「人智を超えた大駆け」を見せたテンハッピーローズ 大一番で輝く血統背景とは

2024年05月13日(月) 18:00

血統で振り返るヴィクトリアマイル

【Pick Up】テンハッピーローズ:1着

 1番人気マスクトディーヴァ(3着)、2番人気ナミュール(8着)がスムーズさを欠いた、という事情があったにせよ、14番人気テンハッピーローズの大駆けには驚かされました。

 父エピファネイア、母の父タニノギムレットはいずれもロベルト系。ロベルトは英ダービー馬で、ベンソン&ヘッジスゴールドCではハイペースの逃げに持ち込み、名馬ブリガディアジェラードに生涯唯一の土をつける大金星を挙げました。典型的なムラ駆けタイプで、気が乗らないときはあっさり惨敗するものの、ハマったときには恐るべき力を発揮しました。ロベルトの血は大一番で強い、というのは血統の定型文のひとつです。

 テンハッピーローズはロベルト4×4。それと今回の勝利に因果関係があると証明するのは不可能ですが、そう考えたくなるくらい人智を超えた大駆けでした。エピファネイア産駒のGI勝ち馬は通算5頭目で、2024年はステレンボッシュ(桜花賞)に次いで2頭目です。

血統で振り返る京王杯スプリングC

【Pick Up】ウインマーベル:1着

「アイルハヴアナザー×フジキセキ」の組み合わせはアナザートゥルース(ダイオライト記念、アンタレスS)と同じ。同一種牡馬の芝とダートの代表産駒が同じ組み合わせであるのはレアケースでしょう。この組み合わせは「ラストコーズ≒ミリセント4×5」という相似な血のクロスが生じるためか相性が良く、これまでに12頭出走して8頭が勝ち上がり、連対率32.2%、1走あたりの賞金額488万円という好成績を挙げています。アイルハヴアナザー産駒全体は連対率13.7%、1走あたり118万円なので、明らかなニックスといえるでしょう。

 ウインマーベルはこれで重賞4勝目。アイルハヴアナザー産駒は晩成傾向があるので、さらにタイトルを上積みする可能性があります。

 アイルハヴアナザーは米二冠馬で、新冠町のビッグレッドファームで6年間供用されました。ウインマーベルはその最終世代です。アメリカへ帰国後は5年間供用されたものの、目立った産駒は出せず、昨シーズンを最後に種牡馬を引退しました。後継種牡馬候補のウインマーベルを残せたのは幸いでした。

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【スパイツタウン】

 BCスプリント(米G1・ダ6ハロン)など4つの重賞を制覇。引退後は種牡馬として大成功し、北米種牡馬ランキングでは上位の常連となっています。ヘインズフィールド(ジョッキークラブゴールドC)、ゴールデンチケット(トラヴァーズS)、シャーラタン(アーカンソーダービー)など距離をこなす産駒も珍しくなく、シークアゲイン(ハリウッドダービー)、ロードシャナキル(ジャンプラ賞)のような芝馬も出ています。

 日本ではモズスーパーフレア(高松宮記念)、マテラスカイ(プロキオンS、クラスターC)をはじめスピード型が目立ちます。息子のマニングスは後継種牡馬として成功し、孫のジャッククリストファーも期待を集めています。日本ではマテラスカイとフィレンツェファイアが供用され、いずれも現1歳が初年度産駒です。今後、ダート短距離戦線で勢力を広げていくかもしれません。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「アメリカの芝種牡馬の現状は?」

 2024年の北米芝種牡馬ランキングは、現在パレスマリスが第1位です。といっても、アメリカ繋養時代に送り出したジャンタルマンタル、ノーブルロジャーの日本での賞金が加算された結果です。以下、2位アメリカンファラオ、3位ジャスティファイ、4位ウォーフロント、5位コンスティテューションという順位。

 アメリカンファラオは日本にも大量の産駒が輸入されていますが、リフレイムを除けばそのほとんどがダート向きであり、芝で好成績を挙げるイメージは湧きません。ジャスティファイもオーサムリザルト(エンプレス杯)を筆頭に現在JRAで21勝を挙げていますが、芝は0勝。しかし、ヨーロッパでは何頭かの大物が誕生しています。アメリカの芝種牡馬と日本の芝種牡馬は似て非なるもので、同列には語れません。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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