ・繁殖馬として、産駒は前進気勢に富み、冬場のレースに強い。
8/13 【アグネスデジタル(1997)】 ・1400m&2000m戦の期待値が高い。 ・繁殖馬(母父)として優れ、距離短縮ローテの期待値が高い。
9/13 【ワンアンドオンリー(2011)】 <ダマスカス1/3波> ・パフォーマンスの振り幅が大きい印象。 ・種牡馬としては、産駒は好調時の信頼性が高い。
10/13 【サンデーサイレンス(1986)】【キタサンブラック(2012)】 <トウルビヨン1/3波> ・京都芝への適性、距離短縮ローテの期待値が高い。 ・種牡馬として、産駒は1400m&2000m戦に向く。
11/13 【ノーザンダンサー(1961)】【ネオユニヴァース(2000)】 <リボー1/3波> ・底力に富み、上りを要するレースに強い。 ・種牡馬として、産駒は展開依存の傾向。
12/13 【キングカメハメハ(2001)】 <ニールガウ3/4波> ・芝の重馬場の期待値が高い。 ・種牡馬として、産駒はパフォーマンスの振り幅が大きい傾向。
13/13 【ディープインパクト(2002)】【サクラバクシンオー(1989)】【シーザリオ(2002)】 <バックパサー2/3波> ・名牝が多く出現、名繁殖となる傾向。 ・繁殖馬として、産駒は新馬や休養明けの期待値が高い。
──「親和性の高い波」についても答えていただきましたが、上記以外で主要どころの「波」はありますでしょうか?
モンジューのひ孫 <親和性の高い波>で結ばれた世代別の適性や特徴が、おおよそ該当します。上記以外ではテューダーミンストレルを意識することが多いです。
<テューダー1/3波> ・芝の重馬場や、札幌の洋芝が得意
<テューダー2/3波> ・開幕週の芝で台頭
<テューダー3/3波> ・スプリント戦に高い適性
──これが最後の質問です。おおよそ10年くらいのスパンで種牡馬だけでなく牝系も盛衰があるように感じます。例えば少し前はスカーレットブーケの牝系の活躍馬が多かったり、レーヴドスカーの産駒が次々に重賞を勝っていたりしましたが、今はそこまで活躍馬がいる印象がない一方、シーザリオの牝系やウインドインハーヘアの牝系の活躍馬が増えている印象があります。「波」という考え方においては父系に焦点を当てた形になっていますが、牝系においても「遺伝は回転」という概念は適用されるのでしょうか?
モンジューのひ孫 飛び飛びの遺伝現象である「波」とは対照的に、牝系の活力は熱の伝導のイメージに近く、必然的にブームは冷める傾向にあると思います。
ダイワスカーレットやレーヴディソールの繁殖成績が振るわないのは父アグネスタキオン由来のところが大きく、逆に、シーザリオの繁栄は父スペシャルウィークを抜きに語れません。牝馬は父の母由来のX染色体を譲り受けるので、牡馬が2代続かない限りは歴史的名牝の系譜が繋がる可能性がある。従って、牝系の盛衰の起点はランダムで配合相手に依存し、名馬の誕生は無数のチャレンジの上に成立していると言えます。
また、種牡馬を媒介した名牝の血は「波」で捉え、産駒の適性や特徴を推測しています。換言すれば、牝系は牡馬の生まれた地点から回転が始まる、というのが私の血統観です。
いかがだったでしょうか?
独創的な血統観がゆえ、見る人によっては難しい内容に感じたかもしれません。
ただ、この血統予想で俺プロを勝ち抜いたということは確かな事実。これからの活躍にも期待したいところです。
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