【茶木太樹調教師】「とにかくポテンシャルの高い馬」桜花賞3着の“末脚自慢”ライトバックとオークスへ!

2024年05月12日(日) 18:01

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▲ライトバックとオークスに挑む茶木太樹調教師を直撃!(撮影:大恵陽子)

桜花賞で鋭い末脚を見せ、3着だったライトバック。それまで見せていた折り合いの難しさを克服してのレースに、茶木太樹調教師は「3コーナーですでにジンとしていました(笑)」と話すほど。それは、厩舎スタッフの日々の努力が報われた瞬間でもありました。

末脚が武器のライトバックにとって、直線が長いオークスはさらなる期待が寄せられます。圧巻の1週前追い切りを終えて、茶木調教師に伺いました。

(取材・文:大恵陽子)

「オークスの方が」と、あと押ししてくれたオーナー

──桜花賞では後方から追い込んで、3/4馬身+クビ差の3着と、あと一歩でした。

茶木 単勝や馬連を買ってくださっていた方には申し訳ないですけど、僕としては大満足の結果でした。というのも、レース内容が良かったんです。桜花賞前から折り合い面がずっとクローズアップされていて、そこさえ上手くいけば最後に伸びることは分かっていました。そういう状況だったので、スタートしてしばらくして後方で折り合っている姿を見て、ジンとしました。ずっと牧場の方と厩舎スタッフが気をつけて取り組んできてくれていたのでね。そこからあとは、ペースや他の馬の動きもあるので勝てればもちろんいいですけど、着順は水物な部分がありますから。レース後、「惜しかったな」と言われましたけど、冷静でした。

──偶然、私のすぐ近くでレースを見てらっしゃいましたけど、白熱のゴール前も声一つ出さず、すごく冷静でしたね。

茶木 どこまで伸びてこられるかなっていう感じで、直線は落ち着いて見ていました。

──調教師合格時から「一番勝ちたいレースは桜花賞」とおっしゃっていて、厩舎GI初出走がライトバックでの桜花賞。兵庫県姫路市出身なので阪神競馬場は地元とも言えますね。

茶木 桜花賞が断トツで好きで、憧れが強いんでしょうね。桜が綺麗な季節で、響きも綺麗で、3歳牝馬は難しさもあるだろう中で調整していく過程も好きなのかもしれません。中学・高校生の時に阪神競馬場のパドックで厩務員さんを見てキラキラ憧れていました。いま、その憧れていた場所に立てていると思うと「夢が叶っているな。頑張ろう」と思えるので、パワースポットでもあります。

──ファン時代から大好きだった桜花賞へは、エルフィンSを勝ったことで出走が実現しました。

茶木 レース間隔が詰まったらテンションが上がってダメになってしまうタイプで、桜花賞に出たいなら3月のチューリップ賞で3着以内がベストかなと思ったんですけど、オーナーに相談したところ「桜花賞に出られなかったら、それでもいいよ」とおっしゃってくださいました。もちろん出走できるに越したことはないですけど「オークスの方が」とおっしゃってくれたので、2月のエルフィンSを選びました。

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▲エルフィンSを制して賞金加算に成功!(c)netkeiba

──それだけテンションは課題の一つなんですね。エルフィンSの前にはゴム製のハミを使っていましたね。

茶木 ガツンと噛みやすくて、頭も上がりやすい馬なんですけど、そのハミだと当たりが優しくて、乗り手のアクションが柔らかくなるので、馬のリアクションも若干少ないように感じます。それでも行きたがったりしますけど、スタッフが上手くフィットさせて乗ってくれています。また、牧場でも様々な工夫やアドバイスをいただいたり、お互いに感じることを伝え合って毎回いい状態でトレセンに戻していただいており、しっかり連携できていることも大きいと思います。

──デビュー前から前向きすぎる面があったんですか?

茶木 ありましたけど、新馬戦を使った後から特にですね。口向きが怪しくなってきて、2戦目のアルテミスSの追い切りでは「ヤバいな」と。やはりアルテミスSでは向正面で口を割って頭を上げてしまいました。それでも最後は脚を伸ばしたので、「やっぱりいい馬だな」と感じましたし、その後に試行錯誤したり、いろんなことを考えました。

──テンションが上がってワーッとなる面と鋭い末脚は表裏一体なのだろうと感じます。

茶木 紙一重なので、そこを消しちゃうとダメだと思っています。折り合い重視の調教をしていますけど、その中でいい面を消さずに上手く調整してほしいなと思っていたら、牧場でもトレセンでもみんながそうやってくれています。

「茶木先生」と気を使われるのは苦手で(苦笑)

──茶木厩舎は今年で開業4年目。先ほどからたびたび「スタッフが上手くやってくれている」という言葉が出ていて、現場に任せるタイプなのかなと感じます。

茶木 僕はスタッフに任せるカラーです。池添兼雄厩舎(2023年引退)で調教助手をしていた頃、池添先生に「茶木、頼むな」と1頭の馬に関して全てを任されて、「これだけやりがいのある仕事をさせてもらっているので、この馬を活躍させて先生に恩返ししないと」と思いながら仕事をしていました。いま茶木厩舎のスタッフもそう思ってくれていたら嬉しいですね。手前味噌になりますけど、スタッフは自分で動いてくれて、僕が見えていない部分の意見もくれますし、できる人たちです。それと、僕は長男なんですけど、人生で偉そうにできたことがないから、年上の方はもちろんですが、年下の方からも「茶木先生」「茶木さん」と気を使われるのが苦手で(苦笑)。

──それが上手く作用しているのかもしれないですね。技術調教師時代には安田隆行厩舎(今年3月に引退)でも研修をしました。

茶木 安田先生も現場に任せてくださり、大事な時にビシッと言われていて、それがいいんだろうなと感じました。

──さて、話をライトバックに戻します。5月8日の1週前追い切りでは併せ馬で追走して、直線で一瞬にして相手を抜き去る圧巻の動きでした。

茶木 一気に抜けちゃったので、併せ馬の相手が動かなかったのかなと思ったら、相手もラスト1ハロンは11秒台。助手が乗って目一杯追わずなので、ライトバックはラスト1ハロン11秒3でしたけど、追えばもっと時計も出たと思います。

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▲5月8日の追い切りは併せ馬で追走(撮影:大恵陽子)

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▲直線で相手を抜き去り写真では単走のような形に(撮影:大恵陽子)

──テンションが高いタイプとのことですが、長距離輸送はどうでしょうか?

茶木 新馬戦の新潟も、2戦目のアルテミスSで東京に行った時もすごく大人しかったので馬運車は大丈夫だと思います。いろんな面に敏感で、普段はリラックスして可愛いんですけど、桜花賞前は馬房で汗をかいて、調教後は486kgあった馬体重がレースでは470kgでした。少し余裕残しで輸送した方がいいかなと思っていますけど、東京競馬場の場合は前日に着いて1泊できるので、その分はいいかなと思っています。

──差し・追い込みタイプという脚質を考えると、オークスは楽しみが広がります。

茶木 現時点では2400mがベストだとは思わないですけど、1600mの桜花賞より長くなる分にはいいと思います。同世代の牝馬の中でも中距離への適性はかなり高い方だと感じています。

──オークスに向けて意気込みをお願いします。

茶木 とにかくポテンシャルの高い馬で、末脚の爆発力に魅力を感じています。桜花賞3着で堂々とオークスに出ることができて、調整もいたって順調です。能力を出し切れれば面白い競馬をしてくれると思うので、応援よろしくお願いします。

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▲担当の高橋一宝調教助手との2ショット、いざ樫の舞台へ!(撮影:大恵陽子)

(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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